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2020年3月の記事一覧

割れそうなベスパ

弾け出す音と共に
ウッドベースを弾き捲る
さあいこうぜ不良少年
割れそうなベスパに乗って
ライダースを纏ったらよ
さあやろうぜ不良少年
戻らない過去に手を振って
未来が見えやしなくても

スピンネイル

回転し続けた夜を
走り抜けるRZ350
千切れた夢は探せないと
嘆く知らない老人を
横目で眺め街を目指す
綺麗に磨いた爪が
集まるキャバレーの中で
知らない自分を探す
何も無かったとしても

至福直観

カテドラルを追放された
聖者達は嘆かない
千年王国に選ばれずとも
信仰を抱き続ける事で
主に祝福されるのだから
幸いの地へ辿り着く迄
彼らは歩み続ける
八月の灼けた砂の様な道を

繰り返すだけ

いつか何処かで
貴方に似た人を
見かけた時
僕は何を思うだろう
命は延々と
巡ると聞いたけど
生まれ変わって
やり直せるのなら
すれ違っても
気付きやしない
人は繰り返すだけ
虚しさも安らぎも
抗えない過ちさえも
繰り返すだけ
そんな気がしたよ

16回

天使が8回鐘を鳴らす頃
悪魔は8回踵を踏み付ける
その不協和音を合図に
神殺しの凶弾が放たれ
創造主は地上へ凭れ掛かった
何かが変わるとするなら
メリーゴーランドのチケットが
安く買える位だろう
世界は何時もの顔をして
誰かの叫びは届かない
冷酷で他人の不幸を好む
人達が今を生き急ぐ
狂った風に急かされて

当たり前過ぎて

何が悲しみかすら
分からない僕を
笑うブギーポップ
幸せの檻に終われた
死刑囚は楽しくて
狂う事すら叶わない
生きるのが余りにも
当たり前過ぎてさ

偽物の痛み達

本当の愛を口にする
詐欺師はその手を開かない
弱い人で作られた
この国が病み続けても
偽物の痛み達は声を上げ
しがない夜に主張した
決して届かないと気付かず
太陽にその身を焼かれ
一握の灰へ形を変えたよ

ルシアン

銀行強盗をして
追われる恋人の様な
生き方は出来ないね
しけた映画を眺めて
紙コップのコーラを
飲もうよルシアン
出来るだけ裏の顔を
君に悟られたくない
老いさらばえる日まで
何時か僕の仮面が
外れたならばルシアン
何も言わずにそっと
安い胸を貫いてくれ
冷たい言葉のナイフで

ディープダイブ

笹船に揺られて
僕は異国へ向かう
父と母が眠る故郷が
白い灰に埋もれても
戻る事は叶わない
生きている限り
見えない糸に操られ
毒の河へ深く沈む
心まで狩り尽くされて

偽典

厚い本を手束む老人
信仰する者に受けた
裏切りから学べず
なけなしの金貨を捧げ
今日も打ちのめされる
名も無き嘴にその身体を
貫かれ動けなくなる迄
偽典を手放す事すら叶わず

SSカウボーイ

寂れたトラクターの様な瞳で
俺を見る異邦人を横目に
今日も敵より早く銃を抜く
そうすれば明日が訪れて
また昨日と同じく銃を撃つ
何光年繰り返そうが
理は変わりやしないと
気付かないで死んで逝く
人は時に醜くだから美しい
たゆやかな風に踵を押され
カウボーイは歩き出す
鳥篭の外へ飛び出す為に

怪異

例えば遠い夜空に
虚しく残されても
私は生きてしまう
人波に紛れ去って
例えば近い未来に
意志が奪われても
私は歩んで逝く
怪異に姿を変えて

楽園に咲く鉄の花

異国の空が赤く
染まる頃にさマザー
兵士でしかない僕は
沢山の人を殺すのさ
倒れた仲間達を背に
焼け落ちた道徳が
僕の命を焚き付ける
周りを見渡せば其処は
鉄の花が咲く楽園の様で
もう人には戻れないと
やっと分かったよマザー
だからさよならを告げよう
二度と会えやしないから

ブラフマー

想像と欠落の中で
もがくのが人ならば
時に君もそうするべきだ
世界を生んだと言うならば
始まりと終わりの監獄に
閉じ籠るのを止めた時
君は神に為るだろう
型枠だけが語り継がれる
でも如何か悲しまないで
私が君を忘れないから