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真実を隠さなければいけなかった4人の男たちの物語「JSA」(2001)

ふとしたきっかけから許されざる友情を育む事になった南北の兵士達の交流と顛末を描いたヒューマンサスペンスです。
韓国では第38回大鐘賞で最優秀作品賞・最優秀主演男優賞(ソン・ガンホ)を、第21回青龍賞では最優秀作品賞を受賞しています。


  • 監督:パク・チャヌク

  • 脚本:キム・ヒョンソク / イ・ムヨン / チョン・ソンサン / パク・チャヌク

  • 製作:シム・チェミョン / イ・ウン

  • 出演者:イ・ビョンホン / イ・ヨンエ / ソン・ガンホ / シン・ハギュン / キム・テウ

  • 音楽:チョ・ヨンウク

  • 撮影:キム・ソンボク

  • 編集:キム・サンボム

  • 公開:2000年9月9日(韓国) / 2001年5月26日(日本)

あらすじ(ネタバレあり)

舞台となるのは朝鮮半島を分断している軍事境界線(38度線)。その線上にある共同警備区域(Joint Security Area)では、今なお南北の兵士が対峙している状況が続いています。

10月28日の深夜、北朝鮮側詰所で、朝鮮人民軍の将校と兵士が韓国軍兵士により射殺される事件が発生します。

3日後、射殺事件南北合同捜査団が中立国監督委員会を間に置く形で組織されます。そしてスイス軍法務科将校の韓国系スイス人、ソフィー・チャン少佐(イ・ヨンエ)が板門店にやってきます。

陳述書では、韓国軍兵士イ・スヒョク(イ・ビョンホン)は用を足しに外に出ている時に北朝鮮に拉致され、その後詰所でスキを突いて将校と兵士を射殺し、北朝鮮と韓国を挟んでいる橋まで負傷した足を引きずってなんとか逃亡したと書かれていました。


一方の朝鮮人民軍中士のオ・ギョンピル(ソン・ガンホ)は詰所に3人(自分と将校、そして朝鮮人民軍兵士のチョン・ウジン)いた時に、いきなりスヒョクが入ってきて将校とウジンを射殺、その後2人が撃ち合って自分は肩を、スヒョクは片足を被弾したと供述していました。


2人に陳述が違うことから、直接話をしようとしますが、スヒョクは心神喪失状態で話ができず、ギョンピルも何も話そうとしません。

事件が起きた北朝鮮詰所にはウジンが書いたと思われる同僚の恋人の似顔絵とその写真が血まみれですが残っていました。

将校の死体には最初に胸、そして真正面からそのウジンは計9発もの弾痕が残っており、最初の頭部への一発で致命傷だったにも関わらず、さらに7発撃っていることで、スヒョクが残忍な人間なのではないかとの疑いを持ちます。
(もう一人の将校には胸と頭部を真正面から撃った2発のみ。)
 

計算すると弾痕は11、スヒョクの拳銃には5発残っていたため、もともと16発装填していることになります。しかしそれは弾倉にマックス15発、そして銃槍に1発入れないといけません。
しかしスヒョクに銃弾を装填させると弾倉に15発しか入れません。

スヒョクに疑問を持ったソフィーは彼のガールフレンドに会いに行きます。その時、ガールフレンドの兄も同じ軍人で、事件の日に韓国詰所に2人で見張っていたことを知ります。

ガールフレンドの兄の名はソンシク。

スヒョクの持っていた拳銃がソンシクのものであることが後にわかります。
事件について何か知っていると思った捜査団の人間に問い詰められ、ウソ発見機を掛けられそうになったソンシクは窓から身を投げて自殺を図ります、
 
そしてシーンは8ヶ月後までさかのぼります。


 
スヒョクがいた部隊が哨戒中に誤って北朝鮮領に入ってしまいます。
そんなことを知らないスヒョクは近くで用を足すために隊から一瞬離れます。しかしそのときにうっかり地雷線に触れてしまいます。助けをよびますが部隊は撤退した後で誰もいません。

そんな時、たまたま通りかかったギョンピルとウジンが地雷を解除してくれたことがきっかけで交流が始まります。
初めは橋を挟んだ両詰所から石でくくった手紙を投げる文通でしたが、会いたくなったスヒョクが北朝鮮詰所を訪れてしまいます。
もちろんれっきとした軍法違反ですが、3人は仲良くなります。
一緒に詰所に勤務していたソンシクにも声をかけ、4人はお互いの国の考え方や文化、プライベートに至るまで話せる仲になっていきました。

