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社会的インパクト投資レポートvol.5:「キルギスマイクロファイナンス事業者支援ファンド」シリーズ

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。
※ 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら(https://crowdcredit.jp/about/social-investment)もあわせてご参照ください。

今回社会的インパクト投資レポートの第5弾としてお伝えするのは、キルギス共和国の農村と地方都市において、住民の生活の質の向上に繋がる金融ソリューションを提供することを目指す「キルギスマイクロファイナンス事業者支援ファンド」シリーズです。

なお、マイクロファイナンスとは、主に発展途上国の貧困者向けに小口の融資や保険などを提供することで、彼らの経済的自立を支援するサービスのことです。以下もあわせてご参照ください。

キルギス共和国政府がマイクロファイナンスに期待する役割

中央アジアの山間の国であるキルギス共和国は、19歳未満の人口が38.5%を占めており、ユニセフによる世界各国の人口集団の中で若者が最も重要なシェアを持つ20大国の一つとなっています。IMFの発表による失業率は6.8%(2019年10月)ですが、失業者の大多数は、18歳から30歳までとなっています。こうした若年層が起業するための少額融資にあたって、マイクロファイナンス機関の果たす役割は非常に大きいと考えられます。

以下、キルギス共和国の中央銀行であるキルギス国立銀行が発表する統計データに基づいて、キルギス共和国におけるマイクロファイナンスの役割についてお伝えしていきます。なお、統計データ(https://www.nbkr.kg/contout.jsp?item=3206&lang=ENG&material=84608)の更新頻度の都合により2016年時点のものが中心となります。

2012年にキルギス国立銀行は、金融インフラの整備強化、金融アクセスを拡大し、民間銀行間の競争を強化しつつ、金融サービスの拡大および利用者保護を図るといった広範な目標を含む大規模な改革の実施を打ち出しました。

2013年1月の第11号大統領令において、マイクロファイナンス業界の担う役割を「質の高い金融サービスへのアクセスの向上と低所得層への金融サービスをもたらす金融システム」と規定しています。その後、2015年に消費者権利保護部門と金融リテラシー部門が設立されました。

その後もさらに具体的な施策が続くこととなりますが、2017年8月の立法府令1836-VI号では「新時代のための40のステップ」としてクレジット市場の発展、金融サービスの利用者の可能性、金融リテラシーの向上、責任ある融資の向上が掲げられました。このプログラムでは、民間のローンにおける金利の更なる引き下げや、フィンテックの導入、銀行サービスの対象となる人口の増加、信用組合の発展、イスラム金融における原則までが示されました。

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キルギス共和国のノンバンクセクターの動向

キルギス共和国のノンバンクセクターは、主にマイクロファイナンス機関、信用組合、およびノンバンクに運転資金を提供する公共株式会社(OJSC)で構成されています。銀行システムが有する資産およびローンの合計額に対するノンバンクセクターの資産およびローンの割合は、2016年末時点でそれぞれ7.3%、10.2%です。

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まず、信用組合は2005年から年を経るごとに、その数が大きく減少していったことがわかります。一方、マイクロファイナンス機関については、2005年から2010年までに3倍近い数となりましたが、それ以降は大幅な減少に転じており、2016年末時点で162社となりました。

この増減の背景としては、まず2005年以降は信用組合の統廃合とマイクロファイナンス機関への組織転換が加速したことが挙げられます。その後、マイクロファイナンス機関に対する資本要請の厳格化が段階的に導入され、収益性の高い活動を実施するのに十分な資本がないマイクロファイナンス機関については統廃合が促されたことで、結果として機関の数が減少しました。これは、キルギスのマイクロファイナンス機関であった「Bai Tushum and Partners」、「FG Companion」、「FINCA Micro Credit」の大手3社が組織再編を行い、銀行ライセンスに切り替わったことも大きく影響しています。

借り手の推移としては、2005年から2016年までにマイクロファイナンス機関の借り手は52.1千人から218.6千人に増加した一方、信用組合の利用者は信用組合自体の減少に伴って22.4千人から9.4千人へと減少しました。

このような減少を経て、2016年末時点では8つの小規模の信用組合だけが預金ライセンスを保持しています。これらの信用組合の42%が農村地帯、15%がオシュとビシュケクの都市部、他の信用組合はそれらに隣接する地域をカバーする小さな町で活動しています。なお、信用組合においては支店ネットワーク網の発展には至らず、また貸付は主に農業と貿易に集中しています。

2016年末現在、ノンバンクセクター全体の貸付金融資産の総量に占めるマイクロファイナンス機関からの貸付の割合は91.4%です。残りは信用組合が担っています。また、徐々に信用情報の集約化が進み、適切な与信アプローチが確立されてきたことなどから、1件当たりの平均貸付残高は2010年以降、大幅に拡大しています。

