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過去の記憶

ふと、五月になったな。と思った。
五月といえばどうのという話でも無いのだけれど、
季節の流れは自分の意識が追いつかないほど、早く過ぎていく。
日々忙しくしていると数日前に思い描いていたものでさえ、
何かに書き留めていなければ、忘れ去られてしまう。
思い出したいのに思い出せない。
いつか、ずっと大事にしていたものさえ、忘れてしまう日が来てしまうかもしれないと想像すると、少しだけ怖くなる。
その日に起こったこと、考えたことを日記に書き留めているけど、毎日同じような生活をしていると次第に書くこともなくなり、感覚が鈍っていく。
思考を止めてはいけないのだと思う。

ふと五月になったな。と思った。
私は、日本の四季が好きである。
色彩が少しづつ移り変わり、静かに流れる日本の季節が。
春には植物がゆっくりと育っていき、
夏にピークを迎える。
秋は色に深みが増していく。
冬は土に帰る準備をし、
やがて静かに眠っていく。
循環している。

「五月といえば、なんですか。」
と聞かれれば、
なぜか鯉のぼりが頭をよぎる。
幼稚園の頃は、布に自分の好きな色を選んで目と鱗を描き、飾った。
魚の鱗は、美しい。
光に当たると七色のように反射するが、あれを思い描いていた。
風にあたり、本物の魚のように鯉のぼりが泳ぐ。
龍にも見えるその姿は、人の目には清々しく映っている。

以下は、瀧 廉太郎 作曲の鯉のぼり

大きな黒い 親鯉に
小さな赤い 鯉の子が
いくつもついて昇っていく
海のような 大空に

今でこそ鯉のぼりを飾っている家は少なくなったと思う。
あの青い空になびく、たくさんの鯉のぼりを想像すると、ホッと温かい気持ちになれる。

そういえば、
私が小さい頃母が、
「あなたが生まれる前は、男の子かと思ったのよ」
と言っていたことを思い出した。
私には上に二人姉がいるのだが、
母曰く、
二人の姉とはお腹の中での動きがどうも違かったらしい。
ずーっと男の子だと思って、検査をしたら、
女の子と判明したとのこと。

あぁ、もしかしたら、
昔男の子で、鯉のぼりを飾ってもらっていたのかもしれない。
と、そんなことを考えた。

過去の記憶というものが存在するかは、
私にもわからないけど。


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