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2021年最後の日を迎える前に。

今年の紅白歌合戦に日本クラウンから出場する2組の歌手。7年連続の三山ひろしと4年連続の純烈。この2組にはとても多くの共通点があるんだけど、今回は『マネージャー』という、この1点について書いてみる。
共にアーティスト担当として紅白初出場に至るまでをすぐそばで見させてもらった上での話なので、俯瞰で見ることができていないと思うから、偏った考えかもしれないけど。

ファンの人たちはもちろん、業界内でも応援をしてくれる方々が多いと思われる2組だけど(私が勝手に思っているだけかもしれないけど、ありがたいなぁと思うことがたくさんあったので)そんな中でも1番のファンであり1番の応援者がマネージャーです。
2組ともマネージャーがゴリゴリのガチガチの本気中の本気で必死で頑張った。それはそれはもう、とても熱かった。三山のマネージャーは、静かに熱く、純烈のマネージャーは、わかりやすく熱く、だったけど。疲れているだろうに…休みたいだろうに…、自分の身体にも鞭を打って必死で走り抜けたと思う。そりゃ人間だもの、楽したいとか怠けたいという気持ちが全くなかったとは思わないけど、そんな気持ちを表現しなかったし、外部に悟られるようなこともなかったと思う。
私利私欲ではなく、本心から、歌手のためにという想いをずっと持ち続けて、妥協することなく今と未来を見据えた上でその歌手のことを最優先に考え、時には厳しくも愛情を持って仕事に取り組んできた姿を、一過性のものではなく継続して目にしてきた。口先や見せかけではなく、本気で想っているんだというのがビンビン伝わってきた。
2組とも共通して、自ら発掘したわけでもないし、デビューの頃からのマネージャーではないけど、世間的にはもちろん、まだまだ芸能界の中でも無名な段階からマネージャーになり、少しずつ歌手が大きくなっていく過程で絶対に欠かせない存在になっていた。
理不尽なことや辛いこともたくさんあったでしょう。悔しくても握りこぶしをぶつける先もなく、ただただ自分の中だけで抑え込んだこともあったでしょう。それでも自分の感情よりも、その歌手のためになるのかどうかという判断基準で日々を過ごしていたと思う。時には歌手への防波堤となって庇い、時には鬼軍曹として言いにくいことも伝えてきた。この歌手のために!というそんな姿を日々見ていたから、我々スタッフも、応援したい!という想いが日に日に強くなっていったし、その輪がどんどん拡がっていったと思う。
給料をもらっているので、仕事として頑張るのは当たり前、と思うこともあるかもしれないけど(まぁどの業種にも楽したり怠けたりする人はいるもんでしょうし)明らかに業務の域を超えて、肉体的・精神的に厳しい事象にも、その先を考えて、逃げずに真正面からぶつかってきたんだろうなぁと思う。

さぁ、本題に入りますよ。

マネージャーがそこまで本気になったのは、歌手自身に覚悟があって必死だったからです。
そして歌手以前に、心の底から応援したい・この人のために!と思える人間だったからです。

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我々スタッフというのは所詮裏方で、表の人を引き上げたり引っ張ったりすることはできない仕事だと思っている。彼らのやりたいことや叶えたい夢を実現するためのお手伝いなのです。その夢を具体的に描いて共有してくれるからこそ、そのお手伝いはやりやすく、苦しみも喜びも共有できたと思う。あ、そうだ。2組とも紅白に出たかった理由は、自分たちではない誰かのためでしたねぇ。あくまでスタッフは、後ろから背中を押し、時には一緒に並走しながら背中を押すことしかできない。この業界にはたまに、〇〇は俺が売ったんだ、という自慢話をするおじさんがいるけど、今の時代は、前を走って引っ張っていく構図では成り立たないと思っている。少なくともこの2組は前を向いて1番前を走っていたし。


歌手本人たちが、強い意志を持って「恩返ししたい」という想いを抱えて活動してきたのも間違いない。そしてそれは、自分勝手なものではなかったし、個人的な欲求を満たすためでもなく、応援してくれるファンの皆さんも含めた、関わる人達みんなが幸せになるように立ち振る舞ってきたと思う。少なくとも私にはそう見えていましたよ。
もちろん、事務所やその組織の環境によって左右されることもたくさんあるから一概には言えないけど、周りのスタッフの仕事ぶりが、やらされるでもなく、やらなきゃいけないから業務としてやるでもなく、やりたいと思ってやるのは、それ相応の理由があるからです。過重労働が問題となっている昨今の中で、1週間・1日の中で1分でも長く仕事をするということ自体を奨励しているわけではなく、どれだけの想いを持って仕事ができるか、という論点で考えると、同じ1時間を過ごすにも、日々の積み重ねで1年も経てば大きな差が出てくるのは間違いないし。

