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花散りぬれど~part1~

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恋愛、夫婦愛、親子愛、友情など、儚い恋や一途な愛、そして慈しみが、命を支えてくれるのかを綴って行きたいと思います
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2023年12月の記事一覧

慈しみに抱きしめられて

慈しみに抱きしめられて

一昨年、幼い頃、私が慕っていたいとこの弥生(仮名)姉さんが亡くなった。
私は亡くなる歳まで、弥生姉さんのことをやっちゃんと呼び続けていた。
やっちゃんは、私よりも5歳上で、亡くなったときは70歳手前だった。
突然、心筋梗塞で倒れてそのまま逝ってしまった。
やっちゃんは一人娘で婿養子と共に両親と暮らしていたが、このところ、調子の悪い両親の世話に追われていたのだった。

私は幼い頃は、すぐ近くに住んで

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夜桜の下で

夜桜の下で

桜の季節になると必ず思い出す。名古屋の覚王山にある日泰寺の夜桜を
、その時雨が降っていた。

その日は二間のアパートに同居していた大学の同じ学科の友が引っ越しした日であった。

彼は我々の三流大学が嫌で、東京の一流私学を受け直したのだが失敗して大学に残ることになった。

彼が東京に移ってしまえば、二間の家賃の2万円は払えないので、安い下宿を探して移る予定であった。

それを知った大屋さんが、「1万

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ひもといた愛の隠し箱

ひもといた愛の隠し箱

急に学生時代の写真と手紙を特別に保管していたボックスから取り出して、スキャナーで取り込んだ。
それらの写真や手紙はかつての恋人との関わりのあるもので、結婚を機会に本来なら廃棄するべきところをできずに、押し入れに隠していた。
その恋人とは駆け落ちをして、入籍して親戚にも紹介したが、結局別れてしまった。
今までは、その写真・手紙以外に、手紙代わりにやりとりしていたマイクロカセットの録音した声はデジタル

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奥三河で息吹く愛

奥三河で息吹く愛

そもそも、私が彼女とつき合い始めたきっかけは、大学2年生の春休みに初めて北設楽郡のとある村に村落調査に行った時だった。
以前に彼女とは飲み会で会ったことがあったが、当時の私は、受験勉強から解放されて一気に青春を取り戻そうとしていた時期だった。
同じ学部の同じ科の先輩だった彼女にはうっとうしい後輩に見えたようだ。
と言っても、私は1年浪人していたので、同い年だった。
そのころある女性につまらないこと

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