見出し画像

詩「悲しみが潜んでる」


出ようとした玄関に
三行で終わってしまった日記に
柔軟剤を変えた洗濯機に
インクが切れた蛍光ペンに
呼び出された職員室に
名前を書けない持ち物に
真実をおもてに出せない
悲しみが潜んでる

何秒先を見つめても
私の行動は
変わらない
飲み過ぎた液体は
私の身体と見事に同化した
空になったペットボトルは
ゴミ箱に投げ捨てた
鼻から息を吸って
口から出した
それでも
心は落ち着かなかった

私は
この永遠に解けない僅かな誤解と共に
頼りない
細い裏道を湿気と一緒に歩いて行く
決めつけられた
イメージは
案の定
勝手な独り歩きをはじめた
私には
それを止める声がない
長い長い時間をかけて
掠れて
枯れてしまった
(時代が権利を放棄した。)

暗い暗い
裏道で
私は
あの人を失ってしまったら
これから先
どうやって
呼吸するというのだろうか?

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?