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小説『CROSSXARMS』の世界観設定メモ①

題字『CROSSXARMS』

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【1】世界観設定

[1]世界観(歴史・地理編)

199X年現在の「日本連邦」、表日本国、裏日本国、首都公国に分かれる。
連合軍による『最終日本分割統治計画』により分割統治された旧日本(1946-1991年)。地政学的な考察により、奥羽山脈-中国山地ラインを挟んだ日本海側の地域を「裏日本国」太平洋側の地域を「表日本国」、両国の交通の中心地となり得る近畿地域を「首都公国」として成立し、北側をソ連が、南側を米国が統治し旧日本は南北に分かれた。冷戦構造に組み込まれる。
1945-1989年に渡り繰り広げられた冷戦下いおける世界の軍事関係。

(1)国連軍による日本分割統治政策

 WWⅡ終結後、1946年連合側三か国によって改訂版ポツダム宣言に基づく日本の戦後処理政策が実施され、旧日本は『最終日本分割統治計画』に則ったGHQの指令により、中央政府が解体された状態で直接軍政がしかれ、連合国による分割占領がなされた。

 旧日本は地政学的に見て、奥羽山脈-日本アルプス-中国山地のラインで気候圏が異なるところに着目し、その境界を南北ラインとして設定し、南北ラインより北側を「ソ連管理地域」、南側を「米国管理地域」、交通・運搬の住協拠点となる京都、大阪、兵庫の三県を一つの地域として扱い「連合国管理地域」として設定された。その後の冷戦の煽りを受けて、日本の占領地域は南北が分断した状態で独立し、それぞれ共産圏、反共圏の対立構造に組み込まれ、二つの大国によるイデオロギー対立に巻き込まれる事となった。

1949年、米国管理地域は「表日本国(SJ)」として成立した後、1951年に主権を回復し、西側諸国として独立(琉球諸島を除く)。ソ連管理地域は「裏日本ソビエト社会主義共和国(NJSSR)」として成立を宣言し、旧ドイツの東西分断同様に、旧日本の南北分立が確定した。連合管理地域は「首都公国(CJ)」として成立し、1955年どちらの勢力にも属さない中立国として独立し、西側諸国、ソ連側諸国との国交を維持した。


(2)冷戦後、日本連邦の成立

 1989年11月10日ベルリンを東西に分断していた「ベルリンの壁」崩壊に伴い、1990年5月10日裏日本と表日本の南北間の冷戦構造も集結した。1990年11月25日「裏日本国」、「表日本国」、「首都公国」の三国間で統一条約が結ばれ、1991年7月統一条約を発効し、米国、英国、フランス、ソ連、中国、の同意の元「日本連邦」が成立した。

 1989年12月2-3日、マルタ会談による冷戦終結の宣言を契機に、裏日本ソビエト社会主義共和国はソ連を脱退して民主化、経済を資本主義制度に移行し「裏日本国」として独立した。尚、199X年現在、この世界ではソビエト連邦はまだ存在する。

 しかし、各国の冷戦による経済的、行政的打撃は大きく、統一後も日本連邦内の経済格差がより問題視されるようになった。特に、裏日本は冷戦締結後の急激な民主化政策と経済政策の転換に伴い、国民は、経済立て直しがなされる10年もの間、不景気と就職難に苦しむことになった。
 一方で、表日本、首都公国を横断する太平洋ベルトと呼ばれる工業地帯において、冷戦時、西側勢力圏の政府がとった軍拡政策と軍需による経済恩恵を受けて、各企業内で、技術開発と技術向上が促進され、それによる開発費削減に伴い、国内の有名財閥企業傘下の重工産業をはじめとした旧企業が成長し、旧日本内の南西に位置する工業都市は、朝鮮特需も合わせて飛躍的に発展する事となった。

 このような南北日本において冷戦による軍需の恩恵を受けた経済成長を専門用語で「軍需寄生型発展」「冷戦の果実」、 冷戦によって生じた東北南西の経済格差及びその影響を「冷戦依存型格差」「冷たい風」と呼ばれ、 特に軍需により表日本、内日本に経済発展をもたらし、冷戦被害と経済体制によって国内情勢が悪化し衰退した裏日本は「冷戦の苗床」と呼ばれる。
 又、そういった経緯から裏日本国民が表日本国民に対して抱く負の感情やコンプレックスを「裏日本イデオロギー」と呼ぶ。

