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【続いてる写経 876日め】〜『おおきなかぶ』の”かぶ”のなぞ

米原万里さんのエッセイ『旅行者の朝食』を読んでいたら、ロシア民話の『おおきなかぶ』の話が出てきました。
おじいさんがかぶをひっぱって、、って続いてくアレです。
日本では佐藤忠良先生の手による絵本は、オールタイムベストとなっておりますね。佐藤先生の絵の芸の細かさはほんと名作!!

米原さんの記述によると、ロシアに民話が浸透している割には、200回近くロシアを訪れた米原さんですら、ロシアで”かぶ”を食べたことがないそうな。ただ、疑問を解消してくれる本に出会ったことが書いてありました。

「長年の疑問に答えてくれたのは、V.M.コバリョフ著『ロシア料理ーその伝統と風習』という本だ」

「蕪は最古から人類が知っていた農作物で、古代エジプトではピラミッド建設に動員された奴隷の食べ物」

「中世期、スウェーデンやノルウェーの農民は、蕪の収穫の十分の一を教会に税金として納めていたという記録が残っている」

「どんな厳しい気候条件のもとでも、どんな貧弱な土壌でも育ち、収穫後も長期保存が可能な蕪は、ロシアにおいて実に長い間、食卓の主役となった」

『旅行者の食卓』米原万里(文春文庫)p152~153

なるほど。そんなに古い歴史があるのか〜。

しかし、ここでちょっと疑問が生じまして、「”かぶ”はそんなに保存できるのか?」。青々とした青葉も食べられる”かぶ”は、どうも痩せた土地に生えてる印象がない…。
日本の”かぶ”とは違うのかしらん?とちょっと調べてみたら、別のぴったいの野菜がヒットしました。

件の野菜は”ルタバカ”、別名スウェーデンかぶ。

ルタバガは北欧のスウェーデンが原産と言われているアブラナ科の野菜で、「スウェーデンカブ」や「カブハボタン」とも呼ばれています。主に北欧やロシアなどで栽培されてきました。

 外見がカブの部分や葉の形状が蕪によく似ていますが、分類的には蕪よりも菜ばなの変種とされています。

 非常に貯蔵性が高く、北欧では芋類や穀物などが底をついてから食べる食材と言われ、第一次世界大戦時にドイツでは他国からの食料輸入が閉ざされ、更にひどい凶作も重なり数十万人もの餓死者が出たと言われていますが、その時栽培が奨励されたのが栽培しやすく貯蔵性が高いこのルタバガだったそうです。他にこれといった食べ物がなく、ルタバガしかない飢えた時代として今ではその当時を「ルタバガの冬」又は「「カブラの冬」とよぶそうです。

https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/rutabaga.htmより

貯蔵性が高く、食料が底をついたときに食べるような非常用の食物…。米原さんの本にある”かぶ”の記述とピッタリやん…。

どうやら引用された『ロシア料理ーその伝統と風習』という本で、このルタバガと”かぶ”が混同されたのではないかと思われました。

”かぶ”料理はなく、”ルタバガ”だったらロシア料理にあったのかもしれません。

ちなみにルタバガは明治時代の北海道に入ってきたそうですが、日本人の味覚に合わなかったのか飼料用になったそうです。時代的に、『ゴールデンカムイ』にも出せそう。

蕪とはぜんぜん違った風味があり、好みが分かれるのではないかと思います。

同上

一体どんな味なのか…。非常食として使えるものなのか、ルタバガに興味津々。どこで手に入るんだろう…。

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