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社会的インパクト投資レポート<番外編vol.4>:新興国における「クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)」、これからの可能性

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら( https://crowdcredit.jp/about/social-investment )もあわせてご参照ください。

今回は番外編第4弾として、気候変動対策の一環としても注目を集める「クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)」分野の取組みを、新興国に焦点を当ててご紹介していきます。

1. 「クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)」とは

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持続可能な開発目標(SDGs)「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

クリーンエネルギーとは、二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスなどの有害物質を排出しない、あるいは排出量が少ない、文字通り「クリーン」なエネルギーのことです。

石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料の代替として、太陽光や地熱、水力や風力などの再生可能な自然エネルギーが用いられており、「再生可能エネルギー」とも呼ばれています。

クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)は、温室効果ガスを排出しない、あるいは排出量が少ないことから、パリ協定(※2)の目標達成など気候変動対策に貢献することができると考えられています。また、基本的に国産のエネルギー源となるため、エネルギー自給率改善の観点からも各国の政府が注目しています。

※2 パリ協定とは、2020年1月に本格実施された、1997年12月に採択された京都議定書に代わる温暖化対策の枠組みのことです。世界共通の長期目標として「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2.0℃未満に抑え、1.5℃未満を目指す。そのために、可能な限り早期に世界の温室効果ガス排出量を頭打ちにし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる」ことが掲げられています。

日本では、2009年8月施行の『エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)』により、「再生可能エネルギー源」の定義を「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」としており、政令においては、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。

クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)の主なエネルギー源には、水力・風力・バイオ・太陽光があります。水力発電とは、主に水が重力により高い所から低いところへ流れる動力を電力に変換する発電方法です。ダム建設に伴う大規模水力発電の他、小規模な流水を利用するマイクロ水力発電、波力発電、潮力発電等が含まれます。

風力発電とは、風を羽に受けることによって動力を電力に変換する発電方法です。風さえ吹けば季節や昼夜を問わず発電することができるため比較的安価であることが利点ですが、生態系への影響や景観に注意が必要です。近年では洋上に設置する「オフショア風力発電」の研究・開発もヨーロッパを中心に盛んです。

バイオ発電とは、穀物や牛糞等の生物資源を発酵させてガス化したり、そのまま燃やしたりすることでタービンを回し、動力を電力に変換する発電方法です。未活用の廃棄物がバイオマス資源として活用され、ゴミを減らすことができるケースもあります。一般的に光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収して成長するバイオマス資源は化石燃料よりも地球に優しいとされています。

太陽光発電とは、太陽光を電力に変換する発電方法です。日光の当たる場所であればどこでも設置することができますが、天候の影響を受ける、夜間は発電できない、大規模な設置の場合は自然破壊となるといったデメリットもあります。近年では、住宅に設置し電力を自給自足するような小型の発電機や集光型太陽光発電といった効率的な太陽光発電も開発されています。

世界のクリーンエネルギー(再生可能エネルギー)の電力量構成比は、水力が約65.9%、風力が約18.0%、バイオが約7.8%、太陽光が約6.9%、地熱が約1.4%です(下図参照)。水力、風力の合計で80%以上を占めており、現在の再生可能エネルギーの主流であると言えます。この2つの発電方法は比較的古くから技術開発が進み、相対的にコストが低くなっていることが原因として考えられます。


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2.  新興国で増加する電力消費量

世界全体の電力消費量は、1965年以降人口増加や経済発展に伴い増加傾向にあります。2000年時点では世界全体で9357.0Mtoeの電力を消費していましたが、2018年時点では13864.9Mtoeもの電力を消費しており、約1.5倍の消費量となりました。

