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これからの「働き方」を考えるための ハンナ・アレント『人間の条件』Zoom読書会 5/17後記, 5/24告知

執筆:ぬま(ビジネスパーソン)

去る5/17に第3回を開催しました。
今回は3時間の読書会の後、参加者の方と運営に関するブレストみたいなものをしていただきました。
最後までお付き合いいただいた参加者のみなさん、本当にありがとうございました。

第6節 社会的なるものの勃興〜 第7節 公的領域ー共通なるもの

前回同様、パラグラフを順に要約したスライドを用いて、ときどき音読も交えながら進めました。

前回までは、古代ギリシャから中世ローマあたりの話が多く、具体的にイメージするのが難しかったのですが、やっと近代が中心になってきて、感覚的に理解できる部分も多く、議論も大変盛り上がりました。

一方、公的領域に関する箇所は、パワーポイントでテーブルの図を用いて議論しました。理論的な論述が多く、それまでの箇所とは少し毛色が違って少し戸惑いましたが、テーブルの比喩を中心に考えたらイメージしやすくなりました。次回も少しこの点を踏み込んでみたいです。

読みタグ

前回に引き続き、今回も「読みタグ」をやりました!
参加者で Google Jamboard を共同編集し、読みながら思ったことを自由に付箋(タグ)に書いたものです。

読みタグ_『人間の条件』6,7節_読書会_20200517 1

73頁で労働が「肉体の奇形」と結びついていたという記述が出てくるのですが、ここで言われている「奇形」は、先天的な奇形のことではなく、肉体の酷使によって後天的にその形が変わってしまうことだそうです。
現代では、肉体労働は確実に減っているわけですが、パソコンの見過ぎで視力が低下することも一種の奇形だという意見が出て、たしかにそうだなと思いました。

下記リンクに誰でも匿名で編集できる読みタグをご用意しましたので、
是非『人間の条件』を読みながら思ったことを自由に書き込んでください!
ある程度まとまったら画像化してこのnoteに貼り付けようと思います!

印象に残ったところ

労働の活動力は、最も基本的かつ生物学的な意味で生命過程と常に結びついており、何千年もの間その性格を変えず、生命過程の永遠の循環の中に閉じ込められたままであった。・・・労働が公的な分野に入り込んできたために、労働の過程は循環的で単調な反復から解放され、急速に進む発展に変わった。その結果、数世紀のうちに人間の住む世界全体は全面的に変化した。(『人間の条件』71頁)

ここで言われている「急速に進む発展」は、資本主義経済の発展のことなのですが、労働の行われる場を、生命過程を円滑に維持するための生産と消費の循環が加速度的に肥大し、世界全体を飲み込んでいくものとして描いていて、とても面白かったです。

社会的領域は、たしかに、卓越を匿名化し、人それぞれの成果よりは、むしろ人類の進歩を強調したために、公的領域の内容を見違えるほど変えた。しかし、その社会的領域でさえ、公的演技と卓越との関係を完全に消滅させることはできなかった。私たちは、公的に行う労働において卓越を示すようになったからである。(『人間の条件』73頁)

「卓越」とは、古代ギリシャにおいては「徳」と同義で身体的ないし性格的に他者たちより優っている状態というくらいの意味で(難しい定義はいろいろあるようですが)、例えば「勇気」や「節制」が徳として有名です。そうした徳というものが、社会的(さしあたり経済的と読み換えられますが)領域があらゆるものを飲み込んでいく過程において、労働によって示されるようになったと言われています。

ある参加者の方もここが一番面白かったと仰っていました。
たしかに「仕事ができる」かどうかがビジネスパーソンの一番の評価軸になっていて、みんなそれを目指しているところはありますよね。それによって犠牲になった健康や感情があるのではないでしょうか。
ただこの状況もあくまで歴史的に形成されたものであって、代替案は必ずあるはずだと思います。そうした視点で引き続き読んでいきたいと思いました。

次回予告

次回は5/24(日) 14:00~17:00に開催します。
第8節「私的領域ーー財産」から第9節「社会的なるものと私的なるもの」の終わりまでを読む予定です。

テーマは節のタイトルどおり、社会的/私的の区別で、特に私有財産や法と絡めながら論じられていきます。

法が、禁止するものとしてではなく、私的/公的のような境界線を引くものとして、特異な仕方で定義されており、大変興味深い箇所です。

なお、途中入会者を絶賛募集中です!
毎回冒頭で前回までのおさらいをしますので、おいてけぼりもありません!
ご興味ある方は、是非、下記noteの入会フォームよりご応募ください!

解説スライド

読書会用のスライドをご購入いただけます。取り上げた範囲について、パラグラフごとに丁寧に要約したものになります。理解の助けとしてご活用いただければと思います。10枚ちょっとのスライドになっています。

よろしくお願いいたします。
(以下、Google Slide を埋め込んでいます。)

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