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仁義八行の玉が導く、壮大なる冒険活劇!八犬士VS妖怪軍団の運命の戦い 「里見八犬伝」(1983)

里見家の姫と八犬士の一人との恋をベースに、悪の妖怪軍団と戦う犬士達の姿を描いた娯楽作品。

滝沢馬琴著「南総里見八犬伝」に新解釈を加えた鎌田敏夫原作「新・里見八犬伝」を映画化したものです。


作品紹介

スタッフ


監督 - 深作欣二
製作 - 角川春樹
原作 - 鎌田敏夫 『新・里見八犬伝』
脚本 - 鎌田敏夫・深作欣二
主題歌 - ジョン・オバニオン「里見八犬伝(英語:I Don't Want This Night To End)」、「八剣士のテーマ (White Light)(英語:Hakkenshi's Theme (White Light))」、ともに作詞作曲はジョーイ・カーボーン。
特撮監督 - 矢島信男
プロデューサー - 佐藤雅夫、豊島泉、菅原比呂志
配給 - 東映

製作会社 :角川春樹事務所
公開 :1983年12月10日
上映時間: 136分


出演者

静姫 - 薬師丸ひろ子
里見家の姫。一族を殺された里見家唯一の生き残り。

犬江親兵衛(仁) - 真田広之
孤児で百姓に育てられ、侍に憧れて一国一城の主を狙って静姫をつけ狙うも、一緒に行動していくうちに彼女に惹かれていく。
犬山道節(忠) - 千葉真一
里見義実に仕えた祖父が100年前の出来事を描き残した絵巻を所持し、八犬士を集めるべく大角と行動しているリーダー格の犬士。

犬村大角(礼) - 寺田農
里見義実の家臣の子孫。

犬坂毛野(智) - 志穂美悦子
唯一の女犬士。呪われし生まれつきで「誰からも愛されず、誰も愛さず」を信条に孤独に暗殺を生業として生きてきた。

犬塚信乃(孝) - 京本政樹
義妹の浜路と密かに想い合っていたが、代官殺しの手引きをしたと勘違いされ、浜路が自分をかばって叔父に斬り殺されたことに激高し、一族を斬り殺してしまう。

犬川荘助(義) - 福原拓也(子役)
成人だが、子供の姿をした犬士。異形の者たちが住む洞窟で育ち、人並外れた 聴覚を持つ。
犬田小文吾(悌) - 苅谷俊介
巨体で怪力の犬士。荘助と同じ洞窟で育つ。

犬飼現八(信) - 大葉健二
闇の軍団の侍大将で非道を繰り返していたが、玉を手に入れ、親兵衛が吹く伏姫の笛の音により、正義の心に目覚める。


玉梓 - 夏木マリ
100年前、毒婦として蟇田定包を操り民衆を苦しめていたために、里見義実らに焼き殺された。

蟇田素藤 - 目黒祐樹
玉梓の長男。玉梓と共に焼き殺されたが、復活して里見一族を皆殺しにした。

妖之介 - 萩原流行
大蛇の化身。毛野を「自分のために生まれてきた女」と惚れ込み、我が物にしようとする。

浜路 - 岡田奈々
義兄である信乃を想い続け、婚礼の席で代官が死んだことで信乃と駆け落ちしようとするも彼をかばって命を落とす。



伏姫 - 松坂慶子
100年前の里見家の姫で、死に際に八つの霊玉を遺す


あらすじ

里見義実に殺された玉梓 (たまづさ)の呪いによって、里見家は隣国から攻められ、没落の危機を迎える。
精魂尽き果てた里見義実は飼い犬の八房(やつふさ)に「敵将の首を討ちとれば娘の伏姫(ふせひめ)を嫁につかわす」と戯言を言ってしまう。


しかし八房は本当に敵将の首をくわえて里見義実のもとに返ってくる。伏姫は、約束を守り、里見義実の制止を聞かずに八房と共に山奥へ入っていく。

伏姫を取り戻そうとした義実の軍の鉄砲のせいで、八房をかばった伏姫は死んでしまう。
しかし死の直前、伏姫の体から仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉が空高く飛び散る。

