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リアルな人間をメタバースに転送する装置があるらしいので、話を聞いてみた。

最近、いろいろなところで目にするようになった、メタバースという言葉。3次元の仮想空間でアバターを使い自由に過ごすことができるという、アレです。
 
アバターの多くはキャラクター化されていて、そのために現実を忘れて新しいジブンになれるのが良いところでもあります。でも…正直なところ、キャラクターになるのが恥ずかしいという人、いませんか?
 
自分の殻を脱ぎ捨てられないのが日本人というもの。マトリックスのように、キアヌリーブスがキアヌリーブスのまま、メタバースにいることがあっても良いじゃない、と思うわけです。
 
そんな、ちょっと恥ずかしがりの人に朗報です。なんと、人間をリアルな姿のままメタバースに転送する技術をキヤノン株式会社さんが開発したとのこと。
 
ふーむ、これはビジネスの匂いがします。中京テレビの新規事業創出プロジェクト「SWING」は、空振りしてもいいからフルスイングがモットー。メタバースの企画から運営までを一括で引き受ける新規事業「エブリバース」を担当する石橋が、協業の可能性を探るべく、キヤノンさんにお伺いしました。

キヤノン川崎事業所

訪れたのは神奈川県川崎市にあるキヤノンの川崎事業所。「事業所」という言葉のほっこりした響きに似つかわしくない、まるで近未来都市のような趣き。人間を3D空間に転送する装置があるというのも、納得です。
 
エレベーターで地下階に降りると、そこには全面グリーンバックと無数のカメラに囲まれたスタジオ。実はこの「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」こそ、人間をメタバースに転送する装置の正体なのです。

「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」で説明を受ける石橋

そもそもボリュメトリックビデオ技術とは、複数のカメラを用いて空間を撮影し、空間全体をほぼリアルタイムに3Dデータに変換・編集することで、映像として配信・再生できる技術のこと。

360度どのアングルからでも視聴できるほか、さまざまな背景CGと合成することで多様な表現が可能になります。撮影した映像は、例えばTV番組やCM用に2D映像にすることもできれば、VR/AR用に3D映像として展開することも可能。つまり、メタバースに持ってくることも可能なのです(いろいろと調整は必要かもしれませんが)! 
 
これはエブリバースとの協業でいろいろと可能性が広がるはずです。何ができるかはわからないけど、たぶんすごい…はず。早速、キヤノンさんにアイデアブレストを申し込みました。
 
キヤノンの藤井さん、奥谷さん、何か良いアイデアをください(他人まかせ)!

内定式、授賞式━━。企業のイベントをメタバースで開催

(右)イメージソリューション事業本部 SV事業推進センター 副所長 藤井賢一さん(左)同センター 課長 奥谷泰夫さん

奥谷(キヤノン)「私たちはボリュメトリックビデオを、リアルな人間をバーチャルの世界に連れていくための技術だと思っているんです。そういう意味では、メタバースの仮想世界の中に、現実世界の中で実際に起こっていることを取り込むためのデジタル技術とも言えますよね。
 
中京テレビさんのエブリバースは企業のニーズに合わせて企画しているということでしたので、企業での活用について考えると、例えば企業の社長がメタバースで講演する、なんてどうでしょう? 講演をボリュメトリックビデオスタジオで撮影すれば、リアルな社長がメタバース上に現れて全世界に配信することができます。配信先の国に合わせて、アメリカならばNYの街中で講演しているような背景にすることだってできますよ。
 
先日、IBMさんの講演会に弊社も登壇させていただくにあたり、ボリュメトリックビデオスタジオで撮影した講演映像を配信しました。こちらは2Dの動画として配信しましたが、メタバースに応用することも、もちろんできます」

ボリュメトリックビデオを利用して講演した実際の映像

石橋(中京テレビ)「今、エブリバースにはいろいろな企業さんからご依頼が届いているのですが、その中で少なくないのが内定式や社内の授賞式のご相談です。お客さま向けのイベントもやりたいけれど、まずは社内イベントで試してみたい、ということで。そういった社内イベントをよりリアルに近づけて行うというのは、アリですね!」
 
藤井(キヤノン)「内定式であれば、お互いの顔を見たいという場合もあるでしょう。会場も自由自在ですよ。武道館でやることだってできます」

キヤノンの藤井さんはオンラインで参加

メタバース×ボリュメトリックビデオなアイデア① 社内イベント
企業の社内イベントをボリュメトリックビデオスタジオからメタバース上に配信。リアルな姿で参加することができ、その企業のブランドに合わせた仮想の会場や演出も可能。


