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コールセンタージャパン300号発刊記念セミナーを受講して感じた、30年経って変わったもの、変わらないもの

2024年1月26日、コールセンタージャパンの300号発刊記念セミナーに参加したので、忘れないうちに記録しておきます。

当日は会場内での写真撮影が禁止だったため、文字だけで伝えるのは大変ですが、会場の様子はFacebookに上がっていたので、ぜひそちらも御覧ください(スーツ率が高く、金髪にパーカーは僕だけなので相当浮いていますw)。

300号記念セミナー、最後のセッションの開始です。 皆さま、本当にありがとうございます。

Posted by Callcenter-japan.com on Thursday, January 25, 2024

当日は、発刊記念講演が1つ、パネルディスカッションが2つの大きく3部構成。その後に懇親会という流れです(残念ながら僕は別件で懇親会には出られず)。

発刊記念講演

「コールセンター白書」のデータ変動にみるセンターマネージメントの近代史と近未来
コールセンタージャパン編集長 矢島竜児氏

コールセンターの歴史からみるトレンドの変化

まずは300号、おめでとうございます。月刊誌が300号まで続いているというのは本当にすごいことだと思います。
そもそもコールセンターという言葉が出てきたのは94年か95年。銀行のテレホンバンギングに併せて開設されたとのことでした。すでに30年の歴史があるわけですね。
確か、僕が初めてコールセンター業務というものを知ったのも2000年より少し前、当時富士通のパソコンサポートを請け負っていた会社さんとの出会いからでした。
そこで聞いた忘れない言葉があって、それが「コールセンターは人のビジネス」でした。コールセンターはオペレーターのストレスがめちゃくちゃ溜まる業種で、それこそ離職率も非常に高い職種です。

今回の講演の中でも、毎年テクノロジーやトレンドは新しく生まれてくるものの、コールセンターの課題は常に人材不足という人にまつわるものだそうです。なるほど、結局人のビジネスでなんだと改めて認識しました。

しかし、人材に対する考え方は確実に変化してきていて、従来は「オペレータ3年定年説」が生まれるほど、人材の入れ替わりに対してどう対応するかを考えていたものが、現在は優秀な人材をいかにして長く働いてもらうかを考えるようになってきているとのこと。実際、パートやアルバイトから正社員の採用が増えてきているのが数字にも現れているようです。

コールセンターの2パターンとカスタマーサクセス

コールセンターには大きく2種類あるという話も興味深かったです。一つは作業型コールセンターで、もう一つは戦略(CX)型コールセンターです。
従来のコールセンターは、BPO(Business Process Outsourcing)業者などに委託しやすい作業型が多く、企業から見てもコストセンター(売上を伴わないコストだけが発生する部門)として役割になっていました。しかし昨今では、コストセンターではなくプロフィットセンター(利益を生むことができる部門)として考えるようになってきているようです。
これは常々僕も同じことを思っていて、顧客接点の最適化こそが企業の生き残り戦略での重要な要素であり、そこをうまく改善できれば、コールセンターは利益を生み出す部門になるという考え方です。
この考え方を踏襲するのが、カスタマーサクセスという言葉で、今回のセミナーの第二部でも取り上げられるキーワードになっています。

今後の動向

今後の動向ということでは、先程の作業型コールセンターはAIに置き換わっていくことが避けられず、結果的にBPOの仕事がだいぶ変わっていくだろうという予測でした。
個人的には、BPOには厳しい時代がくるというより、BPOの役割が変わるというように予想しています。BPOが使うツールにはAIの活用が当たり前になり、従来のようにBPOはオペレータを確保するという役割から、AIを活用して作業型のコールセンターの自動(AI)化をサポートをすることが重要になってくると思います。

テクノロジーに関する予想では、生成AIやクラウドの一般化はもちろん、現在は別々に構築されているノンボイス系チャネルのボイス系との統合が行われていくだろうとのこと。これはまさに僕らがいま推し進めているソリューションそのものであり、とても心強く感じました。

パネルディスカッション① 顧客接点の未来像

サブタイトルは、『コンタクトセンター✕カスタマーサクセス
顧客体験向上を最大化する「新しい接点」のカタチ』。

第二部は、記念講演でも出てきたカスタマーサクセスにフォーカスしたパネルディスカッションで、モデレータはカスタマーサクセスに関する書籍の執筆など、その業界の第一人者でもある山田ひさのりさん。

