【小説】 うちのにゃんこ
造形が綺麗だから、だらけた姿も優美に映る。
だらりと伸ばされた腕の先、すらりと伸びた指先が、掠めるようにわたしの足の側面に置かれる。
ちらりとそちらを伺うけれど、彼の目線は露知らず。
うつ伏せだったそれが、弱点をさらすかのように反転する。
明るい瞳を縁取る羽が、宝石を隠すかのように伏せられる。
くわ、と開けた口。
覗く牙が、紅い肉塊に添えられている。
ぼおっとそれを見ていたら、なんだか指をいれてみたくなって、腕を延ばす。
そっと、ひと間接分だけ。
いつものように柔く閉じられようとしたそれが、わたしの中指と薬指に阻まれた。
ビクッと揺れたのと、がばりと体躯を起こしたのはほぼ同時。
絶妙な甘噛みでわたしの指を保持したまま、真ん丸に見開いたふたつの宝石がわたしを捕らえる。
彼は数秒呆けたあと、ゆっくりと口を開けて、力の入っていないわたしの腕は重力で落ちた。
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