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ローマの近郊、小さな山の町で引きこもりのように過ごす40代。 ほれ込んで貯めた書籍をお…

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ローマの近郊、小さな山の町で引きこもりのように過ごす40代。 ほれ込んで貯めた書籍をお供に、風の音と鳥の声に囲まれて過ごす毎日。 貯めた本の紹介および備忘録。 https://cucciolasapori.hatenablog.com/

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最近の記事

翻訳したい本 その8 Terraneo

私は、子どもの本に対してそれほど興味が深いわけではない。 子どものころから、どちらかというと母が買ってくる小説を読んで愉しんでいたタチなので、娘の本を選ぶ際には迷ってしまうことが多い。 図書館に勤務していた時代には、小さな子供たちに読み聞かせをする機会があったから、子どもとはこのようなことに反応し喜ぶのかと驚いたのも懐かしい思い出である。 とはいえ、私の娘も絵本を読む時代はもう過去のものになった。 だから、この絵本は純粋に私の好みで購入したのである。 若きグラフィッ

    • 翻訳したい本 その7 中世の女性史

      なんというか、ひじょうにベタなタイトルで普通ならばあまり手に取ることがないテーマである。 それなのについつい買ってしまったのは、表紙がきれいであったこと、出版社がIl Mulino社であったからである。装丁を見ても出版社を見て、読む価値ありかなと思ったのだから、本当に直感で買ってしまった本なのだ。 著者はこれまでも女性史や中世史に関するエッセイ多数というひとである。 とはいえ、内容はアッシジのキアラであったりアキテーヌのアリエノールであったり、こちらもかなりベタである。

      • 翻訳したい本 その6 ヴェネツィアのスパイの歴史本

        700ページにも及ぶ大著である。 塩野七生女史の『海の都の物語』を読んだ人ならば、ヴェネツィア共和国が外交にどれだけ比重を置いていたかを知っていると思う。ヴェネツィア共和国の外交官たちが残した文書は、それこそヨーロッパの歴史の貴重な証人となっている。 そして、私の記憶にまちがいがなければ、近代的なシークレットサービスの歴史もヴェネツィアなしでは語れないと塩野女史は書いていたはずである。 『ヴェネツィアのシークレットサービス』という本を見つけた時はだから、迷わず購入してし

        • 翻訳したい本 その5 ROMA CAPVT VINI

          私は下戸である。 だから、本当はワインを語る資格などないのだ。それなのになぜか、ワインをはじめとするアルコールの文化というものにひどく心を惹かれるのである。 この本はもちろん、「ROMA CAVUT MUNDI(世界の首都ローマ)」というラテン語をもじっている。つまり、ローマはワインという食文化の中心でもあったという趣旨である。 面白かったのは、かつてのローマ帝国で愛飲されていたワインの血脈が、キャンティやバルバレスコ、はてはボルドーやカベルネといったフランスワインにい

        翻訳したい本 その8 Terraneo

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        • イタリア語書籍
          7本

        記事

          翻訳したい本 その4 修道院にまつわるさまざまな料理の本

          イタリア料理の本を読んでいると、よく出くわすのがキリスト教のお坊様たちだ。 たとえば、パルミジャーノ・レジャーノ・チーズはイタリアが誇るチーズの王様であるが、このチーズの登場にはベネディクト派の修道僧たちによる灌漑と牧草の確保がなければ登場しえなかったのである。 暗黒の中世から、食や技術やさまざまな文化は安定した経済力を有していた修道院で紡がれてきたらしい。 というわけで、聖人の名を冠したお料理や修道院で生まれたアルコールもかぎりなく存在する。 私が偶然書店で手に取っ

          翻訳したい本 その4 修道院にまつわるさまざまな料理の本

          翻訳したい本 その3 アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ

          私は、この人の本が出版されると書店にはせ参じる。 ヴェネツィア生まれのジャーナリストであるアレッサンドロ・マルツォ・マーニョは、書籍のテーマが「歴史」「美術」「食文化」と、私の興味のど真ん中を突いてくる。そのうえ、本の装丁も外れることなく美しいから、値段も見ずに購入してしまうのが常だ。 そもそもは、2014年に出版された『Il Genio del Gusto』を偶然書店で手に取ったのが始まりであった。ピザやパスタ、生ハムやジェラート、そしてヌテッラやティラミスにいたる

          翻訳したい本 その3 アレッサンドロ・マルツォ・マーニョ

          翻訳したい本 その2 フィリップ・ダヴェーリオ

          イタリアに来た当初、RAI 3でよく目にした番組のひとつが「Passepartout」であった。 その番組の進行役フィリップ・ダヴェーリオは、なかなか味のある容貌で(つまり正統派の美男ではなくて)、また非常におしゃれな人なのである。ジャズ、クラシック、ポップ、ロックなどの粋な音楽をバックに、ダヴェーリオ独自の美術論が展開するのだが、日本の大変まっとうな美術番組を見慣れていた私にはそれはとてもオトナの番組に感じたものだ。 正統な美術史家とは異なる観点から語られるダヴェー

          翻訳したい本 その2 フィリップ・ダヴェーリオ

          翻訳したい本 その1 マッシモ・モンタナ―リ著『I Racconti della Tavola』

          私は一種のビブロフィリアで、装丁が美しい本はなんでもかんでも手元に置いておきたいというヘキがある。 というわけで、家の中には読みもしないのにため込んだ本が山と積まれている。わたしは、本の装丁と内容のレベルは合致していると信じているので、美しい本はたいてい内容もイケているとほぼ確信しているのだ。 これは絶対に日本に紹介すべきだと思える良質な本は多い。ところが、昨今は本が売れない。その中でも特に売れない翻訳本は、出版社も二の足を踏む。 マッシモ・モンタナ―リが著した『I R

          翻訳したい本 その1 マッシモ・モンタナ―リ著『I Racconti della Tavola』