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「肉の道」

肉塊の敷き詰められたところを歩いている
皆 背を向けている
肉と肉の間に足を挟まれないよう
暖かい肉の上を湿ったズルズルと足の滑る
肉の上を 何処までも続く肉の上を歩いている
個体差のある肉の上を歩いている
家族が居るかもしれない ひっくり返そうとは思わない
地平線まで肉が
続いているのだ 続いているのだ 続いているのだ
何処までも 何処までも 何処までも 何処までも 何処ま
突然 
薄暗くなる どんどん暗くなる
けたたましい音が鳴る 鼓膜が鼓膜が鼓膜が 闇が闇が
顔を両の手で押さえしゃがむ
指の間から白い鳥たちが肉をついばむのを見ていた
人の声が聞こえる 色々な意味の無い 言葉でない
人を見失う声が 声が声が声が声が
肉塊は生きていたのだ 声が声が声が
小さな鳥たちには時間がかかるようだった 声が声が声が
気が付くと静かになっていた 目を開けた
嘴では砕けなかった骨と 嘴で掬えなかった血が広がる
1つだけたった1つだけ 髑髏が残っていた
それを珍しそうに持ち上げた

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