「あんみつ姫」の話

かつてクママン(熊本マンガミュージアムプロジェクト)
という組織に関わっていたことがあり、
その組織の仕事で京都国際マンガミュージアム
というところに出張したことがあった。

どういう出張だったかというと、
熊本マンガミュージアムプロジェクトと
北九州マンガミュージアムと
京都国際マンガミュージアムは
お互いに提携していて、
それぞれの蔵書をグルグルと回すことによって、
文化庁の予算(つまり国民の税金)を
合法的に私用に運用していた。

たとえば職員(司書など)の方の講演会などに
相互に出席したりして「交流」していたのだ。
ある時僕は、京都国際マンガミュージアムの
司書の方の講義を聞きに行く「出張」を拝命した。

その時に司書の方から聞いた、
印象的だったエピソードのひとつ。


京都国際マンガミュージアムの利用者の方には、
場所柄外国人の方が多いのですが、
それ以外でよく問い合わせてくるのは、
高齢者の方なのだそうです。

ある高齢者の女性が、
娘さんに連れられて、
車イスで訪ねてきたそうです。
用件は「あんみつ姫」はありますか?というもの。

司書の方が収蔵庫から出してくると、
その方は表紙を見た途端、
突っ伏して泣き出したそうです。

その方のお母さんは継母だったそうで、
最初はあまり折り合いが良くなかったそうですが、
ある時そのお義母さんが、
「あんみつ姫」の本を買ってきてくれて、
それ以来お義母さんと少し仲良くなれたのだそうです。

その後何回も引っ越したりして、
「あんみつ姫」は手元にはなくなったけど、
その方がガンになって、
車イスでの生活になった今、
ふとなつかしくなって、
マンガミュージアムを訪ねて、
「あんみつ姫」に再会したわけです。

そういうエピソードは、
マンガに限らずあるとは思いますが、
僕はこういうお涙頂戴の話も
結構好きなんです。

だからといってマンガミュージアムの周辺の人々が
人の心の空隙に付け入って
国民の税金を私的に流用していることを
容認しているわけではない。


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