統計学的な恋愛としてのマッチングアプリとその綻び
プロローグ Kがマッチングアプリを始めたのはおよそ2か月前のことである。
Kは理系の男子大学院生だ。
Kは、学会発表の質疑応答で「素人質問で恐縮ですが」と手を挙げたは最後、発表者のプライドとメンタルをずたずたに砕いてしまうほど的確な質問を繰り出すことができる地頭の良さを備えていた。しかし、対称的にそれまでの恋愛遍歴といえば惨憺たるもので、「私のような者が恐縮ですが」と彼氏候補として手を挙げるたび、彼の方がプライドとメンタルを砕かれてきたのだった。要するに、彼は謙虚さという