見出し画像

社会的インパクト投資レポートvol.11:「南部メキシコマイクロファイナンス支援ファンド」シリーズ

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは、当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて、定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

今回は本編11弾として、2021年8月27日より販売を開始しております「南部メキシコマイクロファイナンス支援ファンド」シリーズ(※2)についてお伝えいたします。本ファンドシリーズの実質的な貸付先であるAvanza Sólido, S.A. DE C.V. SOFOM E.N.R.(以下「Avanza社」)は、メキシコ合衆国(以下「メキシコ」)南部の州でマイクロファイナンス(※3)事業を営んでおります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら( https://crowdcredit.jp/about/social-investment )もあわせてご参照ください。

※2 本ファンドシリーズ販売開始にあたってのプレスリリースはこちら
https://crowdcredit.jp/info/detail/info-1589/ )をご覧ください。また、現在募集中のファンドについ( https://platform.crowdcredit.jp/fund/ )をご確認ください。

※3 マイクロファイナンスとは、主に発展途上国の貧困者向けに小口の融資や保険などを提供することで、彼らの経済的自立を支援するサービスのことです。以下もあわせてご参照ください。

1. 「南部メキシコマイクロファイナンス支援ファンド」シリーズの社会的インパクトの概要

近年の社会的リターンに関する世界的な取り組みとして、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」があります。SDGsでは、持続可能な世界を実現するために17の分野で目標を定めています。

画像1

本ファンドシリーズは、メキシコ南部で個人事業主を対象にマイクロファイナンス事業を展開するAvanza社を実質的な貸付先(海外資金需要者)とするものであり、17の目標のうち「1. 貧困をなくそう」を目指しています。

画像2

以下では、本ファンドシリーズがどのようにこれらの目標の達成に貢献しているかについてご説明いたします。

2. メキシコにおける貧富の差

本ファンドシリーズの実質的な貸付先(海外資金需要者)であるAvanza社は、メキシコ南部のチアパス州、ユカタン州、ベラクルス州などでマイクロファイナンス事業を展開する金融事業者です。メキシコと聞くと、タコスやテキーラ、サッカーなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。日本との結び付きという観点からは、多くの日系自動車メーカーが工場を建設している国というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

メキシコはアメリカ合衆国の南に位置し、日本と同程度の約1億3,000万人の人口を有する国です。米国に近いという地理的優位性や豊富な労働力を背景に輸出産業が発展し、中南米諸国のなかではブラジルに次ぐ経済規模を誇る経済大国でもあります。しかしながら、経済発展の一方で貧富の差は依然として残っており、貧困の削減はメキシコ政府の長年の課題の一つでもあります。月収が日本円にして約1万2,000円を割り込む(地方部の場合、以下同)貧困層の割合は、経済成長が続くなかでも40%を超えています。月収が約7,000円を割り込む極貧層の割合も、新型コロナウイルス感染症が拡大するなかで上昇し2020年は国民全体の8.5%となりました。

画像3

3.  Avanza社の事業内容と社会的インパクト

メキシコにおける貧困問題は、特に南部の地域でより深刻だといわれています。Avanza社は、こうした貧困層への金融サービス提供や生活水準向上を目指して、2011年にメキシコ南部のチアパス州で設立された金融事業者です。

(1)  Avanza社の事業内容

メキシコ南部のチアパス州には不安定な収入を理由に伝統的な銀行から融資を受けられない方が多くいますが、ここに目を付けたのがAvanza社です。「金融サービスを通じて個人事業主の経済的自立を支援し、地域コミュニティの持続可能性につなげる」とのミッションを掲げ、多数の個人や個人事業主に対して小口の融資を行う金融サービスを提供してきました。

Avanza社の顧客のなかには高い貸し倒れリスクを抱える方もいますが、複数の顧客を一つのグループまとめ、それぞれに連帯保証を負ってもらうというグループ融資の手法でリスクの低減を図っています。このビジネスモデルが奏功し、2011年の創業以来Avanza社は順調に事業を拡大してきました。徐々に拠点も増え、2021年時点ではチアパス州の他にタバスコ州、ユカタン州、ベラクルス州、ケレタロ州、イダルゴ州にも支店を構えています。

画像4

(2)  Avanza社のもたらす社会的インパクト

Avanza社はこれまで順調に事業を拡大し、安定的に収益を計上するステージに移行しつつありますが、収益確保と同時に社会的インパクトにも重きを置いてきました。Avanza社の社会的インパクトの実績を、いくつかの数値をピックアップしてご紹介いたします。

