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『カレー研究用キッチン付きオフィス』 物件探しの険しい道のり #07

夫がカレーを作りはじめ・イベントに出店するようになり・ミックススパイスを作ってイベント時に販売するようになり・自宅もカレーグッズに侵食されるようになり、、

\もうオフィスを新設しないと無理だ!!/

…と、夫と私の希望が一致し、新たにカレー研究用キッチン付きのオフィスを探すことにした。


株式会社Chance The Curryは「WEB・カレー・EC」 の3種盛り事業なので、WEBとリアルが混在していて条件が少々複雑。

【やりたいこと】
・WEB事業
・カレー研究
・カレーのイベント
・もしかしたら朝だけカレー屋
・EC事業(在庫置き場)

『複業』の認識はまだ不動産屋さんには浸透していないようで、説明しても
「うーん、結局、、何屋さんなんですか?何を探したらいいんでしょう??」と、とっても頼りない。

もう、レインズ(不動産業者専用サイト)の閲覧権限を開放してくれよ…!!と叫びたい気持ちをグッと堪えて、半年かけて探し続けた結果。

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新宿から小田急線急行で12分「経堂駅」から徒歩1分のビル。
2Fで10坪(30平米)とこじんまりだけど、キッチンを併設したオフィスを構えることができた。
家賃も希望範囲内(近隣相場よりもかなり割安)、初期費用も企業・飲食用賃貸相場の半分以下で収まった。これはかなりの奇跡。

この奇跡が舞い降りるまで、なかなかどうして、本当に大変だったので記念に書き記そう。

1、希望条件の書き出し

まず、『WEB・カレー・EC』の3種盛り事業を滞りなく遂行する為の「キッチン付きオフィス」の希望の条件を書き出す。

【 場所 】
・渋谷区、目黒区、世田谷区あたり(ハザードマップが赤くないところ)

【 項目 】
・カレーの研究調理ができるキッチンがある
・カレーを提供するための「飲食店営業許可」が取得できる内装にできる
・ミックススパイスの製造販売ができる「調味料等製造業許可」が取得できる内装にできる
・メイン事業の執務スペースの確保
・MTGスペースの確保(カレーイベントや週1カレー屋も想定)
・ブツ撮(商品撮影)もできるスペースの確保
・窓があって風通しがよく換気がしやすい
・駅から近い

何年か前から天災が多くなってきているし、首都直下型地震もいつ来てもおかしくないので、ハザードマップで真っ赤な場所を避ける事はマストだけど、この駅で探そう!という決め打ちよりかは、最初は広い範囲で探し始めることにした。


「飲食店営業許可」と「調味料等製造業許可」については、保健所が定めるめちゃくちゃ細かい店舗施設の要件があり、それをクリアする必要がある。

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これは一部だが、シンクが2つないとダメ、シンクの深さは18cm以上、キッチンとフロアの間には仕切りが必要、戸棚には扉が必要、室内の部屋の明るさは50ルクス以上…などなど、条件がてんこ盛り。

『WEB・EC』の2種盛りだったら、どんなに楽だったか。。


なぜ、カレー・・・。


カレーがあるだけで、物件探しを 200% 難しくしている。
だが、もうカレーの嫁になってしまったからには、この無理難題を解決しなければならない。腹をキメて探そう。うん。


2、オフィス用の賃貸サイトで探す

まずはオフィス用の賃貸サイトで探したが、キッチン付きのオフィスなんて皆無。
もう、絶望するだけ。本当にない。

そりゃそうだよね、オフィスにキッチン必要ないもんね。


3、飲食店用の賃貸サイトで探す

キッチンがマストなので、飲食店用の賃貸サイトで探しはじめた。

ここで初めて、
飲食店開店時の初期費用の巨額さを知る。


そもそも家賃が高いのに、保証金という預け金が最低でも100万円くらいかかるし、退去時には保証金償却されるところもある。本当にピンキリ。

その他に、自宅用の賃貸物件と同じく、敷金礼金があり、敷金も6〜8ヶ月がザラで物件を借りる手前で、数百万円かかる。

居抜き物件だとしても、冷蔵庫や内装を買い取る造作譲渡料が数百万円+内装工事を含めるとさらに数百万円。

こりゃ、初期費用で1,000万円近くかかるんじゃない…?

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ウソでしょ?


本当にこんなにかかるの?
お店の物件を借りるだけなのに????


間借りカレーから始める理由が、心底理解できた。いきなり店舗構えるのはリスクが大きすぎるよ、、怖いよ、、。

脱サラして飲食店をはじめた人達の覚悟はどれほどなんだろうか。小さいお店だけどね、ってよく言うけど初期投資金額を考えると、なかなか軽い気持ちじゃできないよ、本当に尊い。


ていうか、本当、なんでカレー・・・・。


この辺から、街の個人経営店に食べに行くと家賃とか初期費用とかを無意識に試算するようになってきた。


4、DIYできる物件の賃貸サイトで探す

既成のオフィス物件や飲食店の居抜き物件で見つからないなら、DIYできる物件で思い通りにカスタムすればいいじゃん!という事に気づき、DIY物件だけを紹介するサイトで探し始めた。

このDIYできる賃貸サイトは、家賃も比較的安く、自由度が高いし広めの家庭用キッチンがある物件が多かったので、理想に近づいてきた感が昂まった。

相当の賃貸サイトを閲覧・内見をし、なかなか疲れてきた頃に【下北沢駅。徒歩10分の一軒家/1階にガレージスペース、奥にDK、傾斜のきつい階段、2階に6畳2部屋がある物件/家賃は30万円(だが築年数が古くて狭い)】といい感じに 見える 物件を見つけた。

ここを自宅兼オフィスとして使う案が急浮上し、契約しちゃう?というところまで行ったが、冷静にそこに住むことをイメージしたら発狂しそうになったので契約はしなかった。

(物件探しに疲れてくると、いろんなことに寛容になる傾向にあるよね。)


もうカレー、やめない…?

