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社会的インパクト投資レポート<教養編vol.2>:フラットな視点で考える「ジェンダー平等」

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら
https://crowdcredit.jp/about/social-investment )もあわせてご参照ください。

今回は教養編第2弾として、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標、※2)の「5. ジェンダー平等を実現しよう」について考えていきます。日本国内において「ジェンダー」というと、どうしても極論に陥りやすい領域と思われがちですが、ここでは可能な限りフラットな視点からお伝えしてまいります。

※2  SDGs(持続可能な開発目標)について詳しくはこちら
https://sdgs.crowdcredit.jp/ )をあわせてご参照ください。

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1. ジェンダーとは~フェミニズムとの違い~

ジェンダーとは、「社会的・文化的につくられる性別」、いわゆる「男らしさ」や「女らしさ」といったもの指します。元々は、「女らしさ」が社会によって形成されているという考えから生まれた概念ですが、現在では「男らしさ」を問う際にも使用されます。また、人類の性自認や性対象の多様さが明らかになり、LGBTQに関連する運動も活発になったことで、より幅広な場面で使用されるようになりました。ここで重要なのは「ジェンダーの問題=男女差別の問題」ではないということです。しかし、歴史上不利なジェンダーが女性に与えられていることが多く、フェミニズム運動の潮流からジェンダーの概念が生まれたため、「ジェンダーの問題=男女差別の問題」として論じられるケースが多くなっているのは事実としてあります。

ここでフェミニズムに目を転じてみます。フェミニズムは、大きく第一波と第二波に分けることができます。第一波フェミニズムとは、女性参政権に関する運動であり、第二波フェミニズムとは現代まで続く性差別撤廃に関する運動です。第二波フェミニズムは、キリスト教の宗派の思想やLGBTQなど幅広い論点を含んでおり、立場によって主張や思想が異なります。基本的にフェミニストは生物学上の女性の権利を主張していますが、その内容は、女性器切除・強姦反対やセクハラ防止、教育・就労・避妊の権利など多くの人が賛同するものから、立場によって主張が分かれる女性の上半身露出の権利まで様々です。とくに新興国においては、女性蔑視、女性器切除・強姦など心身両面にわたる人権上の課題が多く残っています。

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2. 新興国におけるジェンダーに関わる問題の現状

ここでは新興国におけるジェンダーに関わる問題の現状として以下3点を例示します。

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① 児童婚・子どもによる子どもの出産

児童婚とは18歳未満での結婚またはそれに準ずる状態のことです。児童婚はニジェールやチャド、バングラディシュなどのアフリカ、南アジアで多く起こっています。児童婚は減少傾向にあるものの、現在でも毎年1,200万人の少女が児童婚の境遇にあるといわれています。本人が婚姻を望んだ訳ではなく、親が資金を得るためであったり、通過儀礼であったりします。児童婚により出産に耐え切れない子どもが子どもを出産することも珍しくありません。世界銀行の『Economic Impacts of Child Marriage: Global Synthesis Report』によると、子どもによる出産のうち84%が児童婚によるものです。子どもによる子どもの妊娠や出産は母体の損傷や合併症のリスクが高く、生存できたとしても母となった少女は教育を断念しなければならないため貧困に陥ることも多くあります。

② 暴力・性暴力

体格的に弱い女性が、暴力や性暴力の被害者となることが多くあります。世界銀行によると、新興国をはじめ世界全体の35%の女性が被害にあったことがあります。また、女性が被害者となる殺人のうち、38%が親密なパートナーによるものです。一部の国では強姦相手と結婚しなければならない社会慣習があり、女性が自殺してしまうケースもあります。

③女性器切除

女性器切除とは、医療以外の目的で性器の一部を切り取ったり縫い合わせたりすることです。非衛生的な環境で麻酔を用いず行われることもあり、命を落とす危険や苦痛、大量出血が伴うことも多くあります。健康上の利点は何らなく、感染症や後遺症による激痛、失禁による社会生活の困難、自尊心の低下、出産時の死亡率上昇などを引き起こします。女性器切除はアフリカ、中東、アジアで行われており、これまでに2億人以上の女性が対象となっています。

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3. 日本国内におけるジェンダーに関わる問題の現状

日本国内では、2022年4月から女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられ、児童婚の問題は解消する予定です。しかし、ジェンダーに関わる問題を広く捉えた場合、課題はまだ多く残っています。先日、世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2021」によると、残念ながら日本の男女格差はG7で最も著しく、世界156カ国中120位となっています。議員や企業の役員といった重要な立場の大半を男性が占めている一方、女性の半数以上は非正規雇用であり男女間の生涯賃金格差は他国に比べ非常に大きい状態です。また、内閣府の調査によると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延以降、家庭内暴力の相談件数が過去最多となっています。

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4. 「ジェンダー平等」を実現する社会を目指して~イノベーターを応援し、社会を少しずつ変える

「ジェンダー平等」が実現した社会とは、性別を問わずそれぞれが個性を活かせる生きづらさを低減した社会といえるでしょう。こうした生きづらさの低減のための歴史的な動きとしては、被支配者が政治参加の自由と平等を求めた民主主義運動、有色人種による奴隷解放運動、労働者による労働環境の改善を求めた労働運動などがあります。こうした歴史上の流れを振り返ると、「大多数にメリットがあるところ」、「経済的機会があるところ」から少しずつ変わっていくといえます。また、変化を求める人を応援し、賛同する人が増えてこそ流れが変わります。インターネットが発達した現代においては、こうした流れを生み出すイノベーターは起業家が中心の一つになっています。起業家は当然のことながら資金や顧客を求めており、その起業家を支援するための方法としては投資やクラウドファンディング、SNSなどがあります。

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5. 結び

本レポート前半では、とくに新興国を中心としたジェンダーに関わるシビアな現状をお伝えしました。また、後半部分では日本国内においても広くジェンダーに関わる問題を捉えた場合、まだ課題は山積している点を指摘し、「ジェンダー平等」を実現するとはどういうことか、そのために起業家をキーワードにどのように支援する方法があるかについてご紹介しています。最後になりますが、当社では社会的インパクト投資の一環として、「ジェンダー平等」の実現を積極的に推進する事業者への融資を行っております(※3)。当社としましては、一人でも多くの投資家の皆様に「ジェンダー平等」に向けた取組みへ関心をお持ちいただく一助となれれば幸いです。

※3 2021年6月23日現在、当社では主に女性向けのマイクロクレジットを提供するマイクロファイナンス機関を貸付先(海外資金需要者)とする「メキシコ女性起業家支援ファンド」シリーズ、「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズを募集中です。ご関心のある方は、こちら( https://platform.crowdcredit.jp/fund/ )をご覧ください。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。
クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
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