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直島に行って学ぶ安藤忠雄建築の楽しみ方

アートの拠点として名を上げている直島。

直島を芸術の島にしたいというベネッセ・福武氏の強い思いから構想が始まり、現在に至っています。

そんな思いに惹かれた世界的建築家・安藤忠雄さんの作品が直島には所々に建築されています。

直島を通して、安藤建築の楽しさを学ぶ旅に出かけましょう。

いざ直島へ

なおしま 海のえき

直島は香川の高松からフェリーに乗って約50分で辿り着くことができます。島へ上陸したら、タクシーを利用するのも有りですが、私としてはレンタサイクルがオススメです。自転車であれば、自然と触れ合いながら移動できますし、好きな場所で立ち止まることもできます。金額もリーズナブルですし、通行可能な島全周の距離が約11kmなので、体力的にも無理せず回ることができます。

早速自転車に乗り、いざ安藤建築を巡る旅を始めましょう。

・ベネッセミュージアム

瀬戸内海を見下ろせる山の斜面に建つ美術館です。地上3階、地下1階の4層構成で、中庭やテラスなど外部空間も積極的に展示空間として利用しています。

坂道を登っていくと、乱積みされた白い石壁が出迎えてくれます。

チケットを買い、奥へ進むと登り階段と下り斜路が現われます。進む道が一つではなく、訪れた人が道を選択できるのが、安藤建築の面白いところです。

私は体力的に楽な斜路の方を進むと、壁にぼっかりと開いた開口部が現われ、そこを抜けるとトップライトが設けられた円筒状の閉鎖的な大空間に出会います。下部にはトップライトに照らされた「百生きて死ね」という作品が展示されています。

百生きて死ねが
飾られた空間イメージ

この作品は人が生きている間に行うことが光る英文字で書かれているのですが、この作品を目にしたとき私は、「人生で悔いを残さないよう色々なことをすべきだ」という気持が沸き起こり、とても勇気づけられたのを覚えています。

閉鎖的な空間を抜けて先に進むと今度は、遊具のようなスロープが掛けられた開放的な空間が現われます。ギャップを利用するところも安藤建築の面白さの一つです。その空間は海に向けて大開口が設けられており、風景を眺めながら緩やかにスロープを下っていくことができます。

スロープのかかった明るい空間
大きな窓を開けて外に出ることができます

途中カフェテラスに出ることができ、舞台からは海を眺めることができます。うまい具合に両側の壁が周囲の雑木を隠して、海だけを切り取り、まるで一つの絵画のように見せてくれます。

壁で切り取られた空間

選択性のある空間、閉鎖空間と開放空間のギャップ、斜面に沿った形や、周辺に溶け込む姿など、自然の地形を活かした建築空間は勉強になること間違いなしです。

・リーウーファン美術館

韓国出身のアーティスト・リーウーファンさんと建築家・安藤忠雄さんのコラボレーションによる美術館です。

余白美術館とでも申したら良いのでしょうか。この美術館の空間にも、作品にもたくさんの余白が感じられます。

美術館名が記されているコンクリート壁の背後にある階段を下っていくと、目の前には30m角の玉石が敷き詰められた床とその上には天空に向かって延びる高さ18mのコンクリートの長柱、大きな石が配置された前庭に辿り着きます。

前庭を通って進み、訪問者はコンクリート製の壁に挟まれた道を巡ることで、心に静寂を取り戻しながら、徐々に奥に進んで行きます。

地下に入った後再び三角形の形をしたエントランスコートに出てから、再度美術館に入ります。美術館にはそれぞれ異なった性質を持つ3つの展示室が存在し、スケール、素材感、光を楽しむことができます。

現代の建築はほとんどのものが名前の付けられた機能が存在します。ですが、この美術館のように敢えて、名前の存在しない余白空間を設けてみることで、人の心に色々な影響を与えてくれます。

アプローチ空間

人生に余白が必要なように、建築にも余白が必要であるということを教えてくれた建築でした。

・地中美術館

※写真は後ほどアップする予定です

クロードモネ、ウォルタデマリア、ジェームズタレルという3組のアーティスト作品を永久展示する美術館です。

その名の通り、建物全体が地中に埋まっている美術館で、空から見ると、丸・三角・四角などの幾何学体が確認できます。

風景に溶け込む建築という試みを究極に推し進めた建築です。訪れたらわかるのですが、建物周囲には、直島の豊かな自然しか確認することができません。

形が見えないこの建築の魅力はおのずと内部空間に集中します。ですが、そこはさすが世界のTADAO ANDOです。内部に入り先へ進むと、日常では体験できない光の姿を見ることができました。いくら歩いても、ここは地中だということを感じさせない創りになっています。

そして、美術館に併設されているカフェからは直島の海を一望できます。コーヒーを味わいながら眺める風景の美しさは心に刻まれることでしょう。

見た目の美しさだけではない、姿が見えなくても楽しくも美しい建築をつくることができる。
そんな可能性を教えてくれた建築でした。

・ANDOミュージアム

Ando ミュージアム

築100年の民家を改造して作られた美術館です。既存の環境に対し、「最小限の表現で切り込み、最大限のふくらみを持つ建築を。」という意思が強く表現された建築です。

驚きなのが、既存の民家の内部にコンクリート製の箱が埋め込まれているところでした。コンクリート製の壁の隙間からは民家の木製部分を垣間見ることができます。

過去と現在、光と闇、木とコンクリートなど、対立し混在する空間はとても美しく、日常では味わえない感動を与えてくれます。

そして、この建物には斜めに傾いたコンクリートのシリンダーが地下に埋め込まれています。こんな民家の地下に光が降り注ぐ瞑想空間が存在すること自体が驚きでした。子供の頃、映画やアニメで見た、地下に隠れた秘密基地を思い出させてくれました。

既存のものを残しつつ、生かしながら新たな建築を創ることは、限りある自然をできる限り壊さないよう生かしながら建築をしていく行為に似ているかもしれません。これからの将来はそんな建築のあり方が大切だと安藤忠雄氏は教えてくれた気がしました。

・まとめ

直島には瀬戸内海の美しい景観を損なわないよう配慮されているだけでなく、自然の美しさと時に一体となり、時に自然の恵みや美しさを際立たせて見せる工夫がなされた建築が多く存在します。

この体験はきっとあなたに建築を設計する楽しさを教えてくれます。建築に興味がある人もない人も是非とも訪れてみてはいかがでしょうか。

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