キルギス共和国のマイクロファイナンスが寄与する主なセグメント

2016年末現在、キルギス共和国のGDPに占める中小企業の割合は40.8%であり、起業家の数は463.6万人へと拡大しました。 2016年の新規雇用のうち、65%が中小企業を占めています。マイクロファイナンス機関は農業の分野で特別な役割を果たしており、農村部の雇用に貢献しています。

また、マイクロファイナンスには、男女平等を推進し、女性に経済的機会を創出する効果的なメカニズムとなることが期待されています。キルギス共和国では、女性起業家の数が増加していますが、2002年の30,254人から2015年には87,125人となったことについて、マイクロファイナンス機関は少なからず貢献しているものと考えられています(2016年末現在、キルギス共和国のマイクロファイナンス機関の借り手の約57%が女性)。

以上から、キルギス共和国において、マイクロファイナンスによって経済的および社会的な文脈で最も大きく恩恵を受けるのは、農村部の低所得家庭や起業家、女性であるといえます。

キルギス共和国におけるマイクロファイナンスの今後の課題

キルギス共和国では2013-2017年の国家の持続可能な開発戦略において、実質GDPが年平均成長率7%以上、インフレ率は5-7%、財政赤字をGDPの5%以下とすることでマクロ経済が安定するものとしてきました。この期間の終わりにかけては、対外債務をGDPの約60%にしており、自国通貨のボラティリティとインフレ率の上昇の抑制には一先ず成功したと考えられます。

そのため、キルギス国立銀行は、最終的な借り手に対するローン金利を引き下げ、信用創出を拡大するため、継続的な信用リソースを提供している状況です。キルギス全国統計委員会によって算出されたキルギス共和国全土の貧困レベルは2016年に25.4%と、2015年と比較して6.7%減少したと評価されています。

ただし、貧困層の74%は農村部に居住することも示されており、地域間格差、インフラの欠如、出稼ぎ労働者による海外送金への高度な経済依存は根強く、全体的な貧困レベルは高位のままとなっています。

「キルギスマイクロファイナンス事業者支援ファンド」シリーズにおける社会的インパクト

ここからは「キルギスマイクロファイナンス事業者支援ファンド」シリーズにおける社会的インパクトの定性的なレビューとして、本ファンドシリーズの実質的な貸付先(海外資金需要者)であるMicro-credit Company “Bailyk Finance” Limited Liability Company(以下「Bailyk Finance社」といいます)から提供を受けた顧客事例をご紹介します。

<Bailyk Finance社の顧客事例①>

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Jildiz Tynchtykbekovnaさんは、Bailyk Finance社からの借入によって生活水準の改善に成功しています。

Jildizさんは結婚して14年になり、現在、夫と3人の子どもを育てています。Jildizさんは2008年より子育ての傍ら、両親と一緒に小規模の農業を行ってきました。2013年以降、子育てが落ち着きを見せてからは、政府職員として公共サービス分野での仕事に従事してきました。その後、公務員としての定期的な収入を確保したJildizさんは、これまで取り組んできた小規模の農業を拡大するため、ローンを申請することに決めました。

元々、Jildizさん夫妻には3ヘクタールの土地がありましたが、ローンを申し込んだ時点では、この農場には牛1頭と馬1頭しかいませんでした。しかし、Bailyk Finance社から受け取ったローン資金によって、2頭の農耕馬を購入したことで、本格的なトウモロコシの栽培に着手することができるようになりました。こうして農業から得られた収益で、自宅の修繕を行い、暖房システムを設置することで、事業の拡大だけでなく、生活条件を改善することができました。

<Bailyk Finance社の顧客事例②>

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図書館の司書であるMairamkul Tursunbekovnaさんは、2014年からBailyk Finance社の顧客となっています。彼女の家は長期間、修繕が行われていません。古い木製の窓枠にはヒビが入り、家の中まで常に風が吹き込んでいました。一度は自前の修繕でフィルムを張ってみたものの、大きな効果は得られず、逆に窓の開口部が湿ってしまい、カビが生えてしまいました。これにより、年配の家族は頻繁に病気になってしまいました。

2018年になってMairamkulさんは窓と窓枠を交換することを決意しました。既にBailyk Finance社から少額の借入と返済実績があったことで、Mairamkulさんはこの借入が申請できると考えていました。

Bailyk Finance社の担当者は、国際金融公社(IFC)と協力して作成したガイドラインに則り、ポリカーボネート製の窓をDIYで設置するビデオ資料を提供しました。Mairamkulさんは、この作業を実施するための大工を雇う予算がなかったため、Mairamkulさんの兄に助けを求めました。Mairamkulさんの兄はビデオで示された工程を元に、新しい窓を問題なく設置しました。

このように節約を可能とするビデオのおかげで、Mairamkulさんは出費を抑制し、冬の暖房費も節約することができました。MairamkulさんはBailyk Finance社の単に融資を行うだけではないサービスについて非常に満足しています。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
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