ジェフリー・ディーヴァーのこと、『ウォッチメイカー』のこと
・はじめに
はじめに断っておきますが、この記事は読書感想文とは言いがたいものになると思います。そこはご了承ください。
記録によると、私がこの作品を読むのは四度目らしいです(実はもっと読んでいるかもしれません)。私はリンカーン・ライム・シリーズはすべて既読ですが、たまに何かしら読み返したくなります。
最近その気分だったので、シリーズ代表作と名高い『ウォッチメイカー』を再び手に取りました。
・「どんでん返しの魔術師」ディーヴァー
リンカーン・ライム・シリーズに対して、「どんでん返しがある」と言うことは、未読の方の興を削ぐことにはならないのではないかな、と個人的に思っています。
シリーズにおいて、魅力的なキャラクターや緻密なプロット、「名犯人」vs「名探偵」の構図が多いことと同様に、どんでん返しも重要な売りの一つなので、むしろそこもプロモーションしないと届いてほしい層に届かない可能性もあるな、と(どんでん返しがある、と宣伝されることをネタばらしとして捉える方がいらっしゃるのも承知しています)。
そもそも、中盤までの展開からどんでん返しを予測できる方は、おそらくあまりいないのではないかと思います。
シリーズを続けて読むとさすがに食傷気味になってしまいますが、ふと思い出したときに手に取ると、極上のエンターテインメントを味わえます。ディーヴァーは小説における超一流のエンターテイナーなのではないでしょうか。
・『ウォッチメイカー』
リンカーン・ライム・シリーズの代表作、だと思います。これから文庫で読まれる方は、上巻を読まれるときに「なんでこれが代表作なの?」と疑問に思われるかもしれません。
上記の文章もネタばらしに近いかもしれませんが、下巻を読まれたときには、期待を裏切らない内容だったと思うのではないでしょうか(あくまでエンターテインメント作品として、です)。
私はもう何度も読んでいるので、正直な話、この作品で展開やどんでん返しに驚くことはほぼありません。無駄のない緻密なプロットや、キャラクター同士の小粋なやりとり、読者に対して説得力のあるどんでん返しの技術などを楽しんでいる節はあります。
あと、今回の再読で、のちのシリーズ作品の重要な伏線を見つけ、「ここから仕込んであったのか」と感心しました。
・今後……?
これは担当編集の方もおっしゃられていたことですが、気になる点がひとつだけ。
『ウォッチメイカー』の原題は"The Cold Moon"です。「名犯人」役の通称が「ウォッチメイカー」なのでタイトルはまったく問題ないのですが、もしディーヴァーが今後"The WatchMaker"というタイトルの作品を書いたときの邦題はどうなるのでしょうか……?
確かに、読んでみると「邦題は『ウォッチメイカー』以外ないな」と感じるので、難しいところです。
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