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短編シナリオ『#11 好きな人いる?』

翔太「なあ」
早紀「ん?」
翔太「好きな人、いる?」
早紀「……高校生に戻りたくなったの?」
翔太「え?」


午後12時。大学の中庭。

早紀・翔太、ベンチに座ってサンドイッチを食べている。

早紀「修学旅行の夜的な」
翔太「それって女子もやるの?」
早紀「私はやったことないなー」
翔太「皆が寝静まって、隣の仲良い友達から囁かれるやつ」
早紀「ドラマとかコントでしか見たことない。しかも男子」

翔太「俺、言われたことあるな」
早紀「ドラマとかコントだ」
翔太「高校の修学旅行で、あ、それこそ卓也だわ」
早紀「ああ、いつも隣の席に座ってる」
翔太「そうそう。先生に怒られたから、さすがにもう寝るわって皆で布団被った後、「翔太」って俺にしか聞こえない声で」
早紀「青春だねえ」
翔太「翔太って好きな人いんの?って言われた」
早紀「なんて答えたの?」
翔太「なんだったっけ……」
早紀「覚えてないの?」

翔太「なんかさ、その返答ってネタ切れじゃない?」
早紀「ネタ切れ?」
翔太「(早紀の方を向いて囁く)お前って、好きな人いるの?」
早紀「え……」
翔太「好きな人がいるバージョンで答えて」
早紀「……(小さな声で)いねえよ」
翔太「好きな人いないバージョン」
早紀「いねえよ」
翔太「そう。どっちにしろいねえよって言うと思うんだよ」
早紀「ああー」
翔太「いたら隠したいだろうし。いないって事無いのに。高校生の時って誰かしら好きだったろうに」
早紀「そこから始まるから面白いんじゃないの?ほらドラマでもコントでも、これ流れ見えるけど面白いな……って時あるじゃん」
翔太「あーそういうことか」
早紀「それで言えよー嫌だよーってなるわけじゃん」


翔太「……あ、思い出したわ」


翔太、サンドイッチを頬張る。

早紀「まだ一口のサイズじゃなかったよ」
翔太「(サンドイッチを口に含みながら)お前はどうなんだよって言った」
早紀「質問返しってやり方もあるか」
翔太「そしたら卓也、少し黙って、いねえよって言ったんだ」
早紀「おー」
翔太「そこから言えよー嫌だよーだった気がする」

早紀、手が止まる。
翔太、気付く。

翔太「どうした?まだ腹減ってんの?」
早紀「それってさ、卓也君が聞いて欲しかったんじゃないの?」
翔太「え?」
早紀「翔太に、好きな人いるのかって聞かれたかったんだよ。それか恋バナしたかったんだ」
翔太「そうなの?」
早紀「よくいるじゃん。自分が言って欲しいことを先に言って、いやいや貴方こそって言われたい人。お綺麗ですねって言う人はお綺麗ですねって言われたい人で、その服お洒落だねって言う人はその服どこの?って言われたい人だし」
翔太「言って欲しいことを先に言ってたんだ」
早紀「そうだよ。卓也君、翔太に聞かれたかったんだよ」
翔太「分かんなかったな……」
早紀「それでどうなったの?」
翔太「周りの皆が段々起きて、卓也の話になった」
早紀「ほらー」
翔太「次の日告白するって話になった」
早紀「告白するのに背中押してもらいたかったんだよ。可愛いところあるじゃん」
翔太「全然気付かなかったわ」
早紀「そういう気遣いが必要なんだよ。だから彼女出来ないんだよ」

早紀、サンドイッチを食べる。

翔太「……え、気遣いってどうやったら習得出来るかな」
早紀「は?」
翔太「あ、あと何が悪い?俺って何したら好かれるかな、モテる?」
早紀「モテたいの?」
翔太「いやその、不特定多数じゃなくて良いんだけど、好きだなって思われたいというか」

早紀「……あ、あ!」
翔太「何」
早紀「最近好きな人出来た?って、聞かれたかったの!?」
翔太「……ええ?」
早紀「嘘下手だな」
翔太「そんなことないって、いないって好きな人なんかさ」
早紀「好きな人出来たんだ」
翔太「だから」
早紀「それでどんなことしたら好きになってもらえるか私に聞こうとしてたんだ」
翔太「いや」
早紀「修学旅行に戻りたかったのは、聞いたら聞き返してくれると思ったからなんだ」
翔太「違うって……」

翔太、目の前を通る女子大生を見る。
早紀、言葉が詰まった翔太を見て、翔太の視線の先を見る。

早紀「……萌子のこと見てる?」
翔太「え、知り合い?」
早紀「バイト一緒で」
翔太「へえ……」
翔太、黙り込む。
翔太「……最近バイト始めたくてさー」
早紀「舐めんなよ」


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