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上京と、一人暮らしと、現実と-第1話「探せば必ずあるもんだ」

 4月、進学や就職のために地方から若者が東京に集う。

 中には初めて実家を出て、一人暮らしを始めることで、期待と不安が折り混じる。

 今日は、そんな上京によって、一人暮らしをすることになる若者に、東京の家探しについて、理想と現実を事例を挙げて伝えていこう。

第1話 一ノ瀬裕子の場合

 一ノ瀬裕子は、メディア系の専門学校を出て、春から「六本木」にあるIT系の会社に勤めることとなった。給料は手取り18万弱。地元の宮崎県にいた頃から、都会への憧れは強く、「恵比寿」に住んで、お洒落に暮らしたいと友人たちに話していた。彼女が出した希望の条件は以下の通り。

・家賃6万円代
・駅から近い
・築浅
・バス、トイレ別
・屋内洗濯機置き場
・オートロック
・部屋は広くなくて良い
・2階以上

 ・・・

 無理だ。

 恵比寿、そこは女性に人気のエリア。

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 山手線の南西側に位置し、都内主要箇所へのアクセスは抜群。更には治安も良く、繁華街にはお洒落なカフェや飲食店も立ち並ぶ。「恵比寿ガーデンプレイス」は都内有数の複合商業施設であり、その外観は異国を思わせる。夜には居酒屋やバーなどに繰り出す男女で賑わい、別の顔を覗かせる。

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 …1Kの家賃相場は12-14万円。
とてもじゃないが、手取り18万弱の理想女が住める場所ではない。地元と間違えてんじゃないのか。

 でも、探せば必ずあるものだ。理想は追い求めてこそ価値がある。

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 ・恵比寿駅徒歩5分
 ・家賃6万5千円
 ・1K
 ・屋内洗濯機置き場
 ・築40年
 ・ユニットバス
 ・南向き

 お気づきだろうが、完全には彼女の希望通りでない。具体的には、
「バストイレ別」
「築浅」
「オートロック」
以上の3つを諦めた。

 それもそのはず、この3つが「同一の駅で賃料差を生じさせる主要因」だからだ。
逆に言えば、この3つにさえこだわらなければ、月収によるとはいえ、理想の駅周辺に住むことは可能だ。
 そしてどうしてもこの3つを外せないのであれば、駅を変えるか、賃料を上げるしかない。

 では駅近はどうか
 最寄り駅への近さは、実は上記3点の主要因ほど、賃料への影響力は持たない。
 何故なら、東京の過密路線では、ある駅から遠いことにより別の駅に近づくことがあり、それにより"2駅or2路線以上利用可能"という新たな付加価値が生まれるからだ。

 お洒落な街に住みたい理由なんて、結局のところ

「どこ住んでるの?」
「恵比寿〜」
「えっ、すっごーい!おっしゃれ〜!」
「そうかなぁ」

このやりとりがしたいだけだ。

諦めて家賃をあげるか、駅を変えるかした方が住居に対する精神的ストレスが掛からなくて、良い。

そんな彼女には「水天宮前」をおすすめしたい。

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茅場町駅か人形町駅を利用し、日比谷線で六本木まで一本。日本橋・銀座にほど近く恵比寿よりは少し大人な雰囲気の店が立ち並ぶ。
水天宮前駅は半蔵門線の駅で、家賃はそれほど安くはない。

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ユニットバスで、記載はないが屋内洗濯機置き場、オートロック、駅徒歩6分で、なんと家賃は6万7千円。

大体「新宿に住んでいる」というやつも本当は新大久保住みだったり、「池袋に住んでいる」というやつも千川住みだったりするわけで。
どこに住んでるの?と聞かれたら、「日本橋に住んでる」と言えば鼻高々なのではないだろうか。

——これで満足してもらえるだろう。


 結婚し子供が出来ると、余程収入が高くない限り、都内の人気のエリアに住むことは不可能だ。
 独身のうちにしか住めないのであれば、妥協しながらも、理想の街に住むことを、私は応援したい。


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