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社会的インパクト投資レポート<番外編vol.7>:気候変動問題の本質に迫る

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは、当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて、定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら( https://crowdcredit.jp/about/social-investment  )もあわせてご参照ください。

今回は番外編第7弾です。ここでは直近、世界的に注目を集める気候変動問題の本質につきまして、様々な角度から考察していきます。

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1. 気候変動問題とは何か

2020年1月21日~24日の4日間にわたってスイス・ダボスにて世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が開催されました。テーマは「ステークホルダーがつくる、持続可能で結束した世界」。様々なトピックが取り上げられる中、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)、同年12月に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択されたパリ協定の両方に共通する「気候変動対策」は大きな目玉の一つとなりました。

国連の下部組織にあたる「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2014年に公表した『IPCC第5次評価報告書(AR5)』によると、「気候システムの温暖化には疑う余地はない」、その上で「人間の影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い(95%以上)」とのことです。

世界の平均気温は1880~2012年の過去42年間で0.85℃上昇しました。この気温上昇の半分以上は人間の活動による温室効果ガス濃度の増加等が原因とされています。人間の活動によって増加した主な温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化窒素、フロン類等があり、その大半を化石燃料由来、森林減少や土地利用変化などによるCO2が占めています。

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それではこのまま進むとどのような事態が生じてしまうのでしょうか。想定される最悪のケース、高位参照シナリオ(2100年における温室効果ガス排出量の最大排出量相当の予測に基づいたシナリオ)の場合、世界の平均気温は、1986~2005年の平均値を0.0℃とおくと、2081~2100年に最大4.8℃上昇すると予測されています。

この気温上昇が具体的にどのような影響を与えるか、世界の平均気温の上昇幅に応じて見ていきましょう。

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+1.0℃未満では暑熱や洪水など異常気象による被害の増加が懸念されます。これはもう現実に起こっていることです。+1.0℃以上では、サンゴ礁や北極の海氷などのシステムに高いリスク、またマラリアなど熱帯の感染症の拡大が予想されています。+2.0℃以上になると、作物の生産高が地域的に減少、また利用可能な水の減少が心配されます。

+3.0℃以上では、広範囲にわたって生物の多様性に損失が生じ、また大規模に氷床が消失して海面水位の上昇が懸念されます。そして、+4.0℃以上になると、多様な種の絶滅リスクが高まり、世界の食糧生産が危険に晒されるおそれがあります。

2. 気候変動問題解決に向けた取り組み「パリ協定」

この気候変動、地球温暖化を食い止めるためには、気温上昇の主たる要因の一つである人間の活動による温室効果ガスの排出削減の対策を講じることが必要不可欠です。具体的には、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの普及拡大などが挙げられます。

ここで冒頭でも取り上げた2015年12月に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択されたパリ協定が話に上ります。パリ協定とは、2020年1月に本格実施された、1997年12月に採択された京都議定書に代わる温暖化対策の枠組みのことです。

このパリ協定では、世界共通の長期目標として「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2.0℃未満に抑え、1.5℃未満を目指す。そのために、可能な限り早期に世界の温室効果ガス排出量を頭打ちにし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる」ことが掲げられています。

パリ協定の最大の特徴の一つとして挙げられるのが、「加盟国すべてが自国の温室効果ガス削減目標の作成、提出および維持する義務、当該削減目標を達成するための国内対策をとる義務を負っている」ことです。

ちなみに、日本は「2030年までに2013年比で温室効果ガス排出量を26.0%(2005年比では25.4%、1990年比では18.0%)削減する」としています。このパリ協定における日本の目標は一部で「目標数字が低すぎるのではないか?」との声もあります。しかし、たとえばEUは2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で35.0%削減するとしていますが、2013年比では24.0%の削減に過ぎません。適正な比較をすれば日本の目標は他の加盟国に遜色ないことがわかります。

3.  気候変動問題が内包する「格差と貧困」の問題

自然災害の被害は、「ハザード(Hazard)」、「脆弱性(Vulnerability)」、「暴露(Exposure)」の3つの観点から議論されます。「ハザード(Hazard)」とは自然災害そのもの威力、「脆弱性(Vulnerability)」とは災害にどの程度弱いか(裏を返せばどの程度事前に備えることができているか)、「暴露(Exposure)」とは被害の範囲のことです。

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気候変動により、台風の規模拡大や高潮の頻繁な発生などに見られるようにハザードが強化されるなか、とくに途上国の「脆弱性改善=日頃の備え」は先進国ほどには追いついていません。むしろ人口増や急速な都市化により、脆弱性はそのままで「暴露=被害を受けると予測される人数」は増加している可能性があるといえます。

上記のような背景は、内閣府の「平成27年版 防災白書」にも記載されています。このような事態を根本的に解決するためには、脆弱性を低減させる「強靱性(レジリエンス)」が必要となります。「強靱性(レジリエンス)」とは、被害最小化や被災からの迅速な回復力のことです。そこで国連は、SDGs169のターゲットの中で、随所にこの「強靱性(レジリエンス)」を盛り込んでいます。

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このように、気候変動問題は、「強靱性(レジリエンス)」を軸に見ていくと、貧困や飢餓をはじめ様々な問題と絡み合っています。つまり、気候変動問題の解決に向けて、世界的に歩を進めていくことは、包括的に社会課題を解決することにつながります。これを踏まえて、今後より一層の議論、取組みをしていくことが肝要といえるでしょう。

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