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改名と名声

非常に濃い80年代を過ごし、著しい変化、成長を遂げたロッカーといえば、ジョン・クーガー・メレンキャンプ。名前が変わった以上に境遇も考え方も変わった。
1951年10月7日、インディアナ州セイモア生まれ、10代半ばでバンドを組み音楽活動を始めたという、まるで自身が作る歌のような青春時代。
17歳で結婚し、家族を養うために一度は音楽をあきらめたものの夢を捨てきれず、24歳の時、デモテープを持ってニューヨークへ向かった。
グラムロックのバンドで活動していた時期に、デヴィッド・ボウイのマネージャーであるトニー・デフリーズに認められた。サクセスストーリーのように見えるが、現実は違った。グラムロックのシンガーとして、ボウイばりのメイクをし、芸名をジョニー・クーガー(JOHNNY COUGAR)としデビューするが、それは自身の意に沿ったものではなく、鳴かず飛ばずだった。ちなみに“クーガー”は喧嘩っ早いところから取ったニックネームだという。

MCAレコードでくすぶっていたジョンを、新しいマネージャーとなるビリー・ガフが誘い、ビリーが作ったレコード・レーベルへと移籍、芸名もジョン・クーガー(JOHN COUGAR)と名乗った。
改名とともに曲も路線変更、アメリカでの初ヒットは79年後半リリースの「I NEED A LOVER」が年明けにビルボード最高28位に。その後も「THIS TIME」(27位)、「AIN'T EVEN DONE WITH THE NIGHT」(17位)と着実にヒット曲を出した。
82年には、アルバム「AERICAN FOOL」から最初のシングル「HURTS SO GOOD(青春の傷あと)」が4週連続2位、続くセカンドシングル「JACK & DIANE」が初の1位を獲得、4週連続1位の大ヒットとなった。尚、この二曲は4週間にわたりトップ10に同時にランクイン、年間チャートでも「JACK & DIANE」が7位、「HURTS SO GOOD」が8位にランクインした。年間チャートのトップ10に二曲を送り込んだアメリカ人男性アーティストはエルヴィス・プレスリー以来だという。
ボウイのような非現実のロック・スターではなく、『自分は何者でどこから来たのか?』とあえて自分自身を見つめ直し、パンク、ニューウエイヴが台頭していた時代に、冒険心や地方都市の青春を歌うストレートなロックで勝負し、一躍スターダムに昇りつめた。その頃、ジョンは30歳を超えていた。

そんな絶好調の時期にジョン・クーガー・メレンキャンプ(JOHN COUGAR MELLENCAMP)と再び改名し(“メレンキャンプ”はおじさんの苗字だとか)、アルバム「Uh-Huh(天使か悪魔か)」を発表、シングル「CRUMBLIN' DOWN」、「PINK HOUSES」がランクイン、つづくアルバム「SCARECROW」(85年)からも「LONELY OL' NIGHT」、「SMALL TOWN」、「R.O.C.K. IN THE U.S.A.(A SALUTE TO 60'S ROCK)」が大ヒット入りし、トップ10の常連となった。

85年には、カントリーの大御所ウイリー・ネルソンと共に、困窮するアメリカの農家のためのチャリティーイベント「ファーム・エイド」を開催。
都市から見放されがちな田舎、農村の代弁者として、社会的メッセージを強くするようになり、音楽性も自身のルーツであるカントリーやフォークの色が濃いアコースティックなものに変容していった。その音楽性は、1987年に発表した「THE LONESOME JUBILEE」でさらに強くなり、このアルバムからも「PAPER IN FIRE」、「CHERRY BOMB」、「CHECK IT OUT」がヒットした。

91年に再び改名、今でもそのジョン・メレンキャンプの名で活動しているが、ライフワークである「ファーム・エイド」は今でも開催されていて、昨年はボブ・ディランがサプライズで登場、ハートブレイカーズと共演している。

近年、本業よりも注目されてしまったのが、女優のメグ・ライアンとの関係。インディアナ州に暮らすジョンとニューヨークに住むメグ・ライアンは遠距離恋愛で、8年にわたりくっついたり、離れたりを繰り返し、2018年11月に婚約を発表したが、一年後に婚約解消となっている。
無骨な田舎のロッカーと大女優の恋を応援する声が多かったのだが、遠距離によるすれ違いが破局につながったという。

70歳を超えたジョンは、無骨なところも変わっていないようで、ライブのMC中でヤジられ、『何を考えてんだ、このクソ野郎!』、『お前ら、幼稚園に戻れ!』と叱責したらしい。「クソ野郎」というのはいい言葉ではないが、まだまだアグレッシブで、若々しくいてほしいものだ。


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