① 累計4万件超の融資を実行

金融サービスへのアクセスが限られる顧客層をターゲットとするAvanza社は、事業そのものが金融包摂という社会的インパクトの側面を有します。2011年の設立から2020年末時点まで、累計で4万件を超える融資を実行し、個人事業主の収入拡大や生活基盤の安定に寄与してきました。

② 2020年の一年間で6,235人が職業訓練プログラムに参加

Avanza社は顧客獲得活動の一環として、潜在顧客に職業訓練プログラムを提供しています。事業を始めたばかりの個人事業主に対して、効果的な仕入れの手法、コスト管理のノウハウ、ネット広告の活用方法などをトレーニングするとともに、ビジネスマッチングの機会も提供しています。

2020年は、新型コロナ禍の最中で、オンラインツールも活用しながら6,235人の個人事業主に職業訓練プログラムを提供しました。これらを受ける方々の事業拡大および収入確保を支援するとともに、一部の事業主は実際にAvanza社から融資を受けて収益拡大につなげています。

画像5

③ 14,081人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策イベントに参加

こちらも新規顧客の獲得や既存顧客の維持が直接的な目的ではありますが、Avanza社はメキシコが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を受けるなかで、健康相談サービスの提供や感染防止キットの配布などにも取り組みました。

2020年通年で、計14,081人の潜在顧客や既存顧客がAvanza社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連サービスを受けています。社会的インパクトの実現を目指す企業として、安定的な収益確保を大前提としつつ、地域社会に根差した活動にも注力していることが窺えます。

画像6

4.  Avanza社の社会的インパクトの実例

それでは、具体的にAvanza社がどのように社会的インパクトを残してきたか、実例を見ていきましょう。

(1)  Doña Ireneさんのケース

一つ目は、チアパス州のスチアパ地区に在住のDoña Ireneさんのケースです。

Ireneさんには幼い息子さんがいますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて学校が閉鎖になる時期が続いたことをきっかけに、息子さんの面倒を見ながら自宅で食料品や日用品を販売することを決意します。個人ビジネスの経験や初期投資の資金が限られていたことから、Ireneさんは収益の確保に苦戦していましたが、そのような折にAvanza社の職業訓練プログラムに出会いました。

Ireneさんは商品仕入れの方法や資金管理のノウハウを吸収するとともに、Avanza社から初回融資として日本円にして約6万円の借入を受けました。これはDoñaさんにとって初めての金融機関からの借入です。この資金を元に陳列商品のラインナップを拡充させ、徐々に日々の売上額を拡大させていきました。Avanza社への返済も滞りなく行ったことから、Avanza社は徐々に融資額を増加させ、この資金をさらなる事業拡大につなげるという好循環が生まれました。現在はAvanza社から日本円にして20万円を超える金額の借入を受けています。

Avanza社は、金融サービスへのアクセスがなかったIreneさんに少額の融資から始め、融資に対する利息収入を得るだけでなく、Ireneさんの事業拡大および家族の収入確保という社会的インパクトももたらしました。

画像7

(2)  Doña Ricardaさんのケース

もう一つの事例は、同じチアパス州のコポヤ地区に在住のDoña Ricardaさんのケースです。

Ricardaさんはコポヤ地区に姉妹で住んでおり、昔から姉妹ともども料理が得意でした。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて失業してしまいましたが、料理の技術を活かして配達サービスを始めました。そのようななか、Avanza社の金融教育プログラムに参加し、料理の技術が収入拡大につながる可能性を見出して姉妹でレストランをオープンすることを決意します。

Avanza社からは日本円にして約6万円の借入金を姉妹それぞれで受け、チアパス州の伝統料理を提供するレストランを大通り沿いにオープンしました。これまで順調に顧客数を伸ばしており、レストランの売り上げをもってAvanza社への返済も実行しています。こちらの事例も、Avanza社の少額融資が顧客の事業拡大および生活水準維持という社会的インパクトにつながったものと言えます。

画像8

5. 結び

ここまでで、「南部メキシコマイクロファイナンス支援ファンド」シリーズの実質的な貸付先(海外資金需要者)の事業を通じた社会的インパクトについてご説明しました。当社では、引き続き本ファンドシリーズを通じて、Avanza社およびAvanza社の顧客である個人事業主の活動を支援してまいります。投資家の皆様におかれましては、変わらぬご愛顧のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。
クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 加入

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?