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大泉陽一「未知の国スペイン」原書房


副題に「バスク・カタル-ニヤ・ガリシアの歴史と文化」とある。

この3地域は今でもスペインの中の異国として存在している。バスクは非インドヨーロッパ語系のバスク語・異常な程にRHマイナスとO型の多い血液型など異質性が際立っているが、ローマ時代には異文化の共存が実現されていた。8世紀に入り、ウマイヤ朝(イスラム教国)の侵入、これを追放するためのカール大帝による遠征が行われ、この時バスコニアの騎士達の抵抗が伝説となり、更に特異性を増すことになる。

しかし、産業革命の波で沢山の移民が住みつくようになると、バスク独自の文化が希薄になり、それに危機感を抱いたサビノ・アラナ・ゴイリが「バスク民族主義」を唱えそれが「バスク民族主義党(PNV)」に結びついていく。

その後1936年フランコのクーデター宣言でスペイン内戦が始まると、史上初の都市無差別爆撃として「聖都ゲルニカ」が1937年攻撃され(ピカソの「ゲルニカ」で有名になった)、バスク人の心に消え去ることのない傷を負わせた。

カタローニアも独自の言語・文化をもつ地域だが、カタローニア語はロマンス語系の言語である。しかし、受難の言語である点でバスクと共通点を持つ。彼らはフランコ独裁政権に抵抗し、自由と自治をなんと1977年まで奪われたままだった。今でも独立を考えている地域である。アントニオ・ガウディを生んだ土壌をカタローニアは持っている。州都バルセロナはスペイン第2の都市である。

ガリシアはローマに徹底抗戦したケルト人の一派ガラエキ族の後孫が住む地域で、やはりガリシア語というロマンス語系の言語が存在する。

スペインには現在も「フランコ時代の影」が社会に大きく残っている。その中の一つが「スペイン至上主義」つまり、「スペイン語は世界共通語であり、スペイン民族がもっとも優秀な民族」といったもので、他民族を軽蔑するという面が色濃く残っている。そういうことは住んでみないと肌感覚で理解が難しいが、現存することは確かなようだ。「いつかスペインに!」という思いで読んだ一冊。いろんなことが学べた。

<メモ>
・バスク人であるFザビエルの名は「新しい家」の意味であり、城の名前でもあった。

・イグナチヲ・デ・ロヨラ、アルぺ神父もバスク人

・アジアに多いB型はバスクでは極端に少なく、北欧に多いA型も少ない。逆に純粋性を示すO型が6割を占める。

・バスクの牛追い祭り(サン・フェルミン)は「日はまた昇る」でも紹介された。

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