#15 最近始めてみたこと／くろさわかな

【往復書簡 #15 のやりとり】
月曜日：及川恵子〈ひとり、百鬼夜行〉
水曜日：泖〈カラオケ行きたい〉
金曜日：くろさわかな〈考え続けるために始めた、ちっぽけなこと〉

考え続けるために始めた、ちっぽけなこと

最近始めてみたこと、というお題。
自分で提案しておきながら、単純にお二人の話が聞きたかっただけだったということもあり、わたしも泖さんと同じく「特にないなあ…」と探しておりました。

そんな中観に行った「ちむぐりさ　菜の花の沖縄日記」。

映画『ちむぐりさ　菜の花の沖縄日記』

これまで、映画を観て泣くことはたくさんありました。その後の人生に影響を受けたものも。だけど、映画を観た後いつまでもこころの中に留まり続けて、思い出すと涙がこみ上げてきてしまう、という映画は初めてです。
大切な人を失ったときと似ていて、日常でふとそのことを思い出して、感情がそちらに持っていかれる感覚です。

この涙が何なのかもわかりません。申し訳ないという思いとも悔しいという思いともかわいそうという思いとも違う、よくわからない感情。多分いろいろ混ざり合っているし、それを分析しようとするのは自分の嫌なところも直視しないといけないから「よくわからない」としておきたいというのもあるんだろうな……。

きっと今はこころの表面に水たまりができたみたいな状態なのです。普段そこにはない水たまりは、避けて通れるけどそのためにはその存在を認識しておかなきゃいけない。うっかり足を踏み入れちゃうこともある。水たまりをなくしたくても、ゆっくりと染み込んでいくのを待つしかない、もどかしい状態。
そうやってどこか気にしながら生活していく中で、ふと気がつくと、染み込んでいったもの、染み込まずに残ったもの、蒸発したもの、に分かれている。その時やっと、あの感情はこのせいだったのかもな、って整理できるようになるのだと思います。

ひとつだけ確実なのは、なにもしていない・なにもわかっていないことへの怒りとか情けなさ、それに気付かされたことへの羞恥、だけどどうしたらいいのかわからない焦りを感じているということ。なにかを始めなくっちゃ。この気持ちを安定させるために！

……というわけで、ひとまず「タミノウタ~伝えたい沖縄の唄」を買いました。

４曲目の「悲しくてやりきれない」が映画の中で流れるのですが、透き通った声が本当に素敵なんです。わたしもこんな風に歌ってみたい！……と、絶賛練習中です。

ガーッと盛り上がっている今の気持ちが落ち着いてきたときも、この曲が歌えるようになっていたら、沖縄について自分ごととして考えられる時間が持ち続けられると思うのです。

本当は三線も弾けるとなお良いのですが……。楽器のハードル……。
沖縄民謡と三線、教えてくれる方いないかしら。

・・・

積み上がっている問題の大きさに対して、「始めたこと」があまりにもちっぽけで何の意味もない気もしてきますが、映画でも引用されていたガンジーの言葉で締めたいと思います。（※）

Whatever you do will be insignificant, but it is very important that you do it. ─あなたが行うことのほとんどは無意味なことかもしれないが、それをすることがとても重要なのである。（マハトマ・ガンジー）

とりあえず、次にカラオケに行くときまでには歌えるようになるといいな。
及川さんのルンヒャンも聞きたいし、泖さんの「瞳を閉じて」も楽しみにしてますね！

くろさわかな

追伸：そうそう、オキコラーメンと天使の羽の布教活動も、もっと積極的にやっていこうと思います！（売り切れのオキコTシャツとマグカップがほしいよ…）
またたくさん通販したので、次回会うときに持っていきまーす。

※ 映画だと『あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。 そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。』 と紹介されています。同様の言葉をガンジーの名言として引用しているメディアもたくさんあるのですが、英語で探すと全然出てこない…。なんとなく自己啓発本っぽいセリフだし、「世界に変革を求めるならば、自分自身を変えることだ。」という他のガンジーの名言と若干の矛盾感もあるし、後半は後付けなんじゃないかって勘ぐっています。まあ、そもそも前半部分も出典不明っぽいので、名言って、周りの人が分かりやすくしようと編集かけたりかっこよくしようと盛ったりしてくうちに、最終的に本人全然そんなこと言ってないのにってことが言い伝えられてるっていう現象は起こりそうですね。