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ゴードン・マシューズ「チョンキンマンション 世界の真ん中にあるゲットーの人類学」青土社

2018年、まだ香港が自由な香港だった時にここに行った。トランジット宿泊だから格安ホテルを探していて、たまたまヒットした超格安ホテル⁉︎がこのチョンキンマンション(重慶大廈)!なんと、1泊2000円!

チョンキンマンションは17階ビルで、ショップ、オフィス、レストラン、マンション、ホテル等がひしめく複合ビル。南アジア、アフリカからの商人で溢れている特殊な場所だ。

まわりはブランド店がひしめくネーザンロード。すぐ近くには高級ホテル「ペニンシュラホテル」があり、スターフェリーもすぐ近くという抜群のロケーションだった。

行く前に調べたら「犯罪の巣窟」「かなりリスキーな場所」という脅し文句のオンパレード!しかし、ここで冒険好きな心に火がついた🔥

「行くしかない!」

ついて見たらインド系の店が溢れかえり、カレーのにおいが充満!しかもエレベーターの前は長蛇の列!欧米のバックパッカーが多かった。

「火事になったら死ぬしかないな」が正直な感想。それ以外の怖さは感じなかった。

チェックインしたあと、香港の中心街を闊歩して、スカイフェリー埠頭を眺め、その後、露店でめちゃ旨いフカヒレスープをいただいた記憶が鮮明だ。

さて、この本だが、なんとこのマンションをフィールドとして調査研究した人類学者がいた。図書館でビビッと来て借りてきた。

去年出た本だから、かなり新しい情報なのもよかった。
「低価格のグローバリゼーション」のハブ・・なるほどこれはニューヨーク株式市場等とは接点のない世界、つまりバンコク、コルコタ、カトマンズ、カンパラ、レゴス、ナイロビへとつながる合法性とか国際法とか著作権、クレジットとは無縁(現金中心の)世界のことを指しているらしい。

確かにこのチョンキンマンションではありえないほど多くの国の貨幣が交換できる。確か俺はここでネパールルピーとか、バングラデシュTAKAをドルに換金した(超ありがたかった^^)。

知らなかったのだが、この建物の主はなんと920人もおり、みんなある程度の儲けがあるので、簡単には手放さないのだそうだ。香港の人からは以前「怪しくて貧しい人達が集まる場所」として敬遠されていたらしいが、今では家の監視を嫌って、若いカップルの密会の場所になっているとか・・・いやはや面白い。

ここに集まる貿易商人達はインド系とアフリカ系の人が多いが「根なし生活」が普通で、定着というものを人生に無縁のものにしているらしい。なんとなくそこに憧れを感じるのは俺だけだろうか?

また、ここでは戦争やナショナリズムがかなり希薄だ。国どうしが戦争中でもチョンキンマンションには別の論理が存在する。ビジネスを中心に脱自国中心主義、脱ナショナリズムで世界がつながりあう空間なのだ。

確かにこの建物は人類学の対象になり得る!かなり面白い本に出会った。これは手元におこうかな。


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