音楽と商品の相乗効果
私の80's Musicアーカイブには、60年代、70年代の曲が何曲か入っている。80年代に映画、テレビドラマ、再放送などでリバイバル、再リリースされた曲や、有名なシンガーが亡くなったのをキッカケにリバイバル、再リリースされた曲、CMに使われてリバイバル、再リリースされてヒットした曲などである。
中でもイギリス、UKチャートは、リバイバル、再リリースからのトップ100入りが多い、ヒットの宝庫。特に目立つのは、リーバイスのCMソングに使われ、再リリースされた曲。
♪I HEARD IT THROUGH THE GRAPEVINE | MARVIN GAYE
Original released 1968 .......... 86年 8位
コインランドリーでパンツ一丁になってストーンウォッシュするという、UKで有名なCM。「EACH TIME YOU BREAK MY HEART」などのヒットを持つモデル/シンガーのNICK KAMENが出演している。
「I HEARD IT THROUGH THE GRAPEVINE」は、84年に衝撃的な最期を遂げたMARVIN GAYEの大ヒット曲、68年最高1位。
♪WONDERFUL WORLD | SAM COOKE
Original released 1960 .......... 86年 2位
ワークアウトの後にジーンズのままお風呂に入る男性。CMで使われている「WONDERFUL WORLD」はTONY JACKSONのバージョン。
「WONDERFUL WORLD」の原曲は、SAM COOKEが高校時代の恋人のために書いたバラードで、60年最高12位、再リリースはそれを上回っている。日本では90年代にJT「ホープ・ライト」のCMにも使われた。
♪MY GIRL | THE TEMPTATIONS
Original released 1964 .......... 86年 92位
帰還兵が恋人と再会するために故郷に戻るCM。少女は彼にリーバイスの501ジーンズをプレゼントし、帰還兵はすぐにそれに着替えて制服を包み直して送り返す。
「MY GIRL」は、THE TEMPTATIONSのみならず、モータウンを代表する世界的ヒット曲で、64年最高2位。
♪WHEN A MAN LOVES A WOMAN | PERCY SLEDGE
Original released 1966 .......... 87年 2位
出征する兵士が恋人に別れを告げる様子を描いたCM。兵士は別れの手紙の代わりに彼女にジーンズを渡す。そのジーンズの後ろポケットには彼からのラヴレターが入っている。
「WHEN A MAN LOVES A WOMAN」は、PERCY SLEDGE自身の失恋を元にして書かれたという、数々のカバーを産んだソウルの名曲。66年、最高2位。
♪STAND BY ME | BEN E. KING
Original released 1961 .......... 87年 1位
「ブルージーンズ禁止」という厳しいドレスコードのクラブが登場するCM。ある男がクラブへの入場を拒否されるのを目撃した後、ブラックジーンズを履いた別の男が用心棒の横を通り過ぎ、クラブに入っていく。
「STAND BY ME」は、黒人霊歌のインスパイアで書かれた曲で、61年最高27位。再リリースのバージョンは、86年の同名映画主題歌だったということもあって大ヒット。
♪MANNISH BOY | MUDDY WATERS
Original released 1955 .......... 88年 51位
女性ひとりで切り盛りしてるダイナー、店の奥からボクサーパンツの男が登場。冷蔵庫で冷やした501ジーンズを履いてバイクで出てゆくというシュールなCM。
原曲は、MUDDY WATERS & HIS GUITAR名義でリリースされた「MANISH BOY」。UKではランク外。
♪C'MON EVERYBODY | EDDIE COCHRAN
Original released 1958 .......... 88年 14位
イヤー・エンド・パーティーに着てゆく衣装が決まらない女性。迷った末、シンプルなTシャツとジーンズでパーティーに現れる。
「C'MON EVERYBODY」は、『みんなで今夜集まろうぜ・・・ジーンズにあるこの金なら俺は正しい使い方を知っている』と歌われるロック・ナンバー。58年最高6位。
♪AIN'T NOBODY HOME | B.B. KING
Original released 1972 .......... 89年 88位
ガス欠、金欠で質屋に飛び込む男性。時計やサングラスで金を借りようとするが・・・質屋の店主に呼び止められ501ジーンズを質草に取られる。
「AIN'T NOBODY HOME」は、“キング・オブ・ブルース”の70'sナンバー。原曲は、UKではランク外。
♪BE MY BABY | THE RONETTES
Original released 1963
501ジーンズの耐久性を実証するCM。ピックアップ・トラックに乗ったイイ男が、オーバーヒートで止まっている車の救援のために停車する。救援のイイ男は、自分の501ジーンズで故障車を牽引、途中で後部バンパーを落下させ故障車を切り離し、故障車のスーツ姿の男性を置き去りにする。
「BE MY BABY」は、フィル・スペクターによるウォール・オブ・サウンドの傑作。63年最高41位。CMは89年放映、楽曲は90年に入ってから再リリースされた。
※アメリカ、日本を含めた「Levi's 80's CM プレイリスト」はこちら
他にもシャネルNo.5のCMソング、NINA SIMONE「MY BABY JUST CARES FOR ME」(85年 5位)や、ミラー・ライトビールのCMソング、HOLLIES「HE AIN'T HEAVY HE'S MY BROTHER」などのリバイバル、再リリースがあり、「HE AIN'T HEAVY HE'S MY BROTHER」は、88年9月24日から二週連続1位になっている。
80年代にブランドと楽曲の広告パートナーシップがもたらした影響を実感する。名曲は製品のセールスに役立っただけでなく、時にはその音楽を再びヒットチャートに復活させることさえあるのだ。
日本だとタバコのパーラメント、夜景とAORのシリーズが思い当たる。リバイバルというと、コダック・フィルムのCMソングに使われたオールディーズたち。ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」、ジャン&ディーンの「サーフ・シティ」などがヒットした時期があった。そこからあの「モンキーズ・ブーム」につながるのだが、この話はまた今度。
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