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とりわけ、2000年以降の新興国における消費量は著しく増加しています。2000年時点では4154.8Mtoe(※3)でしたが、2018年では8485.2Mtoeと約2倍となっています。特に人口の多い中国やインドでは増加が著しく、中国は1010.9Mtoeから3273.5Mtoeと約3倍、インドは317.5Mtoeから809.2Mtoeと約2.5倍となりました。しかしながら、その2国における消費量の増加だけでは全体の増加について説明がつきません。新興国から中国、インドを除いた消費量の推移は2826.4Mtoeから4402.5Mtoeと約1.6倍となっており、アフリカ、アジア、中東、旧ソ連国家等、その他新興国でも消費量が増加していることが分かります。

※3 Mtoe(Million tons of oil equivalent)とはエネルギーの単位で、100万トンの原油を燃焼させた時に得られるエネルギーを1Mtoeとしています。

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新興国における電力消費量の増加の背景としては人口増加や経済成長など様々な理由が考えられますが、本レポートではその中でもとくに、「未電化地域の電化」に着目します。

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上の表は、「国別 電気を使用できる環境にある人口割合」を低い順に並べたものです。赤枠で囲ってある通り、ほとんどの国がアフリカ大陸に存在します。アフリカには、電気を使用できない環境で暮らす人がまだまだたくさんいます。就寝時にオイルランプを使用し、火事になってしまうケースもあります。調理や暖房の為に薪や家畜の糞を室内で燃やし、空気が汚染されることで住人が死亡するケースも珍しくありません。

一方、クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)の設置コストは下図の通り技術革新により低下傾向にあります。2010年から2018年で、太陽光発電は1kWあたり必要な設置コストは約1/4にまで減少しています。

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太陽光発電は日が当たりさえすればどのような場所でも設置可能であり、また小型化も進んでいるため、送電線の届かないアフリカ地域での活用が期待されています。電気が使えるようになることで冷蔵庫の使用が可能となり、ワクチンや飲料水の保存が容易になると考えられています。生活の利便性向上だけでなく、衛生面の改善も見込まれるのです。

2019年8月24日付の日経新聞によると、欧州を代表するエネルギー企業がソーラーホームシステムに積極投資しているとのことです(※4)。他にも、日本の大手商社が次々に出資を実施しています。

※4 詳しくはこちら( https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48974920U9A820C1EA5000/  )をあわせてご参照ください。

大規模な発電所を建設し各地に送電線を伸ばすのではなく、ソーラーホームシステムのように電気を必要とする人の近くに小さめの発電所を建設し電力供給する方法は「マイクログリッド」と呼ばれ、災害対策として先進国でも注目が集まっています。日本でも「電力インフラのレジリエンス強化」の為、経産省を中心に議論が行われています。

マイクログリッドは「エネルギーの地産地消」、「分散型エネルギー発電」とも呼ばれます。従来の中央集中型の発電と異なりそれぞれの場所で独立して機能する為、災害時の安定性が高いと考えられています。

また、これまで離島やアフリカの農村といった交通アクセスの悪い場所は、利用者が少ない割に送電網の設置費用が高くなってしまうことから電化が中々進みませんでした。しかし、マイクログリッドのような小規模な設備の導入であれば比較的低予算で電化を進めることができます。これにより、営利企業による設備導入の検討は勿論、地元の行政機関による導入が可能となりました。その他にもマイクログリッドのメリットとして、送電距離が短く電力ロスが少ないということも挙げられています。

3. 当社の取組み、今後の展望

当社はかねてより「世界に貢献する投資」を掲げており、人々の暮らしを安全に便利に変える未電化地域の電化事業や持続可能な社会を実現するクリーンエネルギー事業、その両方に貢献する事業等、様々な「社会的インパクト重視ファンド」を提供しています。

2020年1月28日からは「社会的インパクト重視型パッケージ(※5)」の提供を開始し、分散投資をより身近に感じつつ社会的インパクト投資を行っていただくことができるようになりました。ぜひご活用いただければ幸いです。

※5 分散投資をより身近に感じていただくための「ファンドパッケージ機能」については以下もあわせてご参照ください。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。
クラウドクレジット株式会社
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