パネリストは、SBI証券カスタマーサクセス推進部長 河田裕司さんと、サイボウズ・コネクトシー代表取締役社長 関根紀子さんです。

SBI証券のカスタマーサクセスの取り組み

SBI証券はオンライン総合証券の最大手であり、月に30万件の入電を処理するために、コールセンターを全国に5拠点保有されています。特に最近では、新NISAなどの商材が活況であり、問い合わせも増加傾向にあるようです。
同社では、すでにコールセンターをプロフィットセンターと捉え、型にとらわれない接客をするためにトークスクリプトを廃止し、顧客のロイヤルカスタマー化を推進することで経営に寄与しているとのこと。

このスタイルを実現するために同社のコールセンターでは、顧客の状況をいかに正確に知った上で対応ができるかを追求しています。たとえば、顧客にホームページ上で事前に問い合わせ内容を入力してもらうことで、スキルベースルーティングの最適化をおこなったり、顧客のWeb履歴と問い合わせ内容の突き合わせ、さらには顧客がどのページを見ているかなどをオペレータが確認することで、顧客満足度の向上を実現しているそうです。
また、繋がらなかった顧客へのコールバックの方法も3種類用意し、顧客目線でのサポートを実現することで、ロイヤルカスタマー化を進めているのが特長的でした。

サイボウズのカスタマーサクセスの取り組み

サイボウズがカスタマーサクセスに取り組み始めたのは今から5年前のこと。その背景には、同社のビジネスモデルの大きな方向転換が存在していました。
それは、それまでのパッケージ(オンプレミス)販売から、現在同社の主力商材である、kintoneに代表されるクラウドサービスへ大きく舵を切ったことです。これには、サーバーなどの機器とソフトウェアパッケージをセットで販売していたパートナーからは相当反発があったそうですが、それにもまして、売り切りモデルからサブスクリプションモデルに転換したことによって、ユーザーがすぐに始められるメリットの反面、チャーン(解約)のリスクを考える必要がでてきたことでした。

そこで同社は、従来のようなユーザーサポートではなく、オンボーディングを重視するようになります。テレビCMやイベント出展など、多大なコストを掛けて獲得した新規顧客を、いかにオンボーディングしていくかが重要になってきたわけです。
そのために、顧客向けのセミナーやSNSの活用など、カスタマーマーケティングを拡大した他、コミュニティマーケティングも積極的に活用するようになりました。

とはいえ、顧客数が圧倒的に増えていく中で、すべてのお客様に全力で取り組むのは現実的ではありません。そのため、顧客の優先順位付けをするためのヘルススコア(サクセス度合い)を策定し、収益に影響が出そうな顧客をハイタッチ、それ以外はテックタッチで対応するようにしています。とくに1社内でのID数を増やすエンタープライズ向けの戦略と、SMBに対して導入社数(サブドメイン)を増やす施策を分けることで、効率よくカスタマーサクセスを実現しているのが印象的でした。

セッション2のまとめ

カスタマーサクセスはプロフィットセンターになりうる取り組みではあるものの、事業にリターンするには相当な期間(3〜5年)かかると考えたほうが良いとのこと。また、「顧客満足度」と「顧客の成果創出」は別々に実現する必要があるようです。前者が従来のコールセンターの指標とすれば、後者がカスタマーサクセスの指標であり、それぞれは別の取り組みであることがわかりました。
また、従来のコールセンターはどうしても顧客の声が大きく、オペレータとの関係が対等ではないのに対し、カスタマーサクセスでは顧客と企業がフェアな関係をつくれるため、とくに若い人たちにとっては働きやすいのではないかという意見は非常に納得しました。

パネルディスカッション② 最大の課題と現在進行系

サブタイトルは、『コンタクトセンター運営、最大の焦点 事例に見る「DX」の取り組みと成果』です。

こちらのセッションのモデレータは、コールセンターのコンサルティング業務を行い、多くのセッションでも登壇されているCXMコンサルティング代表取締役社長の秋山紀郎さん。この業界では知らないひとがいないくらいの有名人ですが、逆にこのセミナーでは知り合いが多すぎて緊張すると仰ってました。
パネリストは、スカパーカスタマーリレーションズ(SPCC)代表取締役社長の新巻康彦さんと、あいおいニッセイ同和損害保険の取締役常務執行役員の旭正道さんという、ともに数百から数千席規模のコールセンターを抱える企業のトップを迎えてのセッションとなりました。

