ceoコメント-20200312

【CEOコメント】当社のファンド運営体制につきまして

先日2020年3月11日、当社ではカメルーン・ファンド・シリーズの特定の号について資金回収見込み額の大幅な切り下げを行った旨のご報告をさせていただきました。

https://crowdcredit.jp/img/blog/upload/upload_1583890260.pdf 

該当ファンドをお持ちのお客様には、当初の想定を大幅に下回るパフォーマンスとなる見込みとなってしまい、改めてお詫びを申し上げます。

当事象に関連して、お客様より当社のファンド運営体制自体についてのご質問もいただいており、こちらで当社のファンド運営体制および現在予定している強化施策について審査、期中管理、回収、貸付契約の各点についてご説明をさせていただきます。

《審査》

審査ラインの複線化

当社ではこれまで、デューデリジェンスとよばれる融資候補先企業の財務、経営者、会社の体制を全体的に確認する手続きを踏んだうえで、投資委員会で最終的に融資実行の可否を判断するというプロセスで与信審査を行ってまいりました。

これに加えて現在は、主に米国でリスクの高い債券や債権を運用するにあたって用いられることが多いスコアリング・モデルの新興国版を用いて算出したスコアを、与信の可否の判断および社内格付の付与のサポートとして用いております。

また、今後は融資候補先企業のデューデリジェンスについても、大手格付会社が用いるような観点から各ポイントを評価し、上記のスコアリング・モデルを用いたスコアと同様に、与信の可否の判断や社内格付付与のサポートとして用いるべく、現在担当職員が近日のプロセス導入を目指して導入作業を行っております。

そしてもう1つ、これは導入できるとしてもお時間をいただく可能性が高いと考えておりますが、企業価値の将来推移をシミュレーションして倒産確率や倒産時の回収率を推計するプロセスを導入できる可能性はないか、社内で検討を行っております。

融資候補先企業の経営者・ガバナンス審査強化

上記は融資候補先企業の財務健全性を測るためのものですが、カメルーン・ファンドでは過去にも数多くのお客様にご心配をおかけする事象が起きてしまっており、当社ではどのようにすれば今後このような案件を組成してしまう可能性を大幅に小さくしていけるかの検討と新たなプロセスの導入を続けてまいりました。

すでに導入した強化策として、審査プロセスにおいて、融資候補先企業の経営陣の事業運営能力およびガバナンスのレベルの確認に大きな比重を置くスコアリングを、運用開始しております。

たとえば融資候補先企業の経営陣が「この事業をやったことがある経営者は社内にはいないが壮大な計画だし自分たちの地頭には自信がある」という事業に対する融資申請が入ってきても、そのような融資を行うことはなくなり、ガバナンスについても当社所定の基準を満たしていない場合は、融資は行いません。

なお、ステージの若いベンチャー企業でガバナンスが十分には整っていない場合であっても、その事業内容の社会性が非常に素晴らしいと評価された場合は「社会投資枠」としてファンドをお客様にご提供することがございます。その場合は「高リスク商品」というラベルを分かりやすく表示させていただき、通常のファンドとは異なるものであることを明示させていただいております。

(「高リスク商品」ラベルは、企業自体は頑健でもその企業が事業を行う国のカントリー・リスクが高い場合等も表示されております。)

与信枠管理の厳格化

当社はカメルーン・ファンド・シリーズ(農業事業者に融資を行うファンドを含む)を計12億円強組成しました。

たとえばもし、この金額が10分の1の1.2億円であったなら、お客様のポートフォリオに与える打撃も軽微なもので済んだ可能性がございます。

そのため当社では与信枠管理の厳格化を実施し、融資先企業の財務状況に加えて、当該企業および当該企業が属する当社社内格付企業群の当社の融資ポートフォリオ全体に占める割合等も加味しての運用を行ってまいります。

融資の実行を行った後に与信枠の拡大を行う場合は新規に投資委員会に付議がなされ審議を行うものとし、また期中に当社所定の審査項目に該当した場合は与信枠の縮小を行う運用を既に開始しております。

また近日、1か月あたりの最大融資可能額も導入することで、特に新規に融資を開始した企業について、モニタリングがはじまるまでの時期における与信額をさらに抑えるプロセスを導入することを予定しております。

実績リターンが高い企業群の特定と新規融資への反映

当社が2014年6月に開業してから5年半強がたち、当社自体の融資先企業に関するデータも蓄積が進んでおります。

当社では今後、どのような財務特性等をもつ企業群が実績リターンベースで高いパフォーマンスをだしがちかの分析を進め、初期審査での選別に反映して審査精度の向上を目指してまいります。

《期中管理》

年次および四半期ごとのモニタリング

当社では2020年3月現在、3社(1社はカメルーン・ファンド・シリーズ関連企業、1社は投資活動の終了直前で投資残高は10万円程度、もう1社は当社がファンドのクローズ業務(回収業務)を実施中)を除く、投資残高が1億円を超えている全融資先企業から年次で財務諸表(ただし、うち2社は非監査済みの財務諸表)を、融資の実行後も定期的に受領しております。

