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2019年8月の記事一覧

オべーション

偽物のオべーションを
かき鳴らすパンクス
ノイズを拾うピエゾが
安いアンプを震わせる
命の替えを見つけたら
今直ぐにでも死ねば良い
ラブソングばかり書く
馬鹿に為る位なら
そんな歌を叫びまくって
夜の帳は下りてゆく

沈黙

言いたい事を押し殺し
黙って耐えれば巧く行く
きっとその筈さ
貴方の様に為りたくない
だから今日も
仮面を被り直して
人波に沈んでいくのさ
誰にも気づかれない様に

サガ

どれだけ声を上げても
届かないこの世界で
人は人にしか為れないと
分かっては居るけど
時に全てを壊したくなる
圧倒的な力の前で
ひれ伏すしかない現実が
僕を狂わせるのなら
其れもまたサガなんだろう
どうしようも無い程に

コーラス

楽園の果てに閉じ込められた
天使達はサッドソングを歌う
皆で声を震わせながら
落ちて逝く者こそ美しい
そう話す悪魔は笛を吹き
純白の天使を箱庭へ誘う
不協和音の嵐の中で
悪魔と天使は一つに戻り
何者でもない何かへと
変貌して空を纏った
天と地を覆い隠す為に

ヨウラン

退屈な映画のエンドロールを
虚ろに眺めている引き籠り
揺籃の宇宙から抜け出せず
何時の間にか老いてしまった
借りた命を返す時が来て
しがみ付こうともがこうが
さらばえた躯に力は入らず
容赦無く引き剥がされる
誰もがニ度と帰れない
天使にさえ為れた日々には

メープルシロップ

何処からか仕入れた
秘密を貴方は話す
触れてはいけない事に
気付かない貴方を
僕は哀れだと思い
パンケーキを焼いた
メープルシロップに浸し
貴方は喜んで居る
明日が来ない現実を
考える事も出来ないで

夢と毒

さらさらと貴方は
夢を語るけど
それが毒に為ると
貴方は気付かずに
今日も絵描き続ける
破れて燃え尽きるまで

八月のシンデレラ

西瓜の鉄馬に乗って
異国の貴方を迎えに行こう
大丈夫さ硝子の靴も魔法も
消えたりはしないから
無事に辿り着いたならば
冷やした西瓜を共に食べよう
きつめに塩を振って
過ぎ去る夏に手を振りながらさ

スクラップ・ヘブン

有り余る富を抱いて
天国へ向かう道化
神の国は特別な通貨しか
使えないとは知らずに
全てを従わす心算で
審判の門へと向かった
富が有り余るならば
それは価値を持たないと
気付けない儘に彼は
地獄へ落ちてしまうだろう
煉獄の炎に包まれて

ハンドベル

彼女はハンドベルを鳴らす
とても楽しそうな表情で
僕の事も自分の名前も忘れ
何時も見えない何かを眺めてる
それは僕には延々と続く
生まれ落ちた罪の様で
時に彼女から目を伏せる
余りにも辛くて仕方ないから
彼女はハンドベルを鳴らす
月で遊ぶ兎に届くその日まで

ピアノ

月灯りを頼りに
悪魔はピアノを弾く
天使だった頃を
思い出そうとして
夢幻を生きる者は
過去を失くし続ける
それは罪か代償か
永遠に出ない答えを胸に
小夜曲は夜へ消えた

鉄槌

愚かな者は札束を巡り
弱き者は生贄を探す
同じ色だとは気付けずに
作られた命を削る
意思無き鉄槌が下され
その全てを打ち砕かれても
狂乱に舞う宴は続く

対価をくれてやる

演出した幸せを
見せ付けるのには
札束と宝石に
剥がれない笑顔が必要だ
皆に眺めて貰えば
きっと同情してくれるぜ
誰もが他人の不幸を
待ち切れずに奪い合う
そうだろうオッペンハイマー
等価を望むなら
対価をくれてやる
さあその手を伸ばせ
世界を破壊する為に

DT200R

単管パイプで作ったマフラーが
けたたましい不協和音を奏でて
DT200Rで駆け抜けた仄かな夜
公道を支配する事は出来ても
使役される事に変わりは無い
匿名で居られる時は過ぎて
その躯を聴衆に晒される刹那
何を思い出すのだろうか
ときめく事を忘れたこの国で