という気持ちが、3日に1度は脳裏をよぎり、オフィスとキッチンを別に借りる案で試算もしてみたがとてもじゃないけど現実的ではなかったので、もうちょっと頑張る事にした。


5、地場の不動産屋さんで探す

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地場の不動産屋は、市場(レインズやATBBなどの不動産業者専用サイト)に出さない穴場物件を持っていることが多いので、下北沢に内見に行ったついでに地場の不動産屋を何軒か回ってみた。

だが、さすがは下北沢。


条件を伝えた時点で お前、場違いなんだよ感 をすごい出してくる。

「下北沢は人気エリアだから、キミが望む安い家賃で借りられるような物件はないけど…、そこのお客様カードに名前と電話番号と条件を書いてもらえれば、物件がでたら連絡しますよ」

といなされ、古びた不動産屋のおじさんに敗北感を覚えながらも、私がドアから出て行った瞬間にゴミ箱に捨てられるであろうお客様カードに一縷の希望を乗せて鉛筆を走らせた。

結局、地場の不動産屋からはどこからも連絡はない。やっぱりね。

下北沢はカレー激戦区だけど、みなさま如何程の覚悟で出店されたのか、、カレーをすくうスプーンの手が震えるほど尊い。


6、内見時に知った ”カレー屋の壁”

これから、1日のほとんどを過ごすことになるオフィス、夫がカレーを作り、振舞うことになるかもしれないキッチン、ECで販売している商品の在庫を保管するスペース…。複合的にバランスの取れた物件に出会えることはそうそうなく半年くらい様々な賃貸紹介サイトで探し続け、いくつか内見にも行ったが、毎回思い知らされた。


カレー屋は不動産屋や大家に忌避され
物件も限られ、家賃も高めになる。


理由は、明確だった。

・カレーの匂いは壁紙を取り換えても部屋に染み付き、なかなか無臭に戻せないので次の借り手が見つけづらくなってしまう。

・カレーの匂いが換気の空気に乗って近所に漂ってしまう。(人によってはいい香りに感じない、毎日嗅ぐのは嫌、など)

・カレーの油などで配管が劣化しやすい。

なるほどすぎるが、本当にどこの不動産屋にも「カレーを作る」と伝えた瞬間、担当者の目が濁るのだ。

カレー屋じゃなくて、WEBの仕事がメインだから、主にデスク仕事でカレーは週1〜2回作る程度ですよ。と伝えても一度脳内で「カレー屋」とインプットされた人間には何を言っても「とはいえカレーでしょう…?」という返事しか返ってこなくなる。
そんなにカレー屋に悪い思い出でもあるの…??

ある物件は、右隣がアパレル店舗、左隣がヘアサロンで、カレーの匂いが洋服に付いたり、ヘアサロンの中にカレーの匂いが入っちゃうと、ほら、アレですから…という、まさかの理由でNGになった。

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いやいや、本当にウソでしょ…。

じゃあ、匂いを横に出さずに上に向かって排出すれば良いのでは?と提案したら、排気のダクトを新規で設置するのに400万円かかると言われてKO。

マジで、なんでカレーやろうとしてんの
夫よ・・・。


7、運命の出会い

2019年7月、とうとう運命の出会いが…!

1つ年下の元スケーターでHIP HOP好き・前職は造園業という、夫と私を足して2で割ったようなゼネコンの美人担当者が、アンテナをビンビンにした状態で、ここしかない…!と紹介してくれた物件。

そこは還暦を過ぎたくらいの淑女が一人で営んでいた喫茶店で、近所の定年退職したであろうおじさまが一人でコーヒーを飲みながら新聞を読んでいたり、テニスサークルで仲良くなったであろうおばさま達コミュニティの憩いの場になっていて、たいそう人気店だったが、店主の都合により閉店を決めた場所だった。

そしてここが、奇跡的な賃貸条件だったのだ。

<奇跡1>
駅から徒歩1分の好立地!小田急線 急行なら、下北沢の隣駅…!

<奇跡2>

相場に比べて家賃が半額程度!しかも、敷金が自宅を借りる程度の設定でメタメタ安かった。

<奇跡3>

喫茶店だったので、設備をそのままにすれば、保健所の「飲食店営業許可」と「調味料等製造業許可」もすんなり取得できた。

<奇跡4>

店主が箱入り娘で商売っ気がなく、居抜きの造作譲渡金の設定もなく、20万円くらいする業務用の冷蔵庫も無料。
さすがに悪いので、譲渡料お支払いしますと伝えると「じゃあ、3,000円でどうかしら?」と拍子抜けする回答。ありがたく3,000円をお支払いしました。

<奇跡5>

同じ時間に内見にくる競合がなぜか来なかった。

築50年で古いし、インターネット環境も整っていなくて後々大変なことになるのだが、散々探して内見して全然見つからなかった日々に、とうとう終止符が打たれた。

***

現在のオフィスはこんな感じ。
内装工事にもいろんな思い出があるので、それはまた別のお話に。

しん


漠然と「カレー屋をやりたいなぁ〜」と夢見ている方にも、この壁はそびえ立っているはずだけど、この壁を乗り越えて、おいしいカレー屋さんを開いた暁には教えてください。夫と一緒に食べに行きます。


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