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短編シナリオ『#8 つまんない選手権の優勝は』


会話「」
メッセージ『』




チャイムが鳴る。
生徒は机をくっつけて弁当を開ける。

翔太、机に伏せて寝ている。
卓也、翔太の机に自分の机をくっつけて、弁当を用意する。

卓也「なあ」
翔太「何」
卓也「なあって」
翔太「何だよ」
卓也「なあって言ってんだろ?」
翔太「何だよって言ってんだろー」

翔太は顔を上げる。

卓也「起きて?」
翔太「食い終わったから寝てる」
卓也「俺が今食べ始めたから起きて」
翔太「彼女しか許されない起こし方すんな」
卓也「はい、あーん」

卓也、翔太の口元にウィンナーをちらつかせる。

翔太「やめてくださーい」

卓也、ウィンナーを食べる。

翔太「なんでお前今弁当食べてんの?」
卓也「は?今から昼休みだから。お前が早弁してたんだよ」

翔太、教室を見渡すと全員が友達と弁当や購買のパンを食べている。

翔太「……そうだっけ」
卓也「2時間目には食べ終わってたよ。まあこれでも食えよ」

卓也、翔太の机にじゃがりこを置く。

翔太「え、くれるの?」
卓也「一緒に食べるの。残しておけよ」
翔太「え、好き……」
卓也「彼女ぶんな」

翔太、じゃがりこの蓋を開ける。

卓也「なあ」
翔太「ん?」


卓也「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ!」


翔太「……ん?」
卓也「ん?だから、パンは」
翔太「待って待って」
卓也「何?」
翔太「つまんないって」
卓也「え?」
翔太「終わってるって。オワコンだってそれ」
卓也「なぞなぞにオワコンとか無いから」
翔太「それの全ての答えが既にこの世に放出されてるから。新しい答えないから」
卓也「これの1番つまんない答えってなんだと思う?」

卓也、ペットボトルの蓋を開ける。

翔太「……腐ったパン、とか」

卓也「つまんないね!それはつまんない」
翔太「いやそうじゃないんだけどって、って思わない?」
卓也「思う。合ってるよ?合ってる」
翔太「でも違うよな。それじゃなぞなぞじゃないから」
卓也「それで否定したところで、え?腐ったパン食べれるのお前?とか言われんの」
翔太「正論かませば良いと思ってるやつが1番つまんないから」
卓也「本当のことを言ってる俺、的なやつね」
翔太「夢の国で食べ物高いとか言うんだろうなー」
卓也「それの根拠は何?とか言ってくるんだよなー」

翔太「お前は?」
卓也「ん?」
翔太「パンはパンでも食べられないパンのつまんない答え」
卓也「あー……シャンパンとか?」
翔太「……トリッキーだなお前。ていうか食べれるし」

卓也、笑いだす。

卓也「いや、俺ら未成年だし!酒飲んじゃ駄目だし!ていうか飲み物だから、飲めるパンだし!」

翔太、卓也を睨んでから机に顔を伏せる。

翔太「おやすみ」
卓也「嘘嘘ごめんごめん。冗談、冗談だから。起きて、ほら、じゃがりこ食べて?ぜーんぶ食べていいから」

翔太、起き上がる。

卓也「つまんないやつ演じただけだから」
翔太「つまんない。てか嫌い」
卓也「マウント取る系の正論言うやつ」
翔太「こんなことも分かんないの?って笑うんだよ。嘲笑い」
卓也「俺は知ってるけどお前は知らないんだ、的な」
翔太「うぜー。つまんないというかうざい」
卓也「バイトの先輩とかにいたら最悪。仕事教えてくれなさそう」
翔太「親戚にいても嫌じゃない?正月とかに誰も興味無い地元のゴシップとか聞かされそう」

卓也「つまんないを自発的にやるやつって、嫌われるんだな」
翔太「つまんないを、面白いとか普通だと思ってやってるやつな」

卓也、弁当箱を閉める。


卓也「なんかそれ経験あるな」
翔太「俺も。誰だっけ」

卓也と翔太に部活動のグループLINEが届く。

先輩『今日4時廊下集合』

卓也「え、どこの?」
翔太「こいついっつも言わねえ。いつも場所バラバラだろ」

同期『すいません。何階の何廊下ですか?』
先輩『2階北廊下。言わなくても分かるっしょ』

卓也・翔太「あっ」

卓也・翔太、目が合う。

卓也「こいつじゃん」
翔太「こいつだ」
卓也「夢の国のご飯高いって言うやつ」
翔太「根拠聞いてくるやつ」
卓也「仕事教えてくれないバイトの先輩」
翔太「知り合いのゴシップひけらかす親戚のおじさん」

卓也・翔太、スマホを操作する。

卓也、先輩の登録名を『マウントバイトリーダー』に変更する。
翔太、先輩の登録名を『根拠おじさん』に変更する。


翔太「じゃがりこ食う?」
卓也「いや俺のな」


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