そんな4人の状況とは裏腹に北朝鮮が38度線上で戦闘態勢をとっているとの情報が韓国側に入ってきます。

警戒態勢がMAXになり、「もう会うのはやめよう」とスヒョクはソンシクに言います。しかしウジンの誕生日が近かったため、「最後にお別れだけしたい」ということになり、10月28日に2人は北朝鮮詰所を訪れます。
 
4人は共に酒を酌み交わし、ソンシクがカメラマンとなってスヒョク・ギョンピル・ウジンの3人が写真を撮ります。そしてソンシクは恥ずかしそうにウジンに誕生日プレゼントを渡します。ウジンが感動して涙ぐみます。


そんな楽しい時間は、北朝鮮将校が詰所のドアを開けたことで突然終りを迎えます。
 


11月5日、ソフィーが陳述書の整合性を確かめるためにスヒョクとギョンピルを対面させます。2人にソンシクが自殺する前の取り調べのビデオを見せます。そして現場にはソンシクもいたのではないかと問い詰めます。

我慢できなくなったのか、スヒョクが何かを言おうとしますが、それを察したギョンピルがスヒョクごと机を蹴り掴みかかります。

「この日を待っていた!朝鮮人民軍の強さを思い知らせてやる」とスヒョクを怒鳴り、更に
「朝鮮労働党ばんざい!!敬愛する最高司令官、金正日将軍ばんざい!!」と声高らかに叫びます。それを哀しそうな表情で聞くスヒョク。


解決しそうな状況ではないことに加え、ソフィーの父親がもともと北朝鮮の高官だったため、ソフィーは解任されることになります。


解任期限の数時間前、ソフィーはスヒョクを呼び出してウジンが書いた女性(同僚の恋人と思われていた)がスヒョクの恋人と瓜二つであることを指摘します。
それは4人が仲が良かった証拠だと言い、オフレコを条件に真実を話してほしいと願い出たため、スヒョクは話し始めます。
 


10月28日、北朝鮮の将校はスヒョク達を見て驚き、銃を向けます。スヒョクも同じく銃を向け、一触即発状態になります。
ギョンピルは「2人は亡命しに来たのです」と言ってこの場を収めようとします。
ギョンピルはスヒョクに「亡命して北朝鮮で暮らそう」と真面目な顔で言います。そんなギョンピルを将校は監督不行届として逆手で殴り、ウジンに銃を構えるように命令します。ウジンは仕方なくスヒョクたちに銃を構えます

ギョンピルの説得で一旦はお互い収めますが、スヒョクが持ってきた韓国のテープが流れた途端、将校が再び銃を抜きます。とっさに撃ったのはソンシクでした。将校を撃った後、慌てて撃とうとしたウジンの頭に発射。

倒れながらウジンはスヒョクの足に弾を撃ち込みます。

倒れるスヒョクを見て逆上したソンシクはすでに死んでいたウジンに何発も撃ち込みギョンピル、さらにスヒョクにも銃を構えます。そこで我に返るスヒョク。
 
ギョンピルはソンシクの銃を取り、まだ生きていた将校の頭を撃ち抜きます。
 
そしてギョンピルはスヒョクに「拉致されたと言え」と言って外に2人を出したのでした。

ソフィーはギョンピルに「2人のことを許せますか?」と聞きます。するとギョンピルは「立場が逆だったら先に撃っていた」と答えます。
 
ソフィーが別れ間際に「ギョンピルがウジンを先に撃ったのはスヒョクだったと言っていたけど、記憶違いね」と独り言を言います。それを聞いたスヒョクの顔がこわばり、そして足の治療のために軍病院へ行く車に兵士2人が付き添って歩いていきます。
ちょうどソンシクが落下した位置の血の跡を見たスヒョクはいきなり兵士の銃を奪い、ひざまずいて自殺します。
 
そう、ウジンの命を奪ったのはスヒョクだったのです。

彼は自分の身代わりに死のうとしたソンシクへの申し訳無さ、そして兄同然に慕ってくれていたウジンを殺した懺悔をするように、自ら罰を与えたのでした。



今回は北朝鮮のソン・ガンホがとても印象良く描かれており、それ以上に後に大スターになるイ・ビョンホンが未熟な韓国兵士を演じています。
国の政策で分断していますが、やっぱり同じ国の同胞。仲良くなれるよって希望をもたせるような感じなのですが、結局は周りからの邪魔が入るとこじれてしまう。南北の和解というのはとても難しいのだということとまざまざと見せつけられたような気がします。

韓国映画は相変わらず暗さや悲劇性が感じられる。それがワタシ的にはとてもいい。じっくり見て、じっくり余韻を楽しめる。そんな映画だった。


ソン・ガンホとイ・ビョンホンは良かったけど、イ・ヨンエがいまいち映えてなかったなー・・・

でも可愛いから・・・

良しだ!!


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