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探究学習インタビュー#04 小田原市探究担当の先生方

CURIO SCHOOLは小田原市公立中学校の探究学習支援として「令和5年度小田原市STEAM教育導入支援業務」を実施しています。「小田原版 STEAM 教育」の確実な実施を目的とし、探究学習プログラムの改良、外部連携機能の強化、探究学習研究の高度化などを進めながら、より質の高い探究学習を市内全公立中学校で実施できる体制づくりを目指しています。

今回は、小田原市の各中学校で探究担当である、城山中学校の椎橋先生、国府津中学校の新居田先生、城南中学校の西山先生にお話を伺いました。
                                      

Q.「小田原版STEAM教育」を実施した率直な感想を教えてください。

椎橋先生 授業のスケジュールやプロジェクトテーマが決まれば、授業自体は順調に進んでいくと思いました。また、授業を通して子供たちの新しい表情を見れたのが本当に良かったかなと思います。子供たちも「いつもの授業とは違うぞ」というのがすごく伝わったので、リラックスしたような感じでいろんな発想していたのが学校現場ではなかなかない良い機会でした。                

新居田先生 子供たちの様子を見るとやってよかったなっていうところが1番です。それに加え、教師も変わるきっかけになったのかなと思います。今までのすべての授業のあり方を考えるきっかけとなり、普段の授業とは根本的に違う経験を「小田原版STEAM教育」で体験したのでやりがいもあると感じました。   

西山先生 私は、最後のゴールがどうなるか分からないまま授業を進めた経験がなかったので不安でした。ですが、本当に子供と一緒に授業を作り上げていくことができたと思います。自分が予想していたものとは全く違うような子供たちのアイデアを見ることは自分も勉強になりました。その中で、「もっとこういうアドバイスをしてあげれば良かったな」とか「何かもっとできることはあったんじゃないかな」と感じます。そういうことを踏まえると、子供も僕たちもとても良い経験ができたのでこれを1回限りにしないことが大切かなと思います。

椎橋先生


Q.生徒が1番変化した部分を教えてください。                

新居田先生 何かを決めるとか、何かを生み出すことに対しての抵抗が低くなったように感じます。子供たちは、直接そう言ってはないんですが何かを考えたりすることが楽しいんじゃないかなと感じました。そういう繰り返しが、考えるって楽しいんだな・モノを生み出すって楽しいんだなに繋がっているように思います。私が担当している理科の授業でも、知識だけでは不十分に感じるところが多々あります。そこで、子供にも新しいものを生み出す力・試行錯誤する力を身につけさせたいなと思っていますが、授業内だと難しい部分がありました。しかし、今回のようにガッツリ時間をかけて考えることを繰り返したという経験は、その力を身につけるきっかけになったので良かったと思います。普段の授業であれば出来なかったらすぐ諦めてしまうところも、探究学習では自分の中で解決策が出せるかもと思っているから粘り強く取り組めたと思います。

椎橋先生 学校は、0から1を生み出すようなアイデアを求められる場面があまりないです。「小田原版STEAM教育」では、地域の問題と向き合って課題をどう解決しようかというような、0から1を生み出す力が必要でした。当然、生徒のモチベーションもそれぞれ違いますが社会に対して課題意識を持つ視点が身についたと思います。 

西山先生 プロジェクトのテーマが、自分たちが住んでいる地域に関わっているものだったので子供たちが主体的に取り組めたと思います。また、作るにあたっても僕たちが知らない技術も活かされていました。そういう部分を含めると、普通の教科では学べないことを学べたことや、普段見られない生徒の姿が多々あったと思います。班活動では、受け身な子が得意分野を見つけて「じゃあ俺これやるよ」と自ら進んで行動しているのが印象的でした。
子供たちにとっては、学ぶことや考えること以外にも、今後の人生にそういう場面・そういう姿を大事にしていきなよっていう振り返りにもできたのでよかったなと思いました。                                                                    

新居田先生

                                     
Q.授業を進めていく中で大変だったこと(教師or生徒の観点)を教えてください。 

椎橋先生 自分自身が戸惑ったのは、ファシリテーションです。生徒から出た意見に対して言葉に詰まる場面が多々ありました。例えば、学校にエレベーターを作りたいと言われた時に、自分だったら「そんなの現実的に無理じゃん」って言ってしまうと思います。だけど、大門さん(※弊社スタッフ)は、「エレベーターを実際に学校に置くと仮定してみよう。そのために必要な場所や費用などを調べてみて。」と、子供たちに自分で調べるように促し、そこからエレベーターを学校に設置することはあまり現実的ではない、と子供たち自身で気付けるファシリテーションをしていたので、自分も勉強になりました。こういった細かなファシリテーション技術を知らずに進めて、頭ごなしに否定していたら子供たちのやる気も消えてしまうと思います。なので、教師の言葉掛け1つで子供がどの方向にも進んでしまう、みたいな体験ができたことは勉強になりました。とはいえ、自分は参考になるファシリテーションを生で見たから、子供たちのやっていることをできるだけ否定せずに実際にやらせたりすることが、何となく理解できました。ただ、現場を見たことがない先生方からすると、なかなか口で説明してもファシリテーション技術を伝えるのは難しいのかなという感じはしています。              

新居田先生 子供たちが困っているだろうなと感じたのは、インタビューをする時に話すのが苦手な子だと、何を聞いていいか分からなくなったり言葉が出てこないという苦労があったことです。なので、インタビューに対する慣れは今後必要だと思いました。今回も、先生やゲストをターゲットにして練習をしましたが、パターンが少なくそれ以外の状況に対応できない部分がありました。なので、「思いっきりやってみるといいよ」とか「こういう風に考えよう」というインタビューの心構えを子供たちに話せたら良かったかなと思います。            

