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「コールセンタージャパン300号記念セミナー」講演のレビュー

月刊コールセンタージャパンの矢島です。ちょっと間が空いてしまいました^^;

先月末、弊誌「コールセンタージャパン」の300号記念セミナー&パーティを開催しました。ご来場頂いた方はもちろん、日頃、ご愛読&お世話になっている皆さま、本当にありがとうございます。

大勢のご来場、ありがとうございました。

セミナーの模様は、来場いただいた高橋克巳さまがNoteでまとめていただいています。
https://note.com/mobilebiz/n/n3cd11a307dc0
高橋さま、ありがとうございます。


コールセンター白書について

僕は露払い的なプログラムとして最初に講演させていただいたのですが、せっかく資料も作ったし、ちょっとここでレビューしようかな、と思います。

タイトルは「コールセンター白書」のデータ変動にみるセンターマネージメントの近代史と近未来」。大仰な感じです^^;
弊社は年に1回、「コールセンター白書」というデータブックを発刊しています。2003年、はじめて世に出して以降、編集させていただいています。
そのなかに、国内のコールセンター運営企業(弊誌の読者中心。BPOベンダーは原則除く。BPOベンダーに委託している委託元企業は対象))に対するアンケート調査を収録していますが、その回答の変化を検証してみよう、という講演です。

コールセンター運営上の課題

いつも講演のときは引っ張り出す資料が、「コールセンター運営上の課題」に関する回答。調査開始の2001年から2003年までの回答がこれ。

で、コロナ直前の2019年の回答がこれ。

昨年、一昨年の調査結果がこれ。


選択肢が違うので単純な比較はできないんですが、いつの時代も「オペレータの採用・育成」は高いウエイトを占めています。初年度の2001年は25.3%で、この水準だったのは「派遣切り」が社会課題となったリーマンショック後、そしてコロナ初年度の2020年くらいで、こうした特殊事情の時期以外はずーっとリソース(人手)不足だったのです。ここ2年ほどは、いわば人材市場の「コロナ特需」も早々に終了し、コロナ以前よりも採用が難しいという声をよく聞きます。
簡単にいうと、コールセンターとは、景気が悪くなって雇用環境が悪化(労働者にとって)したとき以外は、とにかく人手不足なんです。ということは、今後、人手不足が緩和されるとすれば、やはり経済環境が悪くなって「人が退職、離職しにくくなる」ときだけということに他なりません。当然ですが、こんな状況は誰も望んでいませんよね。

ちなみに、数年前にも歴史を振り返る的な講演のために資料作成したのですが、そのときのスライドはこちら。

2019年作成の講演資料

「コールセンターという市場は、世の中に不幸な出来事が起きれば(特需で)盛り上がる」みたいなことを言ってます。我ながらひどいことを言っていると思いますが(汗)、まぁ事実です。

変わる「リソース(人材)」への考え方

しかし、ここ数年、「人材」に対する考え方が変わってきた気配を感じています。

変わる人材マネジメント

かつては、「安価な労働力を短期契約で回転させる」というマネジメントが中心でした。実際、2000年代後半くらいまでは、「オペレータ3年定年説」みたいなことを言う人も多かったです。ストレスフルで3年くらいしかもたん、ということ以外にも、雇用側も「適度に入れ替わってもらったほうが人件費も抑えられるし、マネジメントしやすい」と言い切るセンター長も多かったですね。労働契約法や派遣法の改正で、長期間、有期契約社員のままでは雇用できませんという形になったのも大きかったです。

ところが、ここ数年はちょっと「人材」に対する考え方や雇用モデルが変わってきています。あまりにも採用できない環境と、その法改正の影響もあってか、「なるべく長く働いてもらいたい」と言い出すセンターが増えているのです。とくに地方拠点に顕著なのが、「正社員採用」「新卒採用」に積極的なセンターです。

コロナ前、もっと前か。沖縄に何度か取材に行ったことがありますが、当時、耳にしたのは大学の先生や親に「コールセンターだけはやめておけ」と言われる求職者が多かったということ。ちなみに、当時は長崎県でも同じことを聞きました。つまり、「ほぼ使い捨ての駒」みたいなマネジメントに終始していたということです。キャリアは積めない、給料も安い、なんかあったらあっさり契約も切られる。ついでに言うと、顧客からは怒鳴られる。まぁ、教え子や我が子を働かせたいとは思いませんわな。

この風潮が脱却できそうな気配を感じます。ほとんどは「地域限定」「職種限定」みたいな正社員が多いのは事実ですが、それでも長期にわたった働いて、ちゃんとしたスキルを身につけることができる環境が少しずつ、できつつあるかなと思います。

この話の前提となるのが、「コールセンターの種類」です。
2023年、コロナ禍のどさくさに紛れて(言い方^^;)、ワクチン対応センターの受託で過大請求が相次いで発覚しました。その際、これはいかん、と急遽特集を組んだのですが、そのときに「BPOには2種類ある」と教わり、絵ももらいました。その絵を眺めてたら、「これ、BPOじゃなくてセンターそのものにもあてはまるな」と思って手を加えたのがこのスライドです。

いわゆる定型業務をこなす「作業型」と、非定型的で難易度が高く、対応品質がロイヤルティに直結するような「CX型」です。
最近、コールセンタージャパンに登場する事例の多くは後者です。というか、前者型は自動化の取り組み以外に書くネタがありません。

作業型センターは、確実にAIに置き換わります。結果、ITソリューション市場はしばらくは右肩上がりの成長が続くでしょう。ただし、大規模センターは減少するので、ライセンス依存型のビジネスモデルは厳しくなる可能性が高いです。
BPO市場は、これまで成長を支えてきた作業型センターの受託は一気に減って、もっとクライアント業務に寄り添って課題解決を提案できるソリューションベンダーのみが生き残ることになりそうな気がしています。

思ったより長くなったんで、2回に分けます(^^;)

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