[2]世界観(法律)


(1)199X年の世界的転換

 199X年、裏日本国の民俗学者の伽藍堂空晴博士が率いる研究チームによって「霊魂」の科学的証明がなされた。その方法は、霊魂に物理的に干渉する実験であり、「リリム」と呼ばれる悪魔や鬼と呼ばれる種族が古代より秘匿していた存在、神智学における「エーテル(幽体・生命力)」と呼ばれる3.5次元エネルギーを用いてなされた。
 実験方法の一つは、4次元以降に存在する霊界(アストラル界)から「特定の死者の意識を、巫女や霊能者の霊力(魔力)によって、再び同じ個人の意識として現世の肉体に呼び戻す」というもの。実験は成功し、その個人の意識は時間経過を無視しており、死んだ当時の意識(自我同一性)と記憶(一部)がそのまま連続していたことから、同一人物である事が証明された。
 またもう一つの実験では、エーテルを媒介にして被験者を観察すると、被験者の死後、被験者の肉体から離れた霊魂は、被験者の生命エネルギーの乖離に伴い現世の3次元空間から跡形もなく消失した。このことから霊魂は4次元以降に存在する事がわかった。そして3.5次元エネルギーであるエーテルが四次元以降にある霊魂と三次元にある肉体とを結び付けている事も判明した。

 以上の事から、エーテルの発見によって霊魂の存在が証明されたと同時に、この世界に魔術がある事が判明した。
 伽藍堂博士が「霊魂の証明」を発表した199X年以降、日本連邦は「死者の定義とその法的保護(権利)を認めた国」のモデルケースとして、全ての国事を国連によって監視され、留学、労働目的以外の外国人の出入りは制限されることになった。


(2)199X年日本における悪霊の定義

 霊魂の科学的証明がなされた裏日本においては、霊魂の人格と権利能力を認め、民法上において権利・義務の主体として霊魂の人権を法的に保護し、霊魂の為の政策がなされている。

『人と霊の定義』

人と霊の民法上の法的定義

 霊の権利能力は「裏日本国籍」に登録する事で獲得し、権利主体となり得る。

『脳死死完全死亡説』 

 「人の死亡」の定義として、自分が予め持った脳が完全に機能を停止する「脳死」をもって「人の死亡」とし、人としての権利能力を失う事が、民法上に定義された。これは『脳死完全死亡説』と言われる。(判例「人工脳移植裁判」)
 しかし、これには「予め脳に障害を持って生まれた『人』に対する保護問題」の側面において批判があり、 ICチップといった外部の記憶データによる脳の代替技術が加速するにつれ「自分(人)の脳」の定義が曖昧化したことにより、依然として改正の余地がある不完全な法律であるという見方がある。

 それを踏また上で今のところ『人(現存者)であるための脳』の条件として「人の脳」は『生存中に生まれ持って獲得した脳を一部でも所有し、活動している事』と定義されている。

『霊の「発生」「消滅」の定義』

 霊は「裏日本国籍に登録」することで民法上の権利能力を得て、その時点から権利主体となる。ただし、①損害賠償請求権のみにおいて「発生」時点に遡り、権利主体となりうる。又、「霊」の権利(財産権等)は、従来の「人」の権利より制限されている.理由は後述する。

 しかし、『「霊」の発生』時点の確認・証明は難しく、又「発生」を「人の視認」によるものか「霊の意識の発生」によるものかなどその発生の定義に論争があり、実際に適応されうる可能性は低いとある。

霊の消滅の定義は原則、「日本領域からの消滅」が採用され、その時点で権利能力は「消滅」する。
又、霊が自らの意思で「裏日本国籍」を返却、もしくは審査によって「裏日本国籍」をはく奪された場合も、「国籍」の有効期間を過ぎた時点で、 権利能力が消滅する。

『霊の権利の制限』

 原則として「霊の権利は人より制限されている」理由は、裏日本ににおける「霊」の定義が『「人」が一度「死亡」したものであり、自分自身の身体をこの世に現存しないもの = 死者』と民法上なされているからである。霊の生前がいつの時代の「人」として誕生した者であっても、嘗て「人」として法の「権利主体」となり得た時期が存在するならば、「霊」が現在生存する「人」と同等の権利を有するのは、生存者である「人」の権利を脅かす可能性があるからである。

