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「個を見て全をたたく」を止められない

コロナが世間を騒がせる昨今、ふとコロナの親玉について考えることがしばしばあった。

親玉かどうかの真偽は不明だが、親玉っぽいのは間違いなく中国だ。


「中国って国はやっぱりどうかしている。」

「あいつらさえいなければ今頃平和でストレスのない日常を送れていただんだろうな。」

「中国人ってほんとにクソだわ。」


そうやって中国人に根拠のない怒りを人知れずぶつけることが個人的にあった。


❐個を見て全をたたく

コロナでストレスが溜まっているのはわかる。

だが上記で述べたようなことを口にするのは言わずもがな正しいことではない。

中国政府は客観的にみていろいろクソだけど、それを中国人全般に当てはめて考えるのはおかしい。

こういう考えは客観的にみると冷静さを欠いたおかしな論理だ。

そういう思考回路を持つ人はきっと視野の狭い人間なんだろうと思うかもしれない。

ナチスによるユダヤ人差別だって、後世の僕たちからしたら馬鹿馬鹿しい。

宗教の対立や人種研究の公表などが原因で生じた差別・虐殺らしいが、これは情報網の未発達や意図的な情報統制が行われ正しい情報が市井に流れないという状況だったからナチスの過激な考えに大多数の市民が賛同したのだと考えることができる。

しかし誰もが情報を得られる現代においても盲目的な言動は平然と起きている。

いわゆる人種差別のような考えは個をみて全をたたく典型的な例だ。

情報網が発達し物事の裏表を把握できる環境にいてかつ過去に似たような過ちをたくさん認知しているにもかかわらず人は同じような過ちを犯している。


❐「個をみて全をたたく」を促進させるもの

現代でもこの愚かな考えが蔓延しているところを見るときっと人間心理・行動のうちに問題があるのだろう。

二つほどその問題点を上げたい。


①思考停止

一つは思考が停止してしまうことだ。

疑問を抱いて考えを膨らませることは案外骨が折れる。

だからそういう面倒なステップをすっとばし少ない情報だけで物事を結論づけようとする場合が往々にしてある。

しかしこうして結論づけられたものにはかなりの違和感がつきまとうだろう。

こうした結論に対しては即座に矛盾点や論理の飛躍を見つけることができるので思考停止はそこまで問題ではないように思われる。

だがこの思考停止が怒りを伴うとすれば話は別だ。



②怒り

二つ目の原因は怒りだ。

怒りは正常な判断を狂わせる。

今のコロナがその状況とピッタリ合致すると思う。

コロナ自粛で外に出られない、旅行に行けない、大学生は大学に行かせてもらえない、夏にマスクは地獄だ。

コロナが原因で生まれた不満は数えだしたらキリがない。

これらの不満を解消しようとして怒りの感情が溢れる場合がある。

怒るには怒りの対象が必要で、多くの人はコロナと一番因縁深い中国をターゲットにし各々の怒りをぶつけるだろう。

実際その自分勝手な怒りはすでに世界各地で振るわれている。

欧米を中心に中国人嫌悪の風潮が広がっているそうだ。



もちろん日本でも似たようなことは起きている。

「あいつは中国人だから~」という常套句から始まる中国人蔑視は止むことがない。

まあ中国政府に関しては日頃から世界に迷惑をかけているわけだから怒りのボルテージの上りよう他の比じゃないと思うが。

この怒りの怖いところは自分の行動の愚かさを覆い隠すことである。

怒りをぶつけたいという欲求や怒ることに夢中になるあまり自分の言動の愚かさを見落としてしまう。

エタ・ヒニンだから汚らわしいとか、奴隷制は善であるとか、客観的に見れば間違っていることだと分かることでも当事者となり主観的に考えれば意外とその過ちに気づかないものだ。



❐怒りを抑えるのは難しい

道行く楽しそうな中国人を100%偏見という曇りのない目で見ることができる人間は現在どれほどいるだろうか。

実際に接してみると相手の雰囲気を直に感じることができて偏見も吹き飛ぶが、関わりを持たない状況下で怒りを鎮め全体を短絡的に悪だとみなす行為に歯止めをかけるのはかなり難しい。

実際僕も自粛期間中に中国人を恨むことがあった。

怒りの発散である。

怒りを抑えろとか常に思考をフル回転させろとかそういうことはできやしないと思うが、怒りやら思考停止で何が起こるかを意識することはできるはずだ。

「知る、意識する」というありきたりな解決策しか浮かばなかった。

中国政府という個を見て中国人という全を敵視しないようにしたい。

そもそもコロナに関しては中国のせいと決めつけること自体も間違っているのかもしれない。


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