あくまで主役は歌手です。その主役が周りの人間をやる気にさせるのには、何も考えずに元々持っている人間性でそうさせられる人もいるだろうし、人心掌握術を学んで接し方や伝える言葉のチョイスや表情を考えるという手法もあるし、力量の差がある関係ならば、名投手が名捕手を育て、名捕手が名投手を育てるという関係になって然るべきだし。そんな考えがあれば、そこに相手への思いやりを持って接していれば、あたりが強くても柔らかくても、巡り巡って自分のためになることを知っていると思うし。「情けは人の為ならず」みたいなもんですよ。本意は巡り巡って自分に返ってくると思うんだよね。
スタッフは自分のためだけに身を粉にして尽くして頑張るのが当たり前と考えている場合や、自分だけの力で今の立ち位置にいると思っている人は、考えることの主語が常に己のみだから、周りを思い遣った上での言動にたどり着かない。そして、自分のポテンシャルを過大評価して、困難から逃げたい自分を肯定してくれる人の話しだけを本質として受けとめて、うまくいかないことを誰かのせいにしがち。自分のことを自分以上に深く考えてくれる他人がいるわけないのに。そして知らず知らずのうちに自分に都合のいい言い訳を後付けで考えたりしちゃうんだよね。はい、これは書きながら自分にも言い聞かせてます。

これはね、周りに甘く、とか、言いたいことも我慢して、ということではなく、どんな内容をどのように伝えるのが、対象者がよりよい動きになるのか、を想定した時に、例えば…「おい、それ取ってくれ」と伝えるのと「すまん、それ取ってくれないかな」と伝えるのでは、同じ行動を求めているのに受け取る側の感情が変わってくるでしょ。その積み重ねですよ。
ん~。また何か少し話が逸れてきた感あるし、自分ができているかと言われるとそうでもないのだが…。
はい、あくまで自分の目で見てきた直近2組の紅白歌手のマネージャーのことなので、全ての歌手に当てはまるとは思っていないけど、少なくとも目標を紅白に定めて結果を出した身近なこの2組は、歌手とマネージャーで1人の歌手、みたいな、お互いがお互いを尊重して感謝し合う関係だったし、どちらも独りよがりな状況はなかったように見受けられる。そして私は、今年も大晦日に2組5人があの大きな舞台に立てることが心から嬉しく思えるのです。彼らの喜びを心から喜べるのです。それは、彼らがそう思わせてくれる人間だからです。そこは歌がうまいとかどうとか、関係ない。ちなみに、そんなに近くで見ていたわけではないけど、こちらから見えている限り、純烈より1年早く紅白に出場した丘みどりさんのとこのNマネの覚悟や必死さは相当なもんだったし、頭も心も身体もフル回転させて頑張る姿は鬼気迫るものがあった。そして丘ちゃん本人の覚悟も継続した努力も、生半可なものではなくて間違いなく本物だったはず。じゃなきゃ、着物を着るようになってからあんなに短期間であんなにパフォーマンス能力が上がるはずがないし。

取り組む姿勢なのか言動なのか人間性なのか、はたまたそんなもの全てを凌駕するぐらいの飛びぬけた才能なのか。いずれにしても、マネージャーを筆頭に周りを本気にさせる歌手が、最終的にファンの皆さんを含めた周りを幸せにしてくれると思っていますよ、私は。

チーム一丸の一丸。その一つの丸の中心には歌手がいて、円を形成する本気の関係者やファンの数が多ければ多いほど角が緩やかになって、三角や四角より円に近付けば近づくほどスムーズに転がりやすく止まりにくい形になるというね。その円の中心はスタッフではなく、歌手でしかあり得ないと思っています。そんな魅力的な歌手に携われていることは、本当に幸せです

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ま、そんなわけで今年も残すところあと数日。1年を締めくくるに相応しい、というかこれ以上ない最高の舞台をぜひ目に焼き付けましょう!