 「霊」という存在が、現世に存在する「人」「熱、電気をはじめとした自然エネルギー」から生命力を吸収し、もしくは「人」をはじめとした「生命体」「無機物」を苗床に憑き、寄生することによって現世に留まる傾向が強く、 又霊自身の持つ怨念や未練を増幅、反芻し「人」へ悪意やこの世への「未練・羨望」を蓄積させること存在を維持し、この世で未練を達成、実現するために存在するものだからである。
 又、人の所有する土地といった不動産や物、人に憑くことにより、存在を継続するものもあるので、その人権や所有権を脅かすことによって存在することもあり、 前提として今を生きる人との共生・共存が難しいと言われる。

 又、霊の抱えた煩悩は霊権保護や法の適用によって解決するものではなく、倫理・哲学的、文化・民族・宗教的救済が必要との見方もあり、人共同体や人集団の中において 対立解決・調整は難しいとされる。

 つまり、経済的視点において、霊と人の間にある権利をはじめとする利害対立の理由は人権や所有権の対立によるものが大きいという見方が成されている。一方で、霊は財産権をはじめとする金銭的なやり取りに関するの問題に対する意識は薄いとされている。

 原則この世のものは現存する「人」「国家」に所有権があると現在では定義されている。(ただし、改正される可能性がある。)

『新たな人の定義』

 今裏日本において、人の定義に新たな項目が加わった。
 裏日本における「人」の定義とは『最低「脳」の部位をこの世に現存するもの』と民法上なされている。
(→脳死完全死亡説)
 理由はバイオテクノロジーの進歩により、腕や足と言った四肢五体から、感覚神経や脳細胞に至るまで、人工物(機械・人工臓器問わず)に代替できるようになったためとされている。

『悪霊・呪縛霊の定義』

 裏日本における「悪霊」の定義とは、「裏日本、もしくは他国において発生し長期間存在しておきながら国籍を獲得せず「人」に害を与えるもの」とされ、「呪縛霊」は「裏日本、もしくは他国ににおいて発生し長期間存在しておきながら国籍を獲得しないもの」とされていている。

 これは「現存者である人の権利能力が霊の権利能力より優先されるべき」という『生存者優先説』の考えが適用されているからである。
 原則として、この世はこの世を生きる現存者のものであり、本来霊は成仏するものであるため、この世に留まる霊は然るべき場所に還る必要性があるからである。(→悪霊化問題)

 そういった不法に留まる呪縛霊や悪霊を取り締まる機関が司法組織や行政組織の公安委員会であり、警察・検察にその権限が与えられている。
 又、そういった霊の通報は国民の義務となっている。

 代表的な機関が警察の生活安全部生活安全課霊指導係である。

 ただし、上記に述べた霊・悪霊の定義に例外があり、又批判がある。
例外として「現世に留まり続ける霊において、生存する生命体に対して効用や利潤といった肯定的影響を齎すもの」にたいして有る程度権利の制限が緩和され、 「人」と同等の権利が保護される場合がある

 尚、呪縛霊と定義されたものは、成仏、もしくは国籍獲得の意志さえあれば、「強制拘束」「追放」「強制排除(成仏)」の対象にはならない。(獲得・成仏猶予の期間はある)
 又、悪霊・呪縛霊であっても、善意の状態であれば保護される場合もある。

 又、嘗ては『「人」であったもの』を現世の人に害を齎す事を理由に有害として排除するという考えは、果たして現在の倫理感に適応し、 立憲主義の憲法下において合法なのかという批判がある。


(3)世界観(ヒトとリリム)

原初の魔女リリスの子孫リリム

リリスの系譜とイヴの系譜

 199X年、伽藍堂克己博士によって発表された研究は、もう一つあった。それは「リリム(璃々夢)」とよばれる鬼・悪魔と呼ばれた人々の種族である。   

 伽藍堂博士の研究によれば、「現在、人類は(1)アダムとイヴの子孫である『ヒト』(2)アダム(魔王サマエル、ルシファー)とリリスの子孫である『リリム』…の二系統に分かれる。」と言う。
 リリスは「創世記」の1章27節に登場する「男と女が創造された」という文章の矛盾を解消するために後付けで登場したとされる女で、ベン・シラの『アルファベット』ではアダムと性的趣向の違いから離別し、楽園を去り、紅海にまで逃れた悪霊として書かれる。

