見出し画像

社会的インパクト投資レポート<番外編vol.9>:新興国における教育の普及と貧困削減

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら( https://crowdcredit.jp/about/social-investment  )もあわせてご参照ください。

今回は番外編第9弾です。今回は新興国における教育分野に焦点を当て、教育の普及と貧困削減の関係性をご紹介していきます。

画像1

画像2

教育の経済効果

労働生産性を高めるサービスの側面から教育を捉えると、人的資本に対する投資、つまり、教育投資に行き着きます。以前より教育経済学では、教育投資と経済成長の関係性が研究されています。その結果、教育投資は直接的な経済成長をもたらす効果は見込めないものの、高い経済成長を実現する前提条件となっていることが明らかになっています。

また、教育投資を通じて、学歴による賃金格差が縮減することで、所得分配のバランスが変化し、貧困削減の効果があるとの指摘もあります。日本国内においては、教育投資により個人の収入が増加し、国全体として税収の増加や犯罪対策費の抑制につながることが明らかになっており、公的資金による教育投資の費用対効果についての議論などもなされています。

世界全体の教育の普及状況

まず、世界全体の教育の普及状況を識字率から見ていきます。世界銀行の統計によると、世界全体で15歳以上の男女の識字率はともに上昇傾向にあります。一方で、男女ともに全体の平均と低・中所得者に絞った平均を比較すると、低・中所得者の識字率が一貫して低い結果となっています。このことから、相対的に所得が低い層の方々に対する教育投資のアプローチが、引き続き重要といえるでしょう。

また、世界全体の男女別の識字率では、直近でかなり水準が近づいているものの、女性の識字率が低い結果となっています。国連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)においては、この現状を踏まえて、ジェンダー平等(※2)にも目標設定を置いていると捉えることができます。

※2 ジェンダー平等につきまして、詳しくは以下をご覧ください。

画像3

次に、世界全体の教育の普及状況を、小学校に通えていない人数から見ていきます。同じく世界銀行の統計によると、世界全体の小学校に通えていない人数は男女ともに減少傾向にあります。一方で、低所得者の小学校に通えていない人数は、男女ともに横ばいの推移となっています。やはり、識字率と同様、ここでも相対的に所得が低い層の方々に対する教育投資のアプローチが、引き続き重要という結論が導き出されます。ちなみに、男女比では、直近でほぼ同数の水準に落ち着いています。

画像4

ここまでをまとめると、世界全体の教育の普及率は上昇しています。しかしながら、相対的に低い所得の方々は、相変わらず小学校に通えず、また、識字率が低い状態です。そして、そのことによって、貧困から脱却することができない負のループに陥っています。

新興国の教育の普及状況

ここからは新興国に焦点を当てて、教育の普及状況を見ていきます。なお、ここでいう新興国とは、国際開発協会(IDA)と国際復興開発銀行(IBRD)の貸付対象になっている国を指します。

まずは識字率です。世界銀行の統計によると、新興国全体として識字率は上昇傾向にあります。しかしながら、中東・北アフリカ地域や南アジア地域、サブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)では、相対的に識字率が低い結果となっています。

また、2018年において、他の地域の新興国では男女ともに90%以上の識字率であるのに対し、中東・北アフリカ地域や南アジア地域、サブサハラ・アフリカ地域では男性の識字率が70~85%、女性の識字率が55~70%と、これらの地域は男女でも開きがあります。このように、これらの地域の識字率は、様々な角度で改善していく必要が大いにある状態です。

画像5

次に、小学校に通えていない人数です。新興国全体では減少傾向にあり、識字率同様に改善しています。しかし、サブサハラ地域は近年、むしろ増加傾向です。また、人数ベースで見ていくと、そもそも人口が多いこともあって、サブサハラ地域や南アジア地域での小学校に通えていない人数が相対的に多くなっています。

具体的に見ていくと、2018年において、サブサハラ地域では男性が約1,540万人、女性が約1,940万人、南アジア地域では男女ともに約640万人ずつが、小学校に通えていません。識字率の推移とも地域がほぼ合致していますが、サブサハラ地域や南アジア地域を中心に、教育投資のアプローチが喫緊に必要とされているといえます。

画像6

教育が普及していない新興国の事情とそれを踏まえた解決策

一般的には、教育が普及していない新興国では、教育投資の収益率が高くなります。これに基づくと、教育投資によって効果的に所得を上昇することができるはずです。そうであるにもかかわらず、これまで見てきたように、まだまだ教育の普及が遅れている新興国が少なからず存在しています。

その背景には、貧困によって学費や教材費などの直接的な費用を支払うことができないことに加え、貧困に陥っているが故に子どもも働き手の一人として家計を支えざるを得ない事情があります。また、新興国においては、金融インフラが十分に整っておらず、奨学金などの借入れをするのが難しいというのも大きな要因の一つです。

従来の国際機関等が主導している教育プログラムでは、学校建設などのインフラ整備支援、教材や文房具などの教育補助支援が中心でした。これはこれで十分に意義のあることで、これまでに一定の成果を出しています。しかし、こうした支援は莫大な費用がかかるうえ、たとえば、親が学校で支給される給食をアテにして、労働意欲を減退させてしまうなどの弊害も生じていたのも事実です。

こうした流れを踏まえて現在では、マイクロファイナンス機関(※3)などを通じて、民間資金を活用した教育融資に注目が集まっています。融資という形態を取ることによって、一方的に支援を受けるのではなく、借り手が自立するための一助になるとの考え方に基づいた方策です。

※3 マイクロファイナンスにつきまして、詳しくは以下をご覧ください。

未だ教育が普及していない新興国において、これを普及するために不断の取組みを行うことは必要不可欠です。しかし、一筋縄でいくほど、そう簡単な話ではありません。従来の国際機関などの公的な支援に加え、マイクロファイナンス機関などを通じた民間資金の活用をはじめ、様々なアプローチを試行錯誤しながら重ねていくことが肝要です。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。
クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 加入

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?