母と娘『2023.12.15』
母と出掛けた。
バスに乗った。
映画を観た。
カフェで合間を過ごした。
居酒屋に行った。
酔っ払ってお腹を壊しながら夜道を歩いた。
ラーメン屋に行った。
タクシーが捕まらなくて最終のバスに乗った。
好きなことしたらいい、人生は一度きり。
母に言われた。
自分はなんて幸せ者なんだろうと思った。
私が小説家になりたいと話しても、私はよく分からないけど頑張って〜と言う母。
酔っ払いながらも娘をラーメン屋に連れて行ってくれる母。
映画の感想をいつまでも話し合ってくれる母。
私がお腹を壊してトイレに篭っている間、待っていた母が私にたくさんのメッセージを送った。
今日は楽しかったなあ、映画も素敵だったね、ご飯も美味しかったし、たくさん飲んだねえ、こんなに素敵なことないわ〜
娘はお腹が痛いんだけど。
それでも鳴り続ける通知は、母の幸せを語っていた。
覚束無いけど優しいメッセージは、私の酔いも覚ましていくほど輝いていて、幸せと同時に、頑張ろうとも思えた。
何にもしていないことが普通になってきた。
仕事をしていないことが、普通になってきた。
それでもいいよ、とは言われていないけれど、それでもいいような暮らしをさせてもらっている。
私はある時から、親のためにしか生きられないと思った。
今自分が死んだら、大声を出して泣いてくれるのは両親だけで、そんな人達を大切にする人生にしようと誓った。だから、親に迷惑を掛けることは出来るだけしたくないと思って生きてきたけれど、今はまさに迷惑掛けっぱなしだ。
親がこれを見たら「子どもなんて親に迷惑掛けて良いんだって」と言ってくれるだろうけど、私の気持ちの問題である。
人に誇れるような娘になれますように。
短命だと考えている私でも、唯一ある希望だ。
ラーメン屋のカウンター、母のあんかけ焼きそばと私の味噌ラーメン、間に置かれた餃子を見つめる。
「今日は楽しかったなあ」
母は何度もその言葉を口にした。私はこんな母を、家族を、幸せに出来るのだろうか。
「私、頑張るわ」
「何をだ」
酔っ払いの母には何も届いていないけど、別にそれでもいい。
頑張った先にある幸せに、連れて行けばいい話だ。
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