メタバースを音楽ライブの会場にして超リッチな空間演出

勢いで東京まで来たが、なんとなく上手くいきそうな雰囲気に安心した様子の石橋

のっけから、実現可能性の高そうなアイデアをいただきました。ボリュメトリックビデオのメタバースへの活用という視点で考えると、つまりはリアルな姿で参加したいというシーンを考えるのが1つの入口になりそうです。
 
藤井(キヤノン)「あとは音楽ライブもありますよね。アーティストにボリュメトリックビデオスタジオへお越しいただき、ライブ演奏をしてもらう。そのライブをメタバースで配信するんです。曲調に合わせてメタバース内の空間や演出がどんどん切り替わっていく、なんてどうですか?」
 
石橋(中京テレビ)「そうですね。これまでは教育分野やメタバースのビジネス活用などを担当することが多くて、私自身はエンタメ系の取り組みがなかなかできていないんですよね。私はやっぱりエンタメが好きなので、是非取り組んでみたいです」

ボリュメトリックビデオスタジオで撮影した「ばってん少女隊」のMV 

メタバース×ボリュメトリックビデオなアイデア② 音楽ライブ
音楽のライブをボリュメトリックビデオスタジオからメタバース上に配信。メタバースであれば、アーティストのすぐ横で観客が一緒に踊るなんてことも可能に。

エブリバースとの初コラボは、スポーツ!?

石橋(中京テレビ)「ちなみにボリュメトリックビデオはロケ撮影もできるのですか? キヤノンさんには野球のスポーツ撮影の実績もありましたよね?」

奥谷(キヤノン)「できます。野球のライブ中継に自由視点映像を導入するため東京ドームに92台のカメラを持ち込んで撮影したことがありましたね。東京ドームの屋根の近くにカメラをぐるっと配置させていただいて。スポーツでは、野球以外にもサッカー、ラグビー、バスケットボールなどの実績もあります。スポーツのお問い合わせは今かなり多いですね。 

実はボリュメトリックビデオの開発は、スポーツの新しい観戦体験を提供したいというところから始まっているんです。なので、今後もスポーツの撮影には力を入れていきたいと思っています」

【自由視点映像】投手・守備のボリュメトリックまとめ【巨人篇】

石橋(中京テレビ)「競技の中で、後でここの角度から見たいというシーンがあったら、見返せるということですよね?」
 
奥谷(キヤノン)「約百台のカメラから撮影した映像が3Dデータとして残っているので、後から自由な視点で2D映像として切り出すこともできます。つまり、試合が終わってから、カメラワークを決められるんです」
 
石橋(中京テレビ)「映像のロケ撮影だと、取り逃しみたいなのが一番怖いんですけど…その恐怖から解放されるってことですね。メタバースで展開するとなると、試合会場をまるごと仮想空間にもってくるってことになりますか?」
 
藤井(キヤノン)「それをやりたいですよね。視聴者一人ひとりが好きな場所に移動して、好きな選手を追いかけながら好きな場所で観戦できる。メタバースでは実体はないので、プレーしている選手のすぐ側にいてもいいわけです。動くスピードにも限界はありませんから、ホームランボールに乗っかってそのまま飛んでいっちゃう、みたいなこともできる可能性があります」

メタバース×ボリュメトリックビデオなアイデア③ スポーツ観戦
スポーツ会場にボリュメトリックビデオ撮影用の機材を持ち込み、会場をそのままメタバース上で再現。メタバース上の会場では、場所や重力などあらゆる制約のない状態で自由に試合観戦が可能。

スポーツの話になると特に話に熱がこもる藤井さんと奥谷さん

石橋(中京テレビ)「今はまだコロナ禍の影響があるので、メタバース上でのスポーツ観戦は良いですよね!」
 

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キヤノンさんのご厚意でなんとか実現に至った今回のブレスト。1時間弱にも関わらずさまざまなアイデアが生まれました(ほぼ一方的にアイデアをもらっていた)。ボリュメトリックビデオで撮影した3Dデータをそのまま体験できるため、メタバースでの展開はとても可能性がありそうな印象です。
 
メタバース×ボリュメトリックビデオ、こんなことできない?なんてことがあれば、是非お気軽にご相談ください。SWINGチームがフルスイングでアイデアを出させていただきます!