これからの「働き方」を考えるための ハンナ・アレント『人間の条件』Zoom読書会 5/31後記, 6/7告知
執筆:ぬま(ビジネスパーソン)
去る5/31に第5回を開催しました。
今回でようやく第2章を読了しました。
参加者のみなさん、最後までお付き合いいただきありがとうございました
第9節 社会的なるものと私的なるもの 〜 第10節 人間的活動の場所
いつも通り、パラグラフを順に要約したスライドを用いて、ときどき音読も交えながら進めました。
第9節では、これまでの議論の延長線上で、近代において社会的・経済的な領域が公的/私的領域を飲み込んでいく過程が描かれています。
第10節では、人間の諸活動として、主に善行について取り上げらています。キリスト教の善論にも言及しながら、(究極的な意味での)善行は「ただ善のためにのみ為される」ものであり、公的に、そして自分自身に対してでさえ示された途端に善性は失われるとされています。
読みタグ
今回も「読みタグ」をやりました!
参加者で Google Jamboard を共同編集し、読みながら思ったことを自由に付箋(タグ)に書いたものです。
「疎外=自分のものが自分のものではなくなること」という定式化から、パーソナルデータの所有についての議論に発展しました。
GDPRのように個人情報を強く保護しようとする潮流がある一方で、コロナ禍における接触履歴の活用のような個人情報提供の社会的な要請もあり、今後これらの相矛盾する2つの流れの中でどう振る舞うべきか、継続して議論していければと思いました。
下記リンクに誰でも匿名で編集できる読みタグをご用意しましたので、
是非『人間の条件』を読みながら思ったことを自由に書き込んでください!
ある程度まとまったら画像化してこのnoteに貼り付けようと思います!
印象に残ったところ
こうして近代の財産は、世界的性格を失い、人間そのものの中に場所を移し、個人がただ死ぬときに失う肉体の中に場所を移した。ロックは、人間の肉体の労働こそ財産の起源であると述べた。歴史的に見ると、この仮定は大いに疑問である。しかし、この仮定は本当になるかもしれない。なぜなら、私たちはすでに、実際、自分の頼れる唯一の財産が自分の能力と労働力であるような状況のもとで生きているからである。(『人間の条件』99頁)
たしかに「自分の頼れる唯一の財産」は「自分の能力と労働力」かもなと思いました。筆者はITエンジニアなので、筆者の場合で言えばシステム開発スキルや毎日8時間くらい働ける労働力が「財産」ということになるでしょう。
アレントによれば、かつて「財産(property)」と「富(wellness)」は消費されないもの(土地や屋敷など)と消費されるもの(貯蓄やお金など)として区別されていましたが、近代以降、この区別はほとんど喪失し、ほとんど全てが「富」になってしまいました。たとえば、かつては「財産」であった土地や屋敷さえお金によって交換できる「富」になってしまった、ということです。そして、個々人の肉体や能力、労働力のみが財産として残されたわけです。
〈自分の肉体や労働力が自分の財産である〉という考え方はどこか安心や自信を感じるかもしれませんが、いろいろな不安もあります。
アレントも一定の疑問を呈しているように、個々人の肉体や能力は方秘されない財産なのでしょうか?様々な社会経済システムや企業のシステムによって、自分のスキルや労働力、「生」さえ"消費"され尽くしてしまったらどうする?(過労死や最近のリアリティショーはその典型でしょう)。
また、病気や事故、そして過労によって、自分の肉体や能力という財産に頼りきれなくなったらどうする?耐給与保障保険にでも入っておく?保険会社の支払い能力を超えるような災禍が起きたらどうする?政府の保障も期待できないような経済的なデフォルトが発生したらどうする?非常に脆弱で不安定な状況を生きているなと、そんなことを考えさせられました。
また、「個人がただ死ぬときに失う肉体の中」ではない場所にある消費されない財産が可能だとしたらそれは何でありうるのかとも考えました。
次回以降もこの辺りの疑問について思考を深めていければと思っています。
次回予告
次回は6/7(日) 14:00~17:00に開催します。
いよいよ「第三章 労働」に入ります!
「第11節 わが肉体の労働とわが手の仕事」から「第12節 世界の物的性格」までを読む予定です。
第三章以降では、第三章「労働」、第四章「仕事」、第五章「活動」というように、主要な「人間的活動」について順に詳しく論じられていきます。
自分自身の経験と照らし合わせながら、「働き方」を見直すヒントを探っていきたいと思います。
なお、途中入会者を募集中です!
毎回冒頭で前回までのおさらいをしますので、おいてけぼりもありません!
ご興味ある方は、是非、下記noteの入会フォームよりご応募ください!
解説スライド
読書会用のスライドをご購入いただけます。取り上げた範囲について、パラグラフごとに丁寧に要約したものになります。理解の助けとしてご活用いただければと思います。20枚弱のスライドになっています。
よろしくお願いいたします。
(以下、Google Slide を埋め込んでいます。)
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