そして100年後、蘇った玉梓は息子の素藤(もとふじ)と、その軍勢を率いて里見家を攻め滅ぼす。
生き残った静姫(薬師丸ひろ子)が仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の霊玉をもつ八犬士と出会い、次々と襲いかかってくる玉梓(夏木マリ)の軍勢と戦っていく・・・


考察

斬新な演出

本作の特徴は、従来の時代劇の枠組みを超えた斬新な演出にあります。

冒頭とエンディングを飾るのは、ジョン・オバニヨンによる洋楽の主題歌は時代劇には似つかわしくないロックサウンドですが、これが作品に新鮮味を与えています。


また、妖怪や妖術など特撮シーンが随所に盛り込まれており、当時としては破格の制作費をかけた大掛かりなセットでした。まるでスターウォーズを意識したかのような、スペクタクル時代劇といったテイストです。



人間ドラマと感動のクライマックス

八犬士たちが次々と命を落としながらも、静姫を守るために戦う姿は、まさに「七人の侍」を彷彿とさせる。選ばれし者たちの自己犠牲をテーマとした、骨太の人間ドラマと見えなくもないです。特に印象的なのはクライマックスの乗馬シーン。親兵衛と静姫が手をつないで馬で疾走するラストは、本作品では有名なシーンとなっています。

ただ、、荒唐無稽なストーリー展開や、今見ると安っぽく見えなくもない特撮は、"B級映画"的な印象も与えます。

しかし、悪役の夏木マリなどは、過剰なまでに妖艶さを強調した演技で、作品を独特の雰囲気に導いていることで、この映画の持ち味と言えるかもしれない。「SF」で言うところの「スペースオペラ」的な、娯楽色の強い作品としては功を奏しています。

つまりは「時代劇オペラ」とでも呼ぶべき、ジャンルの枠に収まらない自由な表現が、本作最大の魅力なのだと思います。


滝沢馬琴著「南総里見八犬伝」との違い

映画「里見八犬伝」と曲亭馬琴の原作「南総里見八犬伝」の主な違いは以下の通りです。

原作との関係

映画「里見八犬伝」は、曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」を直接の原作としているのではなく、鎌田敏夫による「南総里見八犬伝」の翻案小説「新・里見八犬伝」を原作としています。

そのため、登場人物やその設定は同じですが、ストーリーはかなり異なっており、ほぼ別の作品と考えていいほどの違いがあります。


ストーリーの違い

原作「南総里見八犬伝」は、安房の国の里見義実の子孫の物語を長編で描いた伝奇小説。一方、映画は里見家の姫と八犬士の一人との恋をベースに、悪の妖怪軍団と戦う犬士達の姿を描いています。

原作は関東甲信越一帯が主な舞台ですが、映画では南房総(千葉県南部)が中心となっています。そして、もともとは約100巻にわたる長大な物語ですが、映画では発端部分を中心に構成されています。

つまり、映画「里見八犬伝」は原作「南総里見八犬伝」の枠組みを借りつつも、かなり自由な解釈で新たに作り上げられた作品と言えます。原作の持つ古典的な魅力とは異なる、当時の最新の映像表現を用いたエンターテイメント作品として制作されたのが特徴です。


個人的な感想

嫌味なほどの彩り豊かな豪華なセットのせいか、普段は目立ってしょうがない京本政樹や萩原流行の仰々しさが世界観に合っていました。(笑)

玉梓役の夏木マリの妖艶な魅力も全開で、素藤(目黒祐樹)との近親相姦的関係もそれに相まってミステリー感を醸し出しています。

終盤で畳みかけるアクションパートはJACのメンバー総出演なので流石の一言。
爆発シーンだって、それなりの迫力。


殺陣のシーンはどれも凄かったのですが、萩原流行と志穂美悦子の対決が一番見応えがありました。

若い頃は薬師丸ひろ子の可愛さと岡田奈々の清楚さに憧れていましたが、大人になるとそのどちらも兼ね備えながら、かっこよさと色気も漂う志穂美悦子にはかないません・・・

かないませんわ!!


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