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何でもないとある冬の朝のはなし

2022年のカレンダーは最後の1枚になった。
その一枚の薄さ軽さが今年過ぎ去った時間を思わせる。


朝の冷え込みを自覚するのはこの静けさがあるからだろうか。
朝食と自分の身仕度を整え、今から始まる小さな戦いに備える。


12月が始まったばかりの金曜日。
6歳次女の仏像タイムで本日も幕が開く。



反抗期真っ只中の彼女は、何かが引き金となり拗ねてじっと動かなくなり、仏像と化す。何を言っても焼け石に水で、時間が前に進まなくなるのだ。


平日の朝の仏像タイム(in炬燵)は厄介である



第一ラウンドは、VSパパ


この時期恒例の戦法は、サンタさん攻撃

「あれ?ちゃんと準備しないとサンタさん来ないよ~」
そう言いながら抱っこして食卓に座らせる夫。


おそらく我が家だけではないと思う。
ああサンタクロースさま


第2ラウンド、VS長女


夫に座らされたものの、口を一文字に結び微動だにしない次女。
小3の長女は食パンをかじりながら、横目でああだこうだ言葉攻め。
同じ子供同士、分かり合えることも多々あるだろう。


…が、火に油を注ぐ形となり、今回は終了。



歩く仏像は再び炬燵という永遠の楽園の中に消えてしまった


この間私は少し戦線から離脱し、パワーチャージ。
冷静さを欠くと全てが空回りする。


時計を横目でとらえる
出勤時間までおよそ15分
私は腕まくりをする


「今ママもね、眠たくてパワーが10しかないの」


咄嗟に閃いた言葉が口から滑り出る
両手をパーにして次女の目の前に示す
炬燵から顔を出す次女はチラとこちらを向く


「でもね。30秒だけギューしてあげる、そしたら5のパワーを次女ちゃんに分けてあげるから。」


「ママは5のパワーしか残らないけど、5あれば、何とか仕事行けるよ」


黒目がちの次女の目がキランと揺れるのを見逃すな。
戦いの終わりは目前だ。


「あ、みかん食べたら、2増えて、7になるかな?」


このあたり、もはや自分が何を言っているのかわからなない。言葉に羽が生える。そしてみかんに出勤の運命を託す。


次女を膝に抱き、ゆらり、ゆらり。


「あとはお姉ちゃんに3もらってね、そしたら10になるから。…頑張って保育園、行けるかな」


テーブルへかけていき、大好きなみかんを頬張る次女。


炬燵から這い出た6歳の"時"の支配者は、みかんという句点を打ち朝の物語に区切りをつけた。

ああ みかんさま

          
           ◆◇◆


玄関のドアを開ける。

朝の寒さは空気の淀みを取り除くのだと思う。
視覚と聴覚が冴える。


「いってきまーす」


冬のおはなしはまだ、始まったばかり。
耳を澄ませば遠くには、鈴の音が聞こえる


(2022.12🎄)

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