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「読むインタビューの魅力」をWebメディアの運営者として考えてみる

この先、インタビュー記事の需要はどれくらい伸ばせるのか。

大手のオウンドメディアでさえも、静かに閉鎖していたりする業界。

本当のところ、ご本人が話している映像が一番分かりやすいし、ファンにとっては動く推しを目にできる方が嬉しいはずです。

それに勝るものはありません。

どんなに5,000字で褒めちぎっても、ご本人の笑顔1秒に敵わないことはわかってる。

ではCulture Cruiseも発信方法を切り替えて、動画と記事両方にするか。

そんなことも時々考えるけれど、現在は記事限定という形で落ち着いています。

であれば、なぜ記事である必要があるのか?  記事だから出せる良さを追求しようと思います。

Webメディアの運営者としても、インタビュアー / ライターとしても、今一度その良さを整理してみたいので、思いついたメリットを5つ挙げてみます。


メリット①能動的に読んでもらえる

ご本人が話す映像を直接的に観るのと、文字で間接的に読むのとでは、そもそも受け手のスタンスが異なります。

「映像」といっても、TVなのか、動画の自動再生なのか検索して観るのかによっても積極性に違いが出るけれど、文字を読む行為と比較すれば、受動的である点では一致しているでしょう。

動くものを目で追う時には休んでいる脳が、文字を読む時には稼働しているというか。

つまり記事の場合、URLをクリックして読む以上、読み手は興味を持ってくれているし、ある程度内容を理解しようと努めてくれる状態です。

ライターにとっては、スタート時点で読み手が一歩でも歩み寄ってくれることは、大きなアドバンテージになります。

メリット②文字にすることで現れる魅力

例えば2022年5月のBALLISTIK BOYZへのインタビュー。

メンバーの日髙竜太さんの話し方で、気付いたことがありました。

ーー楽曲のセレクトというところでは、どのように意見をすり合わせていますか?

日髙:5月にデビュー3年を迎えて、これまでの経験を経て、スタッフさんと話し合っていく中で、ですよね。自分たちがやりたいことだけをやるのがいいわけじゃないと思いますし、総合プロデュースしてくださっているHIROさんのご意見などを軸に、スタッフさんとコミュニケーションを取りながらという感じです。
どういう曲がいいか相談を受けたりもするので、僕らのアイディアを出しています。今回はそれが合致した曲でしたね。

BALLISTIK BOYZインタビュー(後編)より

日髙さんは読点(、)の打ち方が独特でした。

取材ということもあり、相手に伝わりやすいように。誤解のないように。いろいろな角度で考えて答えを出してくれるのです。

Instagramの取材日記でも以前書きました。

学校の先生が教壇で分かりやすく話してくれたり、ライブのMC(これはディレイのために短く区切って話すのが一番の理由ではある)などもそれに近いかもしれません。

SNSの台頭で必要性は薄れているけれど、句読点があるから表現される世界観はあると思っています。

しかし句読点の打ち方は、ライターの書き癖にも左右されるので、わかりにくい部分もあります。

一人のライターの書き方に注目してみると、癖がわかってきて面白いです。

ちなみに私の場合は、見やすい位置で区切るという本来の役割の他に、声に出して読んだ時に心地よいと感じる場所で、句読点を打つことも多いです。

ただ、インタビューの場合は、できるだけご本人が呼吸したタイミングを再現するように努めています。

メリット③文字だから面白い表現もある

「〜すぎて草」とかも文字で読んだ方が面白さが増す気がします。

インタビューでこの言葉が出ることはほぼないのですが()。

この「()」も、文字文化特有のツッコミの手段ではあります。

「←」とかも。セルフツッコミ文化が急に発展し始めてます。

でもこれもSNSだから許される表現で、インタビュー記事で使う勇気はありません。

おそらくクライアントにも白い目で見られます。

アニメではなくわざわざマンガで読む行為は、メリット③に近いかもしれません。

メリット④想像の余白ができる

文字情報から「きっとこんなトーンで、こんな風に話していたのだろう」と想像する。

たとえその想像が現実とは違っていたとしても、それはそれで良いのだと私は思っています。

ファンがもっとAさんを好きになってくれる。取材の目的はそこだから。

それに、「Aさんはきっとこんな風に話すだろう」と想像できるということは、過去の経験則にしたがって考えていることです。

一番Aさんを見ているファンの方がそのように想像するなら、その姿はきっとAさんの中にある姿なのだと思っています。


2023年6月にインタビューしたaimiさんは、話すのがとても上手で、そのまま文章にできてしまうくらいでした。

aimi:サウンドでいうとサマー・ウォーカーとかジャズミン・サリヴァンあたりがメインでやっているようなビート感、そういうメロウでチルなベースがブンブン鳴ってて、でもミニマルトラックな感じって、一昔前だったらアルバム曲にされちゃうようなテイストなのかもしれないですけど。これが受け入れられる土俵があるという、音楽に対してリスナーが寛容的になったのかな。

aimi × EMI MARIAインタビューより

口語的なニュアンスのままで、文章として組み立てても様になるような言葉を選んでくれています。

きっとファンの方であれば、aimiさんの話す姿が想像できるのではないかと思います。

そういう瞬間があるので、やはりインタビュイー(話し手)が話した雰囲気は、なるべく壊さずに文章にしたいです。

メリット⑤文章だから言えることもある

インタビュイーの視点になってみると、間に第三者が入ることで、ファンに伝言する感覚で話せることもあるのではないでしょうか。

FlowBackのTATSUKIさんはおそらく、「今話していることが文字になるとどうなるか」を考えてお話できる方だと思います。

だからこそ、2022年4月のインタビューで最後に話してくれたこの部分は、記事の中でも印象的な言葉となりました。

ーー最後に、ライブのことで何かお伝えすることはありますか?

TATSUKI:改めて立ち上がって戻ってきた意志を、ちゃんとライブで伝えたいと思います。僕らはFlowBackという存在を1回無くそうとした、というのが本当の事実なんですよね。
ライブの発表をした動画も、僕らは1回水の中に潜って死のうとしたんだよというメッセージを込めて作ったものです。

FlowBackインタビューより

これはインタビュアーとして勝手に想像したことだけれど、第三者を通しているから打ち明けられた背景もあるのではないかと思います。

直接話すには、核心に触れすぎているというか。

あの時のTATSUKIさんはその場の空気を読みながら、軽いわけでも、深刻すぎるわけでもなく、この話を打ち明けてくれました。

これはご本人の姿が直接見えない記事だからこそ、アーティストとファンが共有できる大事なファクターだったのではないでしょうか。

私はその間に入るようなインタビューをして、記事にしたいのだと常々考えています。

文字で読むからこそ「そんなことを考えていたのか」とファンが真相を知るきっかけはきっと作れる。

ではその言葉をどうすれば引き出すことができるのか?  逆算してこの先も考えていきたいです。


実際には、読者の推し以外の記事まで読んでいただける機会はほとんど作れていないので、個人的な課題はたくさんありますが、記事としてのメリットはたくさんあることを再発見できました。

写真と合わせることでさらに魅力が増すとか、他にもたくさんありますが、3,000字に達してしまったので今回はここまでにします。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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▼ライターの取材日記


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