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読書日記 「ルビンの壺が割れた」 宿野かほる 著

確かに読書好きがざわつく内容、結末です。

レビューが長過ぎで読んでる暇ないよ、っておっしゃる方、YouTubeで3分ほどのレビュー動画作りましたんで、そちらをぜひご視聴ください。
これです↓


苦手だった体裁

みなさんは「読んでみたいな〜」と思う本に出会ったら、どんなふうにしますか?


1.図書館で借りる。
2.amazonでオーダー。
3.本屋で買う。

だいたいこの3つのうちのどれかではないでしょうか。
私は願わくば「1」の方法を取りたいのですが、なかなかどんぴしゃで私が今、読みたい本が図書館にあるってことが少ないので、どうしても読みたい場合はネットで買うことが多いです。

私がよく利用してるco-opこうべのネット店では数ヶ月に一度、本や雑誌、DVDの10% offセールをやります。

この「ルビンの壺が割れた」も近くの図書館では見つからなかったので、co-opネットで10% offの時に買いました。

本屋だと手に取ってちょっと読んでみてから買うか買わないか決められるし、amazonでも最初の数ページを無料で読めるようにしている本、多いですよね。
しかし、co-opネットの場合、それができないのです・・・。

自宅に届いた本を開いて初めて、この物語が男女ふたりによる書簡(メール)のやり取りで構成されていることを知りました。

う〜ん、苦手なやつだ・・・。

でも、いくつかの書評をみた結果、買ってでも読みたい、と思った本、頑張って読み始めました。
北京オリンピックの開会式と同時進行で。

ちょこっとあらすじ

「ルビンの壺」とは、だまし絵のひとつで、デンマークの心理学者、エドガー・ルビンによって考案されたとか。

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黄色いところを見ると壺ですが、黒い部分は人が向き合っているように見えますね。

物語は、男性が「未帆子」という、かつての婚約者の名前をたまたまFaceBookで見つけたところから始まります。

未帆子とは大学の演劇部で出会い、結婚の約束までしたにも関わらず、式当日に花嫁が忽然と姿を消して以来、音信不通でした。
男性は、FBで偶然見つけた「未帆子」がその「未帆子」なのか、彼女のプロフィールや過去の投稿から確かめようとします。
そして、思い切って彼女にメールを送り、未帆子から返信があり、最後までふたりのメールのやり取りだけで話が進んで行きます。

初めのうちは、30余年前に一方的に結婚を破棄しその後、何の謝罪も連絡もなく新天地で家庭を持ったという未帆子を悪者に感じていましたが、話は徐々に不気味な展開に。

読後感

いろいろ言いたいことが出てくる小説だ、という世間のレビューに私も同感です。

編集者によるあとがきには、


・全く新しい文学だ
・悪夢のような小説だ
・人を食った作品だ

などなど、賛否両論だと書かれてありますし、私自身、「時間を無駄にしたな」と感じました。

ひと晩明けて、ふたりが大学の演劇部に所属していた設定、やり取りしたメールの内容、タイトルが見事にリンクしている、と思い至りました。

「ルビンの壺」とは、見方によって壺や人の横顔に見える絵ですが、コレ、読者はメールの内容を頭に描くことで、一幕のふたり芝居を鑑賞した気分になるし、最後の最後に壺は割れるんですよ。

「ルビンの壺」劇場にいた私たちの耳には、ドラムとシンバルの音も鳴り響くことでしょう。私には聴こえました。

エドガー・ルビンが考案したというこの絵を、小説に表すとこうなるのか、と思いました。

スピンオフもアリだと思う

30余年、音信不通だったふたりにはその間、さまざまな出来事、事情があったようです。
そのあれこれがメールの交換で明かされていきますが、驚くようなこと、胸を痛めるようなことが起こっているものの、ひとり語りだともひとつ臨場感に欠けるというか・・・。

だから、ふたりが相手にメールで語る内容をスピンオフで小説にしてもいいんじゃないかと思いました。

書簡のやり取りで進行していく話、好き嫌いが分かれるであろう小説です。
170ページほどなので、どんでん返しを楽しみたい方、ぜひ読んでみてください。
途中で結末が気になっても、絶対に最後のページを見たりせずに。


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