 アダムを巡るリリスとイヴの性的な確執が人類の罪の根源であり、リリスは人類史上初めて魔王サマエル(ルシファーの説もある)と悪魔契約を果たした堕落した女となり、原初の魔女である。つまり、人類史に初めて魔術をもたらしたのは、悪魔と契りを結んだ悪霊リリスとその子孫である夢魔リリムの一族であった。
 リリムはアダムと肉的な交わりによってできた子でありながら、リリスが魔王サマエルと霊的に結びついた事によってもたらされた悪魔の子でもある。つまりリリムは、リリスの性的堕落と魔王との不倫によって生まれた、アダムの妾の子という立場にある。

 人の子であったリリスは、魔王サマエル(又は天使ルシフェル)と情事することによって悪魔化(肉体を持った悪霊)した。一度アダムと肉体関係を持っていたリリスは、魔王サマエル(又は天使ルシフェル)と堕落することによって、霊界に悪霊リリムを、物質界に悪魔リリムを産み落とすこととなり、以上から彼女は悪魔や悪霊の母とされている。
 彼女は人の赤子を呪う存在となっており、三人の天使の名前と天使の刻まれたアミュレットによってそれを防ぐことができる。神の受けた呪いによって彼女が子供を産む毎に100人は死ぬことになっている。
 リリム一族がアダムと悪霊リリスとの間に生まれた系譜である以上、その存在自体が人間の罪を証明するものであって、教義上、宗教的に忌み嫌われる存在となる。

 199X年、被差別対象であった夢魔リリムはヒト同様、法的に「人」として定義されたが、宗教学、主にアブラハム教圏の教義上は、ヒトに害をなし堕落させる「悪霊」「悪魔」「夢魔」と定義されている為に、人類の罪の象徴として依然として差別される。

命の霊:ネフェシュ

 塵や肋骨から創られた人が何故生命を得るに至ったかについては、創世記2章7節に登場する命の息(神の息吹)と呼ばれる生命力によるものであるとされる。
 この世界では命の息や命の霊は同じものと解釈され、神や生命の霊の存在は風と表されることも多い。

 そのアダムとイブに生命を与えた命の息はヘブライ語でネフェシュと表記され、この世界では体内に流れる生命力:エーテル体と宇宙に存在する生命力:マナ(プラーナ)に相当し、 諸説によっては霊であるプネウマや欲望であるカーマにも相当するとされており、原則としてネフェシュは幽体と霊体が複合したものであると定義される。

 この命の霊であるネフェシュは物質に生命力を与え、体内諸器官を生命循環装置として自律するように機能させ、有機生命体として活動するための力の源泉となっている。
 神の息吹であるネフェシュは人に生命を齎す生命力であるが、同時に神の子である天使や精霊などの精神体を生み出す力も有しており、天使や精霊は霊体と幽体で体が構成されるとしている。

 そういった命の霊を持つもので、堕落した精神体、肉体はそれぞれ悪霊、悪魔と称される。

リリムと魔術

 リリムは魔女リリスの血を引く悪魔の子孫であり、古来からエーテル(生命力)や霊力(魔力)の存在を認知していた。魔術の始まりは魔王と悪魔契約を結んだリリスと共にあり、リリスは人類初の魔女であると言える。
 魔術は人類史の中で秘術や秘儀としてリリムの間で隠されており、リリムの存在と共に歴史の闇に葬られてきた。しかし、元来魔術はリリムが独占するものではなく、霊的に目覚めた一部のヒトによっても使用される呪術的(まじない)行為であった。
 魔術は卜占・占星術・錬金術と近しい存在であり自然科学の前身として人々の暮らしの中に存在した儀式的行為や精神様式であったが、キリスト教の発展と布教に伴い、宗教学上で魔術は「悪魔と契約する事によってなされる反キリスト教的行為」と定義づけられ、中世では異端審問官が魔女狩りを行う根拠ともなった。

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