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出戻りぱんだのおはなし・はち

  飼育員さーーーーんっ、こーんにちはっ\(*ˊᗜˋ*)/♡ヤホー

  今年はあれもこれも値上がりして大変よねぇ。
ぱんだが住む北の方ではこれからの季節、生命線とも言える灯油の値上がりが何よりもつらーい!!
お賃金少ないのに!!もうどこいっても大抵お手当てなんて出ないのに!!毛皮があったって寒いものは寒いのよーっガク((ㆁωㆁ✿))ブル

  関係ないけど、ぱんだの生命線ってすっごく短いんだよ!みる?みる?


  そんな調子で今日もぱんだは体調不良と戦いながらの書き書きです!さーて、今日はどこまでかっけるっかなー?«٩(*´ ꒳ `*)۶»ワクワク



  季節は過ぎ、3月。

  中々見つからなかった働き口もなんとか見つけ、少しは人並みに近付けたぱんだの耳に朗報が飛び込みます。
新しい病院でのパパのリハビリも順調に進み、4月中の退院に向けて一時帰宅が決まったのです。

  帰宅当日、お昼過ぎにママと二人で病院へと迎えに行き時間より少し早めに到着すると、丁度パパも待合ロビーに降りてきていました。

  「ぱぱー、久し振りだねぇ!風邪ひいてないー?」

  約3か月ぶりの再会に、ウキウキするのが止められません。
12月に会った時はこんなに小さかったかな、と思ったパパも少しふっくらとし、顔色もかなり明るくなっています。

  「今日はねー、一緒におうちに帰るんだよ!夕方には病院に戻らなくちゃいけないけど、久し振りのおうちだよー!!」

  自宅での介護を想定し、パパに必要な介護用品の選定や各所に設置予定の手すりなどの見積もり。介護者のトレーニングが主な目的の一時帰宅ですから、はしゃいでばかりもいられません。
だけど、ちょっとだけ。
手を繋ぐくらいはしてもいいよね。

  あっという間に時間は流れ、お別れの時間。
パパにとっては、ママ以外知らない人ばかりで気疲れする数時間だったと思います。

  「またちょっとの間会えなくなっちゃうけど、ちゃんとご飯食べて、運動して、まだ寒いからお風邪ひかないようにね?」

  送り届けた病院のロビーで抱きしめたパパはやっぱり記憶よりも小さくて、なんだか言い表せない不思議な感覚。

  「看護婦さん、今日は親切にありがとうね」

  「なんもだよー!来月には退院出来るはずだから、そうしたら家族とゆっくりのんびり過ごせるからね」

  パパのお顔が見たいのに顔をあげられず、抱きしめたままで背中を優しく撫でるので精一杯。


  それからぴったり1か月が過ぎ、パパの退院の日。
前日に『はれたろうちゃん』にお願いした甲斐もあってお空はピーカン。
お日様も、退院おめでとうって言ってくれてるのかな。

  病院に到着し、諸手続きや支払いを先に済ませて待つママとぱんだの元に、少し遅れてパパがやってきます。

  先月会った時と変わらない姿のパパ。

  「お父さん、退院おめでとう」

  今までで一番綺麗に微笑むママ。

  「うん? おれ帰るのか?」

  新しいことを覚えるのが苦手になってしまったパパは、今日が退院の日だということを忘れちゃってるみたい。

  「・・・・・・なんでぱんだがいるんだ? 今朝帰ったのか?」

  目が合ったと思ったら、思いがけないパパの言葉。

  いま、なんていったの?

  「お父さん、わかるの?」

  ママもびっくりして、おめめが丸くなっています。

  「わかるって何がよ?」

   質問の意図が掴めずに困ったお顔のパパ。

  「・・・・・・ぱぱ」

  困ったな、笑顔でおかえりするつもりだったのに。
溺れるんじゃないかなって思うくらい、次から次へと溢れてくる涙。ぱんだのお顔も、声もぐしゃぐしゃです。

  「おかえりなさい」

  抱きしめて、思いを込めて、それだけ。

  「そんなに泣いてどうした、嫌なことあったのか?」

  パパが背中に腕を回してくれなくなったのはいつからかな。
ぱんだが女の子らしい体つきになるにつれて、ちょっとずつパパから腕を伸ばしてくれる機会が減って、それが寂しかったからぱんだは過剰なくらいくっついてたよね。

  「ちがうよ、とっても嬉しいことがあったの」

  戸惑いながらもぱんだを包んでくれた腕は、初めて抱き上げてくれた日から変わらない温かさ。

  「ぱぱ、ただいま」

  涙は止まらないしお顔はぐっちゃぐちゃだけど、笑顔でごあいさつ。

頑張って、よかった。
諦めなくて、よかった。

きっと一人じゃ頑張れなかった。
きっと一人じゃ諦めていた。


  介護のトレーニングを兼ねた面会を何度か許可されていたママも、看護師さんも作業療法士さんも、誰に聞いてもパパの記憶がどのタイミングで繋がったのかわかりませんでした。
わからないけれど、あの日から今日まで、パパの中からぱんだがいなくなった日はありません。いつかまた、消えてしまう日がくるかもしれません。
全部わからないけれど、おだやかな日常を送れる毎日の中で、少しでも家族でありたいと願います。



パパが倒れた日、ぱんだを家族の元に連れていってくれたヒーローさん。
パパが目を覚ました日、自分のことのように喜んでくれたヒーローさん。
パパに会えた日、笑うぱんだを素直に泣かせてくれたヒーローさん。
パパが帰ってきた日、記憶が繋がったことを誰よりも祝ってくれたヒーローさん。

いつでも、笑顔と幸せに気付かせてくれるヒーローさん。

  世界で一番わたしを幸せにしてくれるヒーローさんがこのさきもずっと、世界で二番目に幸せでありますように。

何かのきっかけのひとつにでもなれたなら嬉しいです\(*ˊᗜˋ*)/♡ヤホー