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運用のプロが教える「新興国通貨投資の考え方」<前編>

2019年6月22日、『為替について学ぼう!』 クラウドクレジット × YJFX 共催セミナーが開催されました。海外に特化したソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)事業を展開する当社の商品において、主な特徴であるとともにリスク要因となる「為替」についてお伝えする機会として、おかげさまで大変好評をいただきましたので、その一部を前後編に分けてご紹介します。今回は前編です。

【新興国通貨の投資について】
クラウドクレジット運用部マネージャー 近藤義弘

司会:新興国への投資を検討している方の中には不安を抱いている方も多いことでしょう。そこで本日は、運用部の近藤から、新興国投資のベースとなる考え方を以下6つの項目に分けてご紹介します。

1. 新興国通貨に対するイメージ
2. 実質実効為替レートから見る通貨の強弱
3. 新興国のファンダメンタルズ
4. エマージング通貨とフロンティア通貨
5. 分散投資の重要性
6. 新興国通貨投資で重要なこととは?

近藤:クラウドクレジット運用部の近藤でございます。本日はご参加いただきありがとうございます。それでは早速始めてまいります。

1. 新興国通貨に対するイメージ

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近藤:まず、こちらの新興国通貨に対するイメージで過去5年間の対円レートの推移グラフをご覧ください。青軸はドル円。オレンジがトルコリラ円。灰色がアルゼンチンペソ円です。見ていただくと一目瞭然ですが、60~80%の下落です。それに対して、ドル円は狭いレンジで推移しているということが見て取れるかと思います。短い期間で見ると1円や2円振れることがあってびっくりしますが、全体像でみたらそれほど動いていません。
こうしたことからも、これらの新興国通貨に対するイメージは「よくわからない」、「どういう国なのかイメージがわかない」、端的にいうと「リスクがある」というイメージがあるかと思います。

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近藤:もう一枚、トルコリラ、アルゼンチンペソを対ドルで見たチャートをご覧ください。赤字は新興国通貨指数で、27通貨を指数化したグラフとなっています。【MSCIエマージング・マーケット・カレンシー・インデックス】という名前なのですけれども。その他アルゼンチンペソ、トルコリラの下落に対して、割と安定的な推移ということが見て取れると思います。1年を見ても始点と終点はそれほど変わらないという状況ですね。これから読み取れることは結局、新興国通貨全体が危ないということではなくて、危険な推移の通貨を除外することができれば、パフォーマンスが出せるのではないかということです。

2. 実質実効為替レートから見る通貨の強弱

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近藤:続いて、実質実効為替レートから見る通貨の強弱、過去10年間の実質実効為替レートです。騰落率の分布を取り上げています。こちらは国際決済銀行(BIS)というところで提供されている60か国のデータをもとに計算して騰落率の分布を求めたものになります。先ほどのアルゼンチンとトルコ、左側に大きく飛び地になっていますね、35%以上の騰落率の分布になっています。一方、多くの国はマイナス5%からプラス5%の水準に収まっているところからも、これら2通貨は異常値ということがわかるかと思います。ちなみにこのデータは個人でも手に入れられるものなので分析に使いたいなどのご要望があればインターネットのサイトに行けば無料で見られます。

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近藤:続いて60か国を対象にしたなじみのある新興国通貨をいくつかピックアップしています。左から先ほどの2通貨が赤軸になっていますが、左からブラジルレアル、ロシアルーブル、メキシコペソ、マレーシアリンギット、南アフリカランド、インドネシアルピア、フィリピン、インド、タイ、といった順に並んでいます。ここから見ても、先ほどの2通貨は大幅な下落をしているとういことが読み取れます。

このグラフは先ほどの度数分布とは違い、実質実効為替レートの平均と現在値、5月末時点のプライスの乖離率をプロットしたものです。こちらでアウトパフォームしているものが3通貨ありますが、タイバーツにおいては過去10年で7%もの上昇がみられるということで、新興国から抜け出す段階にいるのかもしれないというところですね。このように一般的な公開情報だけでもファンダメンタルズ分析の一端は可能です。ただ、これら2通貨をどのように除外していけばよいのかというところで次の説明に進めていきます。

3. 新興国のファンダメンタルズ

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近藤:新興国のファンダメンタルズ分析と題して、こういったデータも先ほどの世界銀行や国際決済銀行(BIS)、IMFなどからデータを入手できます。左から経常収支対GDP、消費者物価指数、外貨準備高対GDPといった形で各通貨の比較をさせていただきます。2015年から18年までの4年間の比較を載せていますが、青枠は他と比較して(数値が)悪いものととらえていただければと思います。

まず経常収支はGDPに対してどれくらい儲かっているのか、端的にいってそのようにとらえていただければ良いでしょう。アルゼンチンペソ、それからトルコにいたっては4年間かなり悪い数値を記録し続けている。これらからも危険信号はある程度読み取ることができるかもしれないですね。

次、消費者物価指数。インフレ、つまり物価が上昇することによってトレードオフの関係にはなるのですが、為替が下落傾向にあることを表しています。アルゼンチンはかなりの水準ですね、30%越え。トルコも3年連続でインフレ率は上昇傾向にあります。

次に外貨準備高対GDP。経済規模に対してどれくらい外貨を準備しているかということです。例えば、海外のヘッジファンドなどの機関投資家が通貨を売り崩してくるような動きにあったときにいかに食い止めることができるか、外貨を売って自国通貨を買うという為替介入を行うことで下落を食い止めるということを新興国はよく行います。その中でも外貨の準備高が足りない国としてピックアップされるのがこの2通貨ということが見て取れます。

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近藤:先ほどの外貨準備高をもう一度利用します。外貨準備高対短期対外債務、こちらを倍数表示したものになります。短期対外債務が外貨準備高に比較して大きい通貨ですね。一般的にIMFの公表によると1倍を割れると危険水準になるというところでも、この2通貨がピックアップされているという構図が見て取れます。また、新興国通貨の対外債務というのは主にドル建てであるので、例えばドルが上昇するとかさ増しのような形で対外債務が増えるという形になります。それによって下落する、などそういった要因も背景にあります。

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