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【第1章】儲かるかどうかは産業の構造によって決まる

※「世界標準の経営理論」で学んだことのメモ一覧はこちら

最近、世界標準の経営理論」(著入山章栄さん)を(ずっと積読だったが)読み始めた。その内容が、本当に分かりやすくて面白いので記憶に残したいと思い、ブログに投稿してみることにした。自分が面白いと思ったことを拙いメモとして書いているので、内容は正確さについては目をつぶってもらい、読んだ人にとって何か少しでも気づきに繋がることがあれば嬉しく思う。


図1:第1章「ポーターの戦略」の根底にあるものは何か(個人的解釈)

SCP理論とは?

本編を読み始めて一行目で行き詰った「SCP理論」ってなんだ。SCPは「structure-conduct-perform(構造-遂行-業績)の略である。もともとは経済学の産業組織論の分野で研究されていたが、そこから派生して「経営学のSCP」が研究されるようになったそうだ。。
そして、1970・80年代にその先駆けとなったのがハーバード大学のマイケル・ポーター教授である。(代表作は「経営の戦略」)

世の中には構造的に儲かる業界と儲からない業界がある

本の中では「経営学のSCP」の説明として業界構造に関する分析が紹介されている。内容はアメリカにおける1999年から2002年の税国主要産業が業界ごとにどれくらい儲かってるかを集計したもので、製薬業界はROE(株主資本利益率)は20%を超え、すごく儲かっている一方で、航空業界は-35%と他と比較してダントツで低くなることを示している。

なぜこの差が生じているかを紐解いていくと、3つの条件が儲かるかどうかの業界の構造に大きな影響を与えていることがみえてきた。(詳細は経済学的説明でややこしいので割愛)
【業界が儲かるかどうかに大きな影響を与える3つの要因】
1.業界内にたくさんの企業が存在しているか?
2.新たに業界に参入する障壁(コスト)があるか?
3.製品・サービスを差別化する要因が多いか?

3つの要因に基づいて、先の2つの業界を整理してみると業界の違いを理解することができるようになる。
事例:製薬業界(儲かりやすい)

1.業界内の大手企業は限られている。
2.製薬の研究開発には多額の資金がかかるため参入障壁が高い。
3.特許を取得すると一定期間は独占販売が出来、差別化しやすい。
事例:米国航空業界(儲かりにくい)
1.業界には100社以上の企業が存在。
2.1978年に大幅な規制緩和がされたのに伴い参入が容易になった。
3.多少の機内サービスの差はあれど、差別化は難しい。

さらに、この3つの要因を推し進めて、もっと儲かる業界はないのかを考えてみると、一時期のパソコンのOS(オペレーションシステム)業界のマイクロソフトなどは業界を独占し大儲けしたといえる。
事例:パソコンOS業界(最も儲かりやすい)
1.当時の大手企業はマイクロソフトのみであった。
2.パソコンのOSにはマイクロソフトが組み込まれて販売される契約があったため、参入障壁が高かった。
3.マイクロソフトのOSを活用したソフトが開発されるので、利便性が高まり差別に繋がった。

マイクロソフトは極端な例だが、ここで一番押さえておくべきは「全ての業界は完全独占(儲かる構造)と完全競争(儲からない競争)の間のどこかに位置している」ということだ。

業界で儲けるにはどうしたら良いのか

構造を理解した上で、自社に儲かるにはどうしたら良いかを考える時、マイクロソフトのように独占するのはなかなか難しい。だが、業界の数社で利益を分かち合う寡占という状態は「暗黙の共謀」と呼ばれており、現実的によくあるので参考になる。例えば、2010年代の日本の携帯通信業界はDocomo/KDDI/Softbankで値下げ競争をせず、高い収益性を保っていた。(最終的には通信料が高止まりしてる状況に府が介入し体制が崩れたが、裏返せば寡占状態は企業にとってそれくらい都合が良いということ。)
では、寡占を実現するにはどうすれば良いかを考える時、幾つかの基本的な考えが紹介されている。
「法律の規制」
法律で規制されている認可事業は、新規参入できないため、寡占状態を実現しやすい。
・「規模の経済」
生産量が増えるほど、原価を下げられコスト競争力が働く業界(食品業界等)は先に参入した企業が寡占が築きやすい。スタートアップ企業の多くは、規模の経済による先行者利益を得ることを目指す。
また、新規参入に初期費用がかかる業界(インフラ業界、製薬業界等)も資金が豊富な企業しか参入できないため、寡占になりやすい。
・「差別化戦略の実施」
儲からない業界でも、他の企業と差別化を図るポイントを見つけることで、大きな業界を細分化し、その中で寡占状態を作ることはできる。例えば、自動車業界というとトヨタが一番に思い浮かぶが「軽自動車メーカー」に細分化するとスズキがスズキ/ダイハツなどで寡占している状態を実現している。同様に「ラグジュアリー車メーカー」では外車が強いなど、業界規模が大きい場合には細分化グループで差別化を図ることで、寡占を実現することが可能になる

インターネットの普及による独占業界の誕生

さきほど独占は難しいので寡占を目指すのが現実的と書いたが、実際にはインターネットの普及によって、完全独占の業界も出てきている。
具体的な事例としてはFacebook/Youtubeのようなプラットフォーマーの事例がわかりやすいだろう。
これは「ネットワーク効果」と呼ばれるもので、「多くの人が同じサービス・製品を使うことで、自分にとってもメリットが得られる」ことが特徴である。今、Facebook/Youtubeを使うのは、色々と比較検討した結果しようしているのではなく、みんなが使っているからという人が大半だろう。
そして、みんなが集まってくるので、利便性が高まり独占が加速していく構造になっている。
このような独占状態を勝つためには、特定のグループをターゲットに違う切り口でサービスつくり、新たなプラットフォームを作り上げていくしかない。最近ではTiktokなどが良い例と言えるだろう。

「ポーターの戦略」の根底にあるものは何か

1章のタイトルがこれなのだが、最後まで読んで「全ての企業は完全独占と完全競争の間のどこかに位置しており、少しでも完全独占に近づくためにどうするかを考えることが戦略である」ことを少しは理解出来たと思う。
仕事をしていると、どうしても目の前の売り上げを上げるためにはという手段に目を行きがちだが、構造を理解しないで手段を実行しても意味がないことも多いと思うので、まずは構造を俯瞰することを意識するようにしたい。





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