またこちらは監査済みではございませんが、原則、四半期決算書も各融資先企業から受領しております。こちらについては、融資金額が1億円に満たない融資先企業については免除している事例があり、また2020年3月現在の当社のモニタリング・プロセス導入前に融資を開始した企業4社について、半期ごとのみの財務モニタリングとなっている企業もございます。

提出をいただいた財務諸表を当社投資管理部が確認を行うほか、審査でも用いている信用スコアリング・モデルを用いたスコアが複数四半期(または半期)連続して下落している場合は担当者が投資管理委員会の四半期レビュー分科会に状況を報告し、委員会が追加の確認を融資先企業に行うかの討議を行います。

エンハンスド・モニタリング(より綿密な融資先企業観察)

当社の融資先企業のうち融資比率が全体の5%を超える企業全社および当社の設定事項に該当した企業については、エンハンスド・モニタリングを実施いたします。

エンハンスド・モニタリング先については投資管理委員会の四半期レビュー分科会が全社の財務状況を確認し、所定のモニタリング事項に加えて次の四半期(3か月間)で行うモニタリング事項を決定しております。

《回収》

国際的ネットワークを持つ弁護士事務所、会計士事務所およびサービサーとのネットワークの強化

実際にはファンド運営上のインシデントが発生した時点で、起きている事象に則して、サポートをいただく現地国の弁護士事務所、会計士事務所やサービサーを選定することも少なくありませんが、少しでもインシデント発生時に迅速に的確な対応をできる可能性を高めるため、当社は、特に2019年以降、弁護士事務所、会計士事務所およびサービサーとのネットワークの強化を図っております。

遅延・デフォルト対応に則した運営体制への転換

細かい点になりますが、融資先企業の返済が遅延したり融資先企業がデフォルトしたりしているファンドにかかる対応を行うチーム内での情報の伝達の正確性の担保、次の24時間にとるアクションの確認をこまめにとるという観点から各会議体、定例の開催頻度を増加し、関連会議を1営業日に平均2回弱行っております(過去1か月間の実績)。

《貸付契約》

融資先企業の義務および違反時のペナルティの明示事項の拡大および会計監査権・業務監査権の強化

これは基本的な事項になりますが、当社でも、以前、海外のP2Pレンディング事業者を通じての債権投資を行うモデルを採用していた時期には、当該事業者の雛形を受け入れて契約を締結することも多く、それが結果的にトラブル時に迅速な対応を事業者に迫る障壁になってしまった事例もみられた反省から、この点を今一度重要視し、案件ごとに融資先企業にどのような義務を負っていただくかを明確にし、また義務違反があった場合のペナルティも個別案件の性質を踏まえて定め、トラブル発生時の迅速な対応を支えるものとすることを図っております。

コベナンツ条項(借り手企業からの誓約条項)の深化

期中管理および回収の項目にもなりますが、当社ではいわゆるコベナンツ条項についても当社の融資セグメントによりふさわしい条項内容についてリサーチを続け、各案件の貸付契約に含む条項の強化を図っております。

コベナンツのモニタリングは信用スコアのモニタリングと同様に四半期ごとに当社投資管理部によって行われており、融資先企業の財務状況等が悪化した際に早期に回収を含む対処を行うための早期検知を目指してまいります。

既存マスター貸付契約書の文言の強化

上記の契約書文言の強化は随時当社所定のマスター貸付契約書雛形の文言として反映され新規の案件に順次適用されておりますが、既存案件についても、特に大口融資先企業について現在文言の変更の依頼を行っております。

すでに、当社より背景としてカメルーン・ファンドで起きている事象についてご説明を差し上げ、いくつかの融資先企業からは文言の変更に同意をいただいております。

《その他》

ファンド運営モニタリング委員会(仮称)の設置

当社では上記の審査・期中管理・回収・貸付契約に関わる点の強化を継続的に行っておりますが、それに加えて、現状のファンド運営の状況や強化の状況、また今後の強化ロードマップがお客様にサービスをご提供していくにあたってふさわしいものかを監視する、社内の内部統制に関わる役職員を中心に構成する委員会またはそれに相当する会議体を近日設置し、牽制機能を持たせることを予定しております。

分散投資機会の拡大およびお客様の分散投資を促す機能の導入

最後に、ファンド運営体制についてではございませんが、当社では融資先企業がデフォルトを起こした際のポートフォリオが受ける打撃が大きいお客様の数を可能な限り減らすことを目指して、より多くのファンド案件をお客様にご提供し、お客様に当社プラットフォーム上でより一層分散がきいたポートフォリオを構築いただける状態を作ってまいります。

また、すでに2020年1月から提供開始いたしましたファンドパッケージの深化や、マイページで提供しております簡易的なレコメンド機能をより深化したものの実装を進めてまいります。

当社ではお客様にご納得いただける機会をご提供できない場合、お客様から選ばれなくなり自然淘汰されるとの危機感を持って、引き続きサービスの運営・強化に努めてまいります。

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