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法定通貨と暗号資産は対立するのか。その2

アメリカの司法省と世界最大の暗号資産取引所であるバイナンスの司法取引が成立し、司法省と財務省は勝利宣言、暗号資産界隈は次のフェーズへ移るという雰囲気が漂っていますが、さて、そんな単純なものなのでしょうか。そのことについての続編です。

大国は基軸通貨を狙っている

そもそも、法定通貨は戦費をまかなうために発明された打ち出の小槌システムです。それが、経済規模を拡大し、世界経済の大半を握ることにより、経済規模の大きい国の通貨が基軸通貨として地位を獲得したという流れだと思っています。アメリカドルが基軸通貨だからアメリカは強いと思っている人が結構いると思われますが、実際にはアメリカが経済強国だからアメリカドルが基軸通貨になっている気がします。その昔、基軸通貨はイギリスポンドでしたし、さらにその昔はスペイン帝国が大量に南アメリカから略奪した銀が流通していました。イギリスが第一次世界大戦で経済力を失い、変わってアメリカが世界第一位の経済大国に成り代わるときにドルが世界の基軸通貨になりました。

もちろん使い勝手を良くすることにより基軸通貨に近づくことは可能でしょう。しかし、いろんな国に信用してもらって使ってもらうためには、何より、経済的に安定していることが必須条件となります。なので、法定通貨をデジタル化したところで、根本はその国が経済的に信用するに値するかどうかが判断基準となり、基軸通貨になるわけでは無いと思われます。

アメリカの一部議員はビットコインがアメリカドルに成り代わって基軸通貨になることを恐れているようですが、そもそも、アメリカドルが基軸通貨で居続けるためには経済大国であり続けることが第一だと思われます。ビットコインを認めても、すぐ、ビットコインが世界の基軸通貨になることは無く、それよりも、アメリカがGDP1位から滑り落ちない事の方が大事なのではないでしょうか。

とにもかくにも、アメリカは基軸通貨ドルを持つことにより世界への影響力を保ち続けることが出来るというのは事実なので、基軸通貨ドルを維持することはとても大事なことになっていると思われます。

中国も基軸通貨を狙いたいのだとは思いますが、どうも、中国は自信が無いのか政策が中途半端に思えて仕方がありません。もっとも最終目標はそうなのかもしれませんが、とりあえずは国際通貨としての地位を確立したいのかもしれません。アメリカドルの次に来そうな基軸通貨は今のところ見えてない気がします。

暗号資産と法定通貨の共存

世界をコントロールしたいという誘惑には大国は抵抗できないと思われます。なので、地位を脅かす存在は排除したい気持ちが動くのも仕方ないでしょう。さて、基軸通貨の地位を保ち続ける一番の手立ては経済の繁栄です。従って、法定通貨をデジタル化し、暗号資産を排除するというような動きは役に立たないでしょう。それよりも、暗号資産をうまく使ってさらに経済を繁栄させる方が得策だと思われます。
前に述べたように、独自のネットワークを構築して維持するのは莫大な費用がかかります。さらにはそのネットワークを世界中に普及させることは相当ハードルが高いです。なので、今のオープンな既存の価値移転ネットワークに法定通貨を乗せてしまう方が遙かにコストパフォーマンスが良いと思われます。法定通貨トークンを発行すればいいだけです。ビットコインはトークンの発行は出来ませんので、イーサリアムをまずはターゲットにすることになると思われますが、トークンの発行自体は大した手間ではないので、他のレイヤ1ネットワーク上でも同じように発行すれば良いだけです。そうすればネットワークの維持費もゲートウェイ維持費も必要ありません。
デジタルネットワーク上での法定通貨が基軸通貨になれるかどうかはその国の経済規模と世界での貿易取引でのポジションになると思われますので、今なら米ドルは間違いなくデジタル上でも基軸通貨になるでしょう。
そろそろ、不毛な排除はやめて、法定通貨のデジタル化をさっさと果たし、共存を図っていった方がアメリカにとってプラスになると思われます。

というものの、事実上、ステーブルコインが相当数発行されているので、わざわざアメリカ国家がデジタルドルを発行せずとも民間にステーブルコインを発行させてその監督を行う方が手っ取り早い気はします。それにアメリカ議会がいつ気がつくのでしょうか。日本はいつ気がつくのでしょうか。日本の方が早く気がつきそうですが、行動が遅いのであっという間にアメリカに抜かれちゃいそうな気もしますね。

ビットコインは世界の基軸通貨になるのか

さて、法定通貨と暗号資産の共存がなったとして、ビットコインは世界の基軸通貨になるのでしょうか。それは分かりません。
なるとしても相当時間がかかると思われます。まだまだ価値が安定していませんので、基軸として扱うには不便です。もっともっと価値が上がって天井まで行って、頭打ちになったらそのときにはなるかもしれません。それはおそらく、ビットコインのマイニング終了の2140年頃まで来ないかもしれません。ビットコインを信奉する人たちの中にはアメリカドルではなく、ビットコインが世界の基軸通貨になるんだというようなニュアンスを醸し出す人もいますが、それはすぐではなく、遙か未来の話のような気がしています。当面は基軸通貨はアメリカドルでいい気がします。一方ビットコインは金と同じようなポジションを確立し、ネットワーク上での価値保存手段としてメインストリームになっていけば徐々に存在価値が大きくなるような気がします。
そして、デジタルネットワーク上で法定通貨トークンの基軸争いをやってもらえば良いかと。それはその国の経済力に比例するでしょうから。今すでに、USDTなどのドルベースのステーブルコインは少しずつ基軸になりつつあります。USDTが大丈夫なのかという話はありますが、事実上基準として使われている気がします。そろそろアメリカもUSDTの監視に本腰を入れた方が良さそうな気がします。ドルペッグが外れると大変な事になりそうな気がするので。

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