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筆を離れた瞬間から過去になる

作っている時や、描いている時、もしくは書いている時。
楽しいなぁ幸せだなぁ。生きている心地がする。ずっとこのままの状態が続くといいのにと考える隙もなく、制作に没入する時間。
不安なことや嫌なことがあっても、
いとも簡単に忘れ去られる。
今何があっても大丈夫ぐらいの気持ちになれるので、もはや最強。
しかし、何かを描いている時、
最後の筆を離れる瞬間。
「終わってしまった……」
例えば、

ずーっと楽しみにしていた遠足、いよいよ明日。
晴れるかな。
これで明日は大丈夫。
ナップザックの中身もきっかり確認した。
・お財布よし
・ハンカチよし
・ティッシュよし
・酔い止め薬よし
・吐く用の袋よし
・内緒で持ってく飴玉よし
・猫のぬいぐるみよし
よーしよーし
当日、準備万端。
学校の時は寝坊ばっかりするくせ、今日は出発2時間前に起床。
急に偉くなった気になる少女C。
みんなと食べるお弁当の時間がなんだかんだ一番すき。
お母さんがつくった少し大きいおにぎり。
中身はお決まりの鮭に、のりたま、おかかが入ったまん丸に海苔がしっかりと全体的に(ここがポイント)丸め込まれたもの。
黒の中からチラリと垣間見える白。
白黒の対比。
こんなにもコントラストを視覚的に楽しめる食材があるのか。
口に入れると
なんて優しい素朴な味なのだろう。
お米の粒の細やかさに、海苔の破ける感触。
破けた瞬間に香る磯のかほり……
追い討ちをかけるように鮭がトドメを入れに来る。
「おいしい……」
と、思わず少女C。
美味しさを噛みしめて、口の中に旨味が未だ残っているそれまでに、
水筒に入れてもらった麦茶をフタに入れて、ズズズと一杯(満タンに入れ一気に飲み干す)。
日本人で良かった……
飛んで夕方。
遠足を楽しんだ生徒は、学校の校庭に集められ、眩しい夕陽を浴びながら体育座りをさせられている。
先生の最後のあいさつ。
帰り際に
「家に帰るまでが遠足だ」
締めの言葉。
帰り道。
なぜか行きよりも、荷物が重く感じる。
実際、重さは変わっていないのに。
「あぁ、終わってしまった……」と思う。(その言葉待っていました)

この「終わってしまった」という感覚。
筆を離れた瞬間に感じるのである。
その日までは、楽しかった時間は持続する。
しかしどうだろうか、
次の日にはすっかり過去のものになってしまう。
新しい作品のことを考える。
新しい作品を考えた瞬間。
過去の作品とは、なんだかお別れのような、寂しい気持ちになる。
そして過去の作品に言う。
「次作るものは、もっといいものに仕上げてみせるから」
そしてしばらくの間お別れと、ふたを閉じる
「ありがとう」


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