『ワールドトリガー』 漫画レビュー
ワールドトリガーという漫画を知らない人は結構いると思うが、はっきり言ってもったいない。
ファンには悪いが、鬼滅の刃なんかより絶対面白い。なんで流行らないのか。
未読の人は人生を損しているといっても過言ではないだろう。それぐらいこの漫画は面白い。
このレビューを書いてワートリの読者が増えるとは思わないが、この漫画に対する自分の思いをぶつけてみようと思う。
漫画なんて架空の世界だ、馬鹿げていると思う人もいるかもしれないが、架空の世界に没入することも案外悪くないと思うし、学べることもあると思う。
早速だが面白いと思う要素を箇条書きしていこう。
・現代の競争社会を露骨に表現した現実主義的な描写。
・設定の緻密さ、合理性
・魅力的なキャラの多さ
まとめるとこのコミックの魅力は以上の三点に集約される。
では本編の概要を書いていこう。
❐ワールドトリガーの物語・概要
○物語の概要
舞台は日本に位置する三門市という架空都市だ。地球の周りに数多くの惑星国家が存在しているというSFっぽい世界観である。
ある日他惑星の住人が(ネイバー、近界民)三門市に攻めてきたことがあった。彼らはトリオンという特殊な物質から生成された武器や兵器を使い三門市へ侵攻してきたのだ。
当時の三門市民はネイバーやトリオンの存在を認知しておらず、侵略者に対して全くなすすべがなかったのだが、突如現れたボーダーという組織によって九死に一生を得る。
ボーダーはネイバーが使用する技術を有した集団であり、やがて三門市の防衛部隊として公に認められることになる。
主人公の三雲修は彼にとっては妹的存在の雨取千佳を守る力を得るためボーダーに入隊する。
○トリオンについて
ボーダー隊員が使用する武器の基盤となるトリオンについて説明しよう。
トリオンとは近界(ネイバーフッド)において用いられていた生体エネルギーのことだ。このトリオンを利用して様々な技術が生み出されている。
例えばトリガーだ。
現実の肉体とは異なる戦闘体をトリオン体で生成することができる携帯型の起動装置だ。肉体をトリガーの中に封じ込め、代わりにトリオン体からなる戦闘体を現実に生み出す。
トリオン体の状態でダメージを受けても死ぬことはなく、トリオン体が破壊されるだけだ。
トリオン体でできた戦闘体は痛みを感じることもなく、現実の肉体にも影響がない。運動能力を飛躍的に高める効果もある。
一般的な凶器で傷つけられることがなく、トリオンによる攻撃でなければダメージは入らない。
❐レビュー
○競争社会
主人公の三雲修(愛称:メガネくん)は若干15歳でボーダーに入隊するのだが、全くもって実力がない。加えて伸びしろもない。
戦闘センスが皆無の非力な主人公である。
それとは対照的にボーダーの戦闘隊員には精鋭が多い。実力はランクで分けられており、上からS級、A級、B級、C級である。
ランク戦というボーダー内部での紅白戦も開催されており、常に実力が試される厳しい環境だ。
三雲がなぜこんな猛者の一員になれたのかと疑問に思うかもしれないが、簡潔に言うとコネ入隊である。まあ色々と事情があるのだがここでは割愛する。
能力がない主人公が実力主義の環境で悪戦苦闘する姿を見て、すごく応援したくなる。
また主人公の三雲は常に自分の限界を知り、自分にできることを考え目標を達成していく。
身の程をわきまえつつ、やりたいことを成し遂げる姿は見習うべきところだ。
しかし、実力がない彼に対して辛辣な態度をとる隊員も多い。緑川や菊地原はそのいい例だろう。
緑川は一対一での対戦において先輩である三雲をボコボコにしたときがあったのだが、その対戦後のセリフがあまりに生意気だ。
このため口と相手を蔑ろにするセリフを初めて見た時はイラッとした。
自分が野球をやってた時にもこんな後輩がいたなと思いつつ、三雲に同情してしまう。
A級の菊地原もなかなかひどいことを言う。
隊内でランク戦というチーム対抗の紅白戦をやるのだが、三雲が一切活躍できなかった試合後に辛口なメッセージを送っている。
空気は言い過ぎだろう…。しかしこれは菊地原の優しさだと思う。
三雲が試合で全く活躍しなかったのは事実だが、それをあえて指摘することで三雲の落胆を軽減させようという意図があったに違いない。
菊地原はひねくれものなのである。
このように主人公を応援したくなる要素もこの作品の魅力だ。
○設定の緻密さ
ボーダー組織の複雑さや武器(トリガー)の多彩さなどとにかく世界観の設定が緻密な漫画だと思う。
特にトリガーの種類は豊富だ。ハンドガン、スナイパー、近接武器などそれぞれ量産型なのだが種類が多い。
下記のHPにトリガーの情報がたくさん載っている。
あと戦い自体も戦略を重視したものが多く、キャラが覚醒するなどの一発逆転要素はほとんどない。現状の能力が全てなのである。
こういった、緻密な世界観や合理性は個人的に好きだ。
分けもわからず手から炎が出たりする、設定がガバガバな漫画は嫌いである。
○キャラの豊富さ
ワールドトリガーは個性的なキャラが豊富なところも面白い。
部隊だけでもA級が9部隊、B級が21部隊もあり、各部隊にだいたい4人程度在籍しているのだから漫画にしては相当な数の登場人物である。
なおかつみんなキャラが個性的でかぶっていない。緻密な設定には怠りがないなと作者に感心する。
好きなキャラは出水と三輪だ。どちらも規格外に強い。
・出水公平
出水はボーダーのNo1シューターで一度に放つ弾数がえぐい。
アステロイドというシュータートリガーを使用し様々な弾を使いこなす。
天才。イケメン。かっちょいい。
・三輪秀次
オールラウンダーで三輪隊の隊長を務める。
鉛弾(レッドバレット)トリガーの使用を得意とし、動きが俊敏。ネイバーに姉が殺され、誰よりもネイバーを恨んでいる。ナルトのサスケみたい。
当たれば重石になる鉛弾(レッドバレット)を多用し、ネイバーを恨みながらも常に冷静。たまに激情するが総じてかっこいい。
と、まあ長ったらしくワールドトリガーの魅力を説明したのだが、いかがだっただろうか。
一番好きな漫画だから説明が冗長になったのかもしれない。
作品を説明する作業はほんとうに難しい。まとめるのが特に。
作者が体調を崩しがちなところが気になるが、いい作品である。ハンターハンターといい緻密な設定を有する作品は漫画家の体力を削るのだろうか…
とにかく面白そうだと思ったら是非読んでみて欲しい。
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