SPCCの取り組み

今でこそ、最新のコールセンターを構築・運用されているSPCCさんですが、2010年まではその多くをアウトソーシングしていたとのこと。その時の不便さ、不効率さから脱却するべく業務構造改革を行い、2016年からはDXを推進させて基盤システムの大幅刷新を行いました。
背景には、衛星放送やネット放送など、本業を取り巻く環境が激変してきたこともあるようです。
DX化に伴い、オムニチャネルやAI、クラウドといった先端技術を採用し、現在のコールセンターの仕組みを作りつつ、2019年からはCX向上を目指して、エフォートレスとカスタマーサクセスという2つのキーワードを掲げて、FAQやマイページ、ノンボイスツールやボットを採用しています。

中でも特に注力しているのが、以下のオペレータ向けの機能です。

  • 感情解析活用(感情カルテ)→ 年間300万コールの感情分析を行って満足度を採点する

  • ナレッジPOPUP(音声認識活用)→ 対応中のオペレータをアシストする

  • トークスクリプト(内製)→ トークスクリプト作成ツールを開発

  • その他(動画研修)
    特に3つ目のトークスクリプト作成ツールは、すでにTALKZという商品名で販売もされているとのこと。

スライド内には、システム構成などもあったのですが、多くのベンターとサービスを組み合わせて構築されており、導入はなかなか大変だったのではと感じました。
また、ここまで投資をして構築した仕組みは、単なるコストセンターでは採算が合わないため、ノウハウの外販という新しいサービス価値を提供しているところがとても素晴らしいと感じました。
BPOのみなさんがこれから目指す姿に非常に近いものがあると思います。

あいおいニッセイ同和損害保険の取り組み

同社は、営業系で1,000ブース、損害保険対応で1,000ブースと、全国に2,000ブースを構える大型コールセンターを運営されています。それだけでも驚きですが、更にすごいのが、全国で180万台のテレマティクスデータ(自動車から送られてくる各種データ)を取得・活用していることです。

同社の役割も、従来の「事故の後に役に立つ」から「事故を起こさせない仕組みを作る」にシフトしてきています。中でも前述のテレマティクスに関しては、走行距離・走行時間帯・急発進・急ブレーキ・急ハンドルなどの各種データを取得できるようになっており、過去に取得した走行データを距離で表すとなんと地球379万周に上るそうです。
このテレマティクス技術は、テレマティクス保険としても販売されており、保険加入者の事故発生率はそれ以外と比較して18%も低いそうです。

さらにここで集めたデータは、全国で約500の自治体にも活用されており、たとえば事故の多い交差点など危険箇所の特定、分析、対策、効果検証を行っているそうです。
もちろんこれらのデータはコールセンターでも活用されており、事故受付時にはすでに客観的な各種データが分析できるようになっているため、事故解決までの時間短縮にも役立っているそう。

昨今の若者の自動車離れに対応すべく、本業の保険販売だけでなくデータを分析・販売しながら、住みやすい街づくりを推進していく姿が素晴らしいと感じました。

セミナー全体を通しての所感

30年の歴史をもつコールセンター業界は、目まぐるしく変化するもの、変化しないものが混ざり合っています。
テクノロジーは常に変化しますが、それらは決して簡単に導入できるものではなく、経営に対してどのように寄与できるかを判断しながら導入していくようになりそうです。
そのためのキーワードがカスタマーサクセスであり、より高度化する顧客接点に対して、Win-Winとなる顧客との関係性をどのように構築していくか、まさにこのあたりが当面のトレンドになりそうでした。

素晴らしいセミナーを開催していただいたリックテレコムさん、改めて300号発刊おめでとうございます。そしてありがとうございました。
きっと、次号で今回のセミナーの特集が組まれると思うので、詳しく知りたい方はぜひそちらを御覧ください。
「月刊コールセンタージャパン」の定期購読もぜひおすすめします。


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