西山先生 自分が1番うまくいかなったのは、「ためす」ステップの計画を子供にちゃんと伝えられなかったことだと思います。最終発表日までの計画は、全体像を見せて、日にちや授業数のカウント含めて行っていました。その中で、いつ試すとか、その試すためにはインタビューをした人に再度アポイント取らないといけないということを生徒に伝える必要がありました。そういう部分でなかなか試す回数がこなせなかったていうところは、こちらの準備不足だったかなと思います。試すことを繰り返せばより良いものができるということを踏まえると、その試すための計画をしっかりと子供たちに伝えないといけなかったのかなと思いました。

                                
Q.「小田原版STEAM教育」を実施をして有意義だと感じたことを教えてください。 

椎橋先生 やっぱり社会に出た時に役立つのが1番だなと思います。自分が社会に出た時に痛烈に感じたのは、学校で勉強してきた昔の知識のみではどうしようもならないことが多々あるということです。それを子供たちが学校いるうちに少しでも体験できる機会が必要だと思います。今勉強していることが、社会のいろいろなものを解決したり、何か魅力的なものを作ることに役立つことが1番いいのかなと思いました。                        

新居田先生 子供も今現在の社会にいるわけなので、本当に実生活の中で使える力が身についているんだろうなと思います。学校教員も同じで、例えば生成AIでは教師の仕事は無くならないとは言われていますが、それは学校が知識を押し込むだけの場ではないからだと思っています。だからこそ、我々教師が生徒に新しいものを生み出す力や試行錯誤する力を身につけさせることができないと、近い将来、教師としての価値が無くなってしまうなと思った時に、やっぱりこの探究的な学習の指導技術や経験は1つの武器になると思いました。  

西山先生 私は小田原版という地域を題材にすることが1番いいなと思いました。今、学校はコロナ禍もあり地域との関わりが薄くなっている気がします。やっぱり地域の人に見守られているとか、自分はその地域の一員なんだという感覚を子供たちにもよりもって欲しいと思います。そういうことを踏まえると、今回の学習が地域でさらに発信できるといいなと思っています。中学生が地元の地域のために色々考えてるっていうのを知ってもらうと、地域の人たちも嬉しいだろうし、プロジェクトがきっかけで中学生と地域の人がお話しする機会も増えると思います。そうすると、生徒の自己肯定感などにも繋がっていくと思うので、地域に関わるテーマというのはとてもいい取り組みだと思いました。

西山先生

Q.現時点でのプログラムに対する課題感を教えてください。

新居田先生 学習問題との出会い方が難しかったです。探究のプロセスは、システムがしっかりしていてそんなに苦ではなかったですが、学習問題が来年も再来年も持続可能なものに出来るのかということが不安です。「国府津中」「地域」「社会」との関わりの中に学習問題があるというのが、毎年続くといいなと思いますが、それが1番難しいだろうなと感じています。

椎橋先生 自分はちょっと違う視点かもしれないですけど、教員の意識改革なのかなぁと思います。自分も正直、「小田原版STEAM教育」のお話をいただいた時に、真っ先に思いついたのは「大変そうだな」という負担感でした。でも、生徒たちが社会に出た時に役立つことを教えるのが学校なのであれば、このような授業を中学生のうちに行うことこそ、本当は大事なことなのではないかなと思います。ある種、生徒たちが将来社会に出た時に経験するであろうことを、事前に学校で小さな失敗を重ねながら経験できるイメージです。自分自身への戒めも込めてあえて言うと、社会の変化に対する意識に関しては教員自身が実は人一倍弱かったりするのではないかなと思います。
生徒たちがこれから出ていくソサエティー5.0の社会に、教員をしている私たちが子どもの頃に受けてきたソサエティー3.0~4.0の教育を行って満足していては、社会と学校教育との間に乖離が起きてしまい、生徒たち自身が社会に出た時に困るのではないかと思います。
教員自身が社会の変化から少し離れたところにいるから、そのことを私たちはより自覚する必要があるのではないかと思います。生徒たちが社会に出た時に、さまざまな知識を使いながらいろんな人とコミュニケーションを図り、社会にあるさまざまな課題に対し、新たな解決策を生み出していくことが、これからの時代には特に必要な力なのだということを自覚して私たちも授業を行っていかなくてはと感じました。

西山先生 自分は2つあって、テーマを決めた後の外部との関わりと最終的なアイデア提案のシステム的な部分です。1つ目は、外部の方との関わりです。私はテーマが決まってから外部の方に電話をしようと思っていました。しかし、自分は外部の方に電話する勇気はないし、煙たがれるだろうというところで、大門さん(※弊社スタッフ)に色々やっていただいたきました。これは、教員の負担が減るのですごく有り難いなと思いました。最初の部分で外部の人と関わるとなると、なかなかこっちも勇気が出ないからそこはありがたかったです。2つ目は、最終的なアイデアで提案するモノとコトのレベルの違いです。中学1年生でやるのであれば、モノの提案の方が分かりやすいと思います。このSTEAM教育を市全体に広げていくのであれば、ある程度システム的にして、例えば1年生はモノの提案、2年生はコトの提案、という形にした方が、初めてやる人たちにとってはいいのかなと思いました。ある程度、全体的な方向性は示された方が現場としてはやりやすいと思うので、その構築